米紙ニューヨーク・タイムズ:「ペルシャ湾めぐるトランプ発言でイラン国民がますます結託」
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米紙ニューヨーク・タイムズ:「ペルシャ湾めぐるトランプ発言でイラン国民がますます結託」
アメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」によりますと、ペルシャ湾の名称変更に関するドナルド・トランプ米大統領の不用意な発言が、イラン国民の結託をさらに強めた格好となりました。
ニューヨーク・タイムズは、「トランプ大統領は西アジア地域を訪問する前に『ペルシャ湾』の名称変更を提起した。それは、『イランとその国民の感情を逆なでし、彼らのさらなる結託を呼び起こした不適切な発言』である」と報じています。
【ParsTodayイラン国際】イスナ―通信によりますと、この記事ではさらに、ペルシャ湾の広大なターコイズブルーの海域が少なくとも紀元前550年、つまりアケメネス朝ペルシャのキュロス大王がインドからヨーロッパ西端にまで及ぶ帝国を統治していた時代から、現在と同名の『ペルシャ湾』という名称で知られていたことが指摘されています。
またこの報道によれば、古代イラン(ペルシャ)は現代のイランであり、同国の南岸全体はペルシャ湾沿いにあります。
同紙はまた、「1979年のイスラム革命以前から、イラン政府はこの海域の唯一の正当な名称として『ペルシャ湾』を断固として守ってきた」とた上で、「国内外のイラン人はいずれもこの一致した見解を有しており、この名称を国民・文化的アイデンティティの中核と捉えている。そこへもってきて、トランプ大統領はこの湾の名称変更を提起し、ある一つのことを助長した。それは、あらゆる政治、イデオロギー、宗教的派閥・潮流に属するイラン人の結束表現である。彼らは声明やSNSの投稿においてトランプ大統領の見解を非難した」と報じています。
イラン国民はどう反応したか?
トランプ大統領の考えは、一部の問題については異なる見解を持つ人も含め、あらゆる階層のイラン国民から非難の矛先を向けられています。
米カリフォルニア大学アーバイン校ペルシャ研究センター所長を務める歴史学者、トゥーラジ・ダルヤーイー氏は、「この問題は政治の域を超えている」とし、「これは宗教・イデオロギー的な対立を超えた、国民と歴史に関する問題であり、よく取り上げられている。トランプ氏はイランと交渉したいのか、それともイランの国民的アイデンティティをぶち壊したいのか?」との疑問を提起しました。
また、「イラン人は古代から自分たちの国を『水と土壌』と称してきた。南のペルシャ湾と北のカスピ海という二つの水域は、国民的象徴としてイラン人の血潮の中に深く織り込まれている」と強調しています。
在テヘラン政治アナリスト、アフマド・ゼイダーバーディ氏も「X」への投稿で、「トランプ大統領の野望と気まぐれのために『メキシコ湾』が『アメリカ湾』に名称変更され、カナダが米国に併合され、グリーンランドが米国領土になるなどということはない。同様に、ペルシャ湾に偽名が冠されることもないだろう」と書き込みました。
イランのサッカー代表チームもこの問題に関して反応を示すとともに、インスタグラムの公式ページにペルシャ湾の地図と人気のハッシュタグ「#ForeverPersianGulf」を掲載しました。さらには、イランの野党所属の要人らも不満を表明しています。
ペルシャ湾をめぐるこれまでの歴史的概略
「ペルシャ湾」という名称は、世界の大部分を支配した古代ペルシャ帝国の時代からギリシャ、さらには大英帝国の時代に至るまで、歴史を通じて地図や史料・文書において使用されてきました。

米・イラン核交渉への影響は?
イランと米国は先般、オマーンの仲介によりイランの平和的核開発計画に関する間接協議を3回開催しており、11日日曜にもオマーンにて協議の新ラウンドが行われました。その結果、協議継続という点で見解の一致をみたものの、双方の主張には相当の隔たりがあり、双方の歩み寄りはかなり難航するとみられています。
元イラン外交官で2015年の同国核協議団メンバーだったセイェド・ホセイン・ムーサヴィーヤーン氏は、「トランプ大統領がペルシャ湾の名称を変更すれば、交渉に悪影響を及ぼすだろう。このような行動は不信感を生むだけだ」とコメントしています。