欧州が政治的小人である理由とは?
(last modified Sat, 26 Oct 2024 08:22:28 GMT )
10月 26, 2024 17:22 Asia/Tokyo
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    欧州が政治的小人である理由とは?

イランの専門家の見解では、欧州諸国はウクライナ戦争のような重要問題に関して米国から独立した政策を取れないため、米国と同様のアプローチによるイランへの対処を模索しているとされています。

【ParsToday国際】欧州がペルシャ湾のイラン領3島について、「イランが占領している」とするアラブ首長国連邦の主張に迎合していることは、複数のイラン航空会社への制裁、並びにシオニスト占領政権イスラエルの問題から世論の関心を逸らせる目的で新たな反イラン政策がとられていることを示しています。西アジアの現状において欧州がこうした反イラン政策を踏襲する理由について、イランの欧州専門家であるアリー・レズヴァーンプール氏がイラン紙「シャルグ」のインタビューで解説しました。

 

―ここ数週間、欧州はますます反イラン政策を強化しているように思われる。それは一方では航空会社に対する制裁の発動であり、他方ではペルシャ湾のイラン領3島に対するUAEの主張への支持という形で見られた。欧州はこの反イラン姿勢を強めるあまり、挙句の果てにはイランを「占領者」呼ばわりしている。昨今において欧州が反イラン政策をエスカレートさせている理由は何だと思われるか? 単にウクライナ戦争におけるイランの対ロシア軍事支援をめぐる主張に起因しているのか、それとも他の要因があるのか?

私の見るところ、欧州がこうした反イラン政策を踏襲する理由は、政治的独立性の欠如にあると思われる。周知のように、EUは単独では他国に対し自らの利益に基づく独立した政策をとれない。1990年代にベルギー外相を務め、外交政策におけるEU代表でもあったマーク・アイスケンス氏は、EUを「経済的巨人でも政治的小人」と揶揄していた。EUは米国、日本、中国に次ぐ経済ブロックとみなされているため、確かに一大経済勢力ではあるが、外交政策や外交の分野では完全に米国の後塵を拝しているのが現実だ。

したがってEUは、デリケートな問題については一部の発言や立場によって、アメリカから独立した政策をとっていることを示そうとしている。しかし、ここ数週間から数カ月間においてはイランに関する度重なる主張を理由に、EUは一連の措置、立場表明、制裁行使によって世界におけるイランのイメージダウンを狙ってきた。その最も重要な問題は、ウクライナ戦争の交戦勢力たるロシアへの弾道ミサイル提供疑惑に起因する。そしてこの問題はある意味で、イランのペルシャ湾3島の領有権に対するEUの姿勢に影響を及ぼしており、これはイランの領土保全や国家主権への侵害にあたる。実際のところ、欧州諸国はウクライナ戦争のような重要な問題に関して米国から独立した政策を講じられないため、米国政府と同様のアプローチでイランへの対処を模索する形となっている。

 

―現在のペゼシュキヤーン政権下でイランと欧州の溝はさらに深まると思われるか?

こうした亀裂はイラン側からのものではない。というのは、ペゼシュキヤーン大統領は、選挙のスローガンはもとより任命式や就任宣誓式でも、そしてその後の会合や会議でも幾度となく「自らの政権の外交政策は、イスラム革命最高指導者ハーメネイー師が考えていることと同じ3つの原則、即ち威厳、英知、そして国益に基づいており、この3原則にのっとって、新政権は地域・地域外の全ての勢力との関係の調整を目指す」と述べているからである。したがって、ペゼシュキヤーン政権は国益と安全を守るために、必要に応じて決定を下すと思われる。しかし、これまでに述べた内容をまとめると、イスラエルの反イラン政策とアメリカからの脅迫の両方により、欧州は相互尊重に基づく独立した対イラン政策を追求できなくなっているように思われる。

―イランと欧州の関係における重要なポイントは、2025年10月の期限、つまりJCPOA包括的共同行動計画(通称:対イラン核合意)の実施保証としてイランへの制裁解除を定めた国連安保理決議2231の満了だ。核合意の署名国である英仏独の欧州3カ国はその時までに新たな協議、或いはトリガーメカニズムの発動とイランへの制裁を再開させる6つの安保理決議の復活を求めると見られる。この場合における、イランと欧州の関係をどう見るか?

核合意に関しては、この協定から離脱したのはイラン側からではなかった。しかし、残りの猶予期間内に欧州諸国、特に核合意署名3カ国がトリガーメカニズムを発動し、制裁再開の安保理決議を復活させようとする場合、彼らのイメージが疑問視されることになるだろう。

 

―その理由は?

核合意から離脱したのはイランではなく米国だからだ。それは米国自身が認めている。欧州諸国が核合意に基づく約束履行に関してある意味で自暴自棄になったのは米国の離脱後だった。このため、これまで欧州諸国は責務を履行しなかっただけでなく、それとは逆の行動をとったのである。このことは、ウクライナ戦争から核合意、さらにはその他のセンシティブな問題に至るまで、いかなる問題においても欧州諸国は米国に左右されずに別個の政策を追求することはできないという事実を裏付けるものだった。

 

―ハーメネイー師が掲げる三原則として、威厳、英知、国益という点が挙げられた。同時に、ハーメネイー師はペゼシュキヤーン大統領の任命式では欧州との関係改善に向けた自らの意見も表明した。これらを踏まえて、欧州との関係改善は進むか?

ペゼシュキヤーン大統領の任命式で、ハーメネイー師は極めて重要な点を指摘した。それは、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカ、その他の国々のいずれとの関係においてであれ、イランの国益と安全保障が危険にさらされた場合はいつでも、我々はそれに対処せねばならず、逆にいずれの国や勢力であれイランの利益に沿う関係改善に向けた提案と解決策を持っているなら、我々は関係を見直すことが可能だというものである。

欧州諸国が2025年10月までの1年弱で、反イラン政策の強化や、トリガーメカニズムの発動及び安保理決議の復活などの行動をとるなら、自らのイメージを壊すだけでなく、その行為がもたらす結果についても責任を負わなければならない。しかし逆に、欧州が反イラン政策を強化せず、外交交渉の枠組みで相互尊重に基づいた解決策を持っているなら、ペゼシュキヤーン政権は間違いなく「威厳、英知、国益」の3原則に基づいてそれに肯定的な反応を示すだろう。したがって、イランと欧州の関係の将来は、欧州自身の行動にかかっているといえるだろう。

 

 


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