大西洋を隔てた欧米分離の別の様相: イタリアが対米安全保障依存からの欧州の解放を求めた理由とは?
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イタリアのメローニ首相が、安全保障面における対米依存からの欧州の解放を求めました。
(last modified 2025-12-15T09:31:49+00:00 )
12月 15, 2025 18:28 Asia/Tokyo
  • イタリアのジョルジャ・メローニ首相(右)とドナルド・トランプ米国大統領
    イタリアのジョルジャ・メローニ首相(右)とドナルド・トランプ米国大統領

イタリアのメローニ首相が、安全保障面における対米依存からの欧州の解放を求めました。

【ParsToday国際】ジョルジャ・メローニ首相は欧州諸国に対し、安全保障面での対米依存から脱却し、米国からの独立の代償を支払うよう求めました。メローニ首相は14日日曜、地元でのある会合において「ドナルド・トランプ米大統領は、『米国として身を引く意向であり、欧州は防衛のために自らを組織化すべきだ』と明言している。これは(自由で独立した)欧州への新たな挨拶を意味する。我々は80年もの間、安全保障を米国に委ね、自由を偽装してきたが、そこには我々自身が制約されるという代償があった。今、我々は自由の代償を支払わなければならない」と語っています。

また「米国の新たな国家安全保障戦略は欧州への警鐘である」とし、「我々イタリア側としては、自らのパートナーに忠実でありたいが、一方で他の何者にも影響されないことを望んでいる」と述べました。

メローニ首相は最近数ヶ月において、「ヨーロッパは安全保障面での対米依存から解放される必要がある」と繰り返し強調してきました。イタリア首相がヨーロッパ諸国の安全保障上の独立性回復を訴えたのは、第2次トランプ政権における米国の安全保障戦略の変化、特に米国の新国家安全保障戦略の発表および、米国がヨーロッパへの防衛上の約束事から撤退する可能性を踏まえたためと思われます。メローニ首相は、対米依存の継続が政治・戦略的に大きな代償を伴い、欧州として何物にも隷属しない自由と独立のためにその代償を払わねばならないと考えています。

この姿勢が示されたのは、アメリカとEU欧州連合の関係が緊迫化する中でのことです。メローニ首相は、過去80年間にわたり欧州諸国が自国の安全保障を米国に託してきたという、欧州にとっての苦い現実を指摘しました。この支援は表向きには無償という印象があったものの、実際には大きな代償を伴っており、その代償とは欧州が様々な条件・誓約を付けられ、政治的・戦略的に依存・従属することでした。

こうした姿勢の理由は、複数の主要な軸から考察できます。第1に、トランプ政権が発表した米国の国家安全保障戦略の転換が挙げられます。この戦略は、米国がヨーロッパ防衛の責任負担を軽減し、ヨーロッパ諸国が自主的な防衛体制を整備すべきことを明確に述べています。このようなアプローチは、ヨーロッパ諸国の指導部にとって深刻な懸念材料となります。その理由は、もはやヨーロッパの安全保障に対する米国の約束順守をこれまでと同じレベルでは期待できないことを示していることにあります。

第2の問題として、ウクライナ戦争をめぐる欧州と米国の見解の相違があります。第2次トランプ政権において、米国はウクライナに対しロシアとの和解を繰り返し求めてきましたが、欧州はこの計画をロシアの要求の押し付けとみなし、反対してきました。これに加え、欧州が対ウクライナ軍事・経済支援の続行を約束したことから、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領が提起した28項目の和平案の受諾要求に抵抗するようになってきています。こうした視点の違いから、欧州の安全保障上の利益が必ずしも米国の政策と一致するとは限らず、依存を続けることで欧州が困難な状況に陥りかねないことが分かります。

第3に、メローニ首相は、欧州の安全保障における自律性が戦略的必要性であるとともに、歴史を動かす選択でもあると強調し、「自由には代償が伴い、欧州はそれを支払う覚悟が必要だ」と述べています。メローニ首相の発言は、過度の対米依存により欧州の独立した意思決定能力が制限され、アメリカの政変の影響を受けやすくなっているという、欧州指導者らの広範な懸念を反映しています。

ですが、アメリカの安全保障への依存から脱却しようとする欧州の努力がもたらす結果もまた重大なものです。第1の結果として、欧州諸国の国防費が増えることになります。安全保障上の独立は、防衛産業への巨額の投資、軍事予算の増額、そしてEUレベルでの共通防衛構造の構築を意味します。もっとも、これは各国政府に経済的な圧力をかける可能性もあるものの、長期的には欧州の抑止力の強化につながると思われます。

第2の結果は、大西洋を隔てた欧米間の関係の変化です。欧州が安全保障上面での自立の道を真剣に追求するならば、米国とのこれまでの関係は再定義されると見られます。この変化により、欧州における米国の影響力が低下し、欧州における新たな安全保障体制が形成される可能性が浮上してきます。

そして3番目の結果として、EU内の結束強化が考えられます。米国への依存は、一部の政府が他の政府よりも米国の支援に大きく依存していることから、欧州諸国間の分裂を引き起こすこともありました。しかし、安全保障の自律性を推進することで、EUはより広範な協力へと導かれ、共通の防衛政策の下地ができる可能性があります。また、国際体制における欧州の地位を高め、米国に依存せずに自らの利益を追求できる独立した強力な勢力となる可能性も秘めています。

結論として、メローニ首相の発言は地政学的な現実を反映していると言えます。世界は新たな秩序体制へと移行しつつあり、大国は対外的な約束事の縮小を目指しています。この新たな体制序の中で、欧州が効力のある独立した地位を確保したいなら、米国の安全保障の影から脱却し、安全保障と軍事における独立性のために代償を払う必要があります。確かにこの道は困難で費用もかかると思われますが、特に安全保障と軍事の面で、緑の大陸とされるヨーロッパにこれまでとは違った未来をもたらすことができるでしょう。

 


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