西側の好戦主義派はトランプ米政権とロシアのいがみ合いを目論む
国連安保理が、ウクライナ戦争勃発から1000日目にちなんで、今月18日に会合を開催しました。
【ParsToday国際】、デイビッド・ラミー英外相は安保理の今期輪番議長として今回の会議で演説し、「ウクライナ戦争は単に同国やヨーロッパの安全保障にとっての問題だけでなく、世界の平和と安全、そして国連憲章の基本原則にとっての問題でもある」と語っています。
ウクライナ戦争の開戦から1000日目が経過しましたが、最近の情勢、特に米国がウクライナに対し西側兵器によるロシア領土奥深くへの攻撃を許可したことにより、今後の見通しは暗澹たるものとされています。2022年2月24日に始まったウクライナ戦争は、人的・経済的に甚大な損失を引き起こしました。この戦争ですでに1万1000人以上の民間人が死亡、2万5000人近くが負傷しましたが、実際の数はおそらくこれらの統計数をはるかに超えるとみられます。
この壊滅的な戦争による主な結果としてインフラが破壊されたほか、他国に避難した680万人を含む約1000万人のウクライナ人が自宅退去・強制移住を余儀なくされました。
また、この戦争でウクライナ領内は世界で最も地雷が多く残る地域の一つとなっており、試算によればウクライナ再建には10年間で5000億ドルの費用が必要とされています。
同時に、この戦争の2つの交戦国であるロシアとウクライナはいずれも、自らの側に多大な人的被害を出し相手側の膨大な軍事装備を破壊したと主張しています。
現在、ウクライナ戦争をめぐる状況に次第に大きな変化が生じているようです。そのうち最も重要な動向は、先の米大統領選でドナルド・トランプ氏が再選され、2025年1月20日にその2期目が始まること、そしてウクライナ戦争での同氏のアプローチです。この戦争で、特にドイツをはじめとしたウクライナを支持するヨーロッパ諸国は、もはやこれまで通りのウクライナ戦争の続行は不可能であるとの結論に達しました。
トランプ氏が選挙期間中、ウクライナ戦争に対する米の政策、特に数百億ドル相当の軍事・兵器援助の供与について幾度となく厳しく批判したことから、ヨーロッパのNATO北大西洋条約機構加盟国の間ではロシアとウクライナの戦争および、ウクライナに対するトランプ政権の政策への懸念がますます高まっています。
トランプ氏は米国の対ウクライナ支援の規模を批判しており、以前は「ゼレンスキー・ウクライナ大統領は世界最高のセールスマンだ」とコメントしていました。
もう一つの重要かつ決定的な進展は、射程300kmのATACMSミサイルや最大射程500㎞以上を誇るSCALP-EG/ストーム・シャドウ(Storm Shadow)などの西側兵器によるロシア領内奥への攻撃許可という分野で、米が新たに英仏に連携する行動をとったことです。これらは、ウクライナ戦争で新たに生じた危険な情勢変化と考えられています。
ウクライナ側はこれを歓迎していますが、ロシアはこの行動の結果について重大な警告を発しています。
重要なことは、ドナルド・トランプ大統領の2期目にウクライナ戦争に対する米国のアプローチの変化の可能性を危惧しているEUが、この危険な情勢変化を歓迎していることです。
これに関連して西側メディアは、EU本部のあるベルギー・ブリュッセルでの会合で、「EU諸国の外相らは、ウクライナに長距離ミサイルによるロシア領内各地への攻撃許可を出すというバイデン米大統領の決定を大々的に歓迎した」と報じました。
マクロン仏大統領も、米国の長距離ミサイルを使用したウクライナのロシア領攻撃の承認という米国の決定を歓迎し、これを良い決定だと述べています。
どうやらヨーロッパは、「西側兵器によるロシア領への攻撃の許可は確実にロシアからの強い反応を招くだろうが、このことは事実上米国のウクライナ戦争への関与をさらに深め、トランプ氏が戦争を終わらせるつもりでも、多くの障壁に直面するだろう」と憶測しているようです。
しかし、「西側諸国のこの行動はウクライナの完全な破壊、さらには同国の解体につながる」とロシアが警告していることからして、国連は事態の悪化を阻止しようと考えています。
これに関連して、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ウクライナによるロシア領の内奥への攻撃に米国が同意したことに注目し、ウクライナでの紛争のさらなる激化を防ぐよう要請しました。疑いもなく、西側諸国によるウクライナの挑発とそれをめぐる新たな行動、そしてゼレンスキー大統領をはじめとするウクライナ高官らが無益な戦争継続を主張していることは、同国にさらに多くの人的犠牲をもたらし、ウクライナのより広範囲にわたる破壊を引き起こすだけであると思われます。