プーチン大統領が西側諸国の覇権の終焉と多極体制の確立化を主張する理由とは?
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ロシアのプーチン大統領が、露国営ノーボスチ通信などが主催する国際会議Valdai Discussion Club(通称ヴァルダイ会議)での演説において、「西側による覇権は終焉に向かっており、多極的な体制が確立してきている」と強調しました。
(last modified 2025-10-06T10:16:33+00:00 )
10月 06, 2025 19:04 Asia/Tokyo
  • ヴァルダイ会議で演説するプーチン大統領
    ヴァルダイ会議で演説するプーチン大統領

ロシアのプーチン大統領が、露国営ノーボスチ通信などが主催する国際会議Valdai Discussion Club(通称ヴァルダイ会議)での演説において、「西側による覇権は終焉に向かっており、多極的な体制が確立してきている」と強調しました。

【ParsToday国際】プーチン大統領は今月2日、ヴァルダイ会議における演説の主要部分で、改めて一極主義の時代の終焉および、西側式の自由主義モデルの崩壊を強調し、米国とその同盟国による絶対的な支配の時代は終焉を迎えつつあり、世界は均衡のとれた多極体制へと向かっていることを聴衆に納得させようとしていました。この枠組みにおいて、ロシアは孤立した大国としてではなく、中国、インド、その他のBRICS新興経済国グループ諸国と並ぶ重要な勢力として紹介されています。この多極化という見解は、西側諸国の政治・経済的圧力に対抗するための手段となります。「諸国民の平等な権利」と「文化・文明の多様性」に基づき世界情勢を再定義することで、ロシアは非西側諸国の支持を得ようとしています。

プーチン大統領は、世界が「多極化時代」、つまり単一の勢力がルールを決定できない時代に入りつつある、との見解を持っています。プーチン大統領は、多極化世界が「多数の政治・経済主体」が動向に影響を及ぼせることから、より民主的であると主張しました。そして「おそらく国際舞台において、これほど多くの国が最も重要な地域・世界的なプロセスに影響を与えた、あるいは影響を与えたいと望んでいることはかつてなかっただろう」と述べています。加えて「このような環境における解決策は幅広い合意に基づく必要がある」と強調しました。

さらに「いかなる解決策も、すべての利害関係者、あるいは圧倒的多数が納得する合意に基づいてのみ可能となる。そうでなければ、持続可能な解決策は生まれないだろう」としています。このことからプーチン氏は、西側主導の機関が本来の使命から逸脱し、「政治演説の場」と化し、「その意義を失っている」との見方を示しました。

ヴァルダイ会議は2000年代初頭からロシアの主導で開催されており、同国の幅広い外交政策の見解を説明するフォーラムとして知られています。またこの年次会合は政治・学術界のエリートが出席することに加えて、ロシアが国際社会のエリートに直接メッセージを送る場としても利用されています。

2025年のヴァルダイ会議におけるプーチン大統領の演説は、ウクライナ危機が今なお続き、欧州が国防費の増額を迫られ、BRICSが加盟国拡大により西側諸国による秩序体制に挑戦していた時期に行われたことで、意義深いものとなりました。こうした状況において、BRICSは新たな金融・貿易システムを確立しうるプラットフォームとして紹介されています。その新たな金融システムにおいては、米ドルの支配から距離を置き、特に米国の制裁や圧力を受けている諸国にとって、独立した取引が可能になります。

プーチン大統領は予てから、西側諸国の覇権の衰退と多極体制の強化を強調してきました。特に去る7月6日、ブラジルにてビデオ通話形式で行われたBRICS首脳会議における演説では「あらゆる兆候から、自由主義的な国際化のモデルが時代遅れと化し、貿易活動の重心が新興市場へと移行しつつあることが見て取れる。富裕国に有利だった一極的な国際関係体制は過去のものとなり、より公平な多極体制へと取って代わられている」と強調していました。

21世紀初頭から現在までの過去30年間の劇的な発展、すなわち中国、インド、ブラジルなどの新興経済国が世界経済と貿易に果たす役割の増大、SCO上海協力機構やBRICSグループなどの西側圏外の地域および国際組織の創設と拡大、そして特に第1次および第2次トランプ政権時代の米国の一方的な行動に対する世界規模での否定的な反応を考えると、自由主義的国際化モデルが廃れ徐々に衰退している、というプーチン氏の強調内容は十分に納得のいくものです。

今日、自由主義的な経済体制や多国間国際機関、そして自由民主主義的価値観の堅持という3つの要素に基づくリベラル的な国際体制はもはや深刻な浸食を受け、衰退の危機に瀕しています。実際、西側諸国の当局者は西側モデル、すなわち自由民主主義が疑問視され、それに基づく国際体制も衰退しつつあることを懸念しています。一方で、新たな世界情勢は、西側中心の国際体制の根本的な変化と、西側以外の諸国の存在を伴う新たな国際体制の出現を示唆しています。

一方、西側諸国のリーダーである米国は、依然として単独行動主義を続行し、国際舞台において自国の利益と目標を優先し、自国とその同盟国の利益に沿う形で危機を収拾しようとしています。また、アメリカは中国がロシアと共に、西側諸国が構築し支えてきた自由主義的な国際体制に挑戦し、国際システムで西側諸国が長年にわたり築いてきた権威を揺るがすことを懸念しています。しかしながら、世界の現実と動向からは、新興国が世界経済、貿易、政治において果たす役割の拡大、国際通貨としての米ドルの弱体化、そしてBRICS諸国間の貿易における各国の自国通貨利用の増加が見て取れるのです。

 

 


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