西側の思想家が考える預言者ムハンマド(23)
イギリスの著作家でイスラム教徒のマーティン・リングスは、「ムハンマド:初期文献に基づくその人生」という著書の中で、預言者ムハンマドに初めて下されたコーランの節について述べています。
リングスはここで、預言者の妻、ハディージャのいとこであったワラカ・イブン・ナウファルの物語に触れています。ワラカ・イブン・ナウファルは、夫であるムハンマドに神の啓示が下され、彼は間違いなく、神の預言者だとハディージャに言いました。その後、ワラカはムハンマドに預言者になることを伝え、次のように語っています。
「あなたは皆に嘘つきと呼ばれ、冷酷な態度を受けるだろう。追放され、戦いを挑まれる。私は生き続けてその日を見ることがあれば、あなたの宗教を守るだろう」 ワラカはそう言うと、かがみこみ、ムハンマドの額に口づけをしました。
リングスは著書の中で、預言者の使命の難しさについて述べ、次のように記しています。
「若者たちが誰でも、すぐに神の啓示を受け入れたわけではない。しかし少なくとも、一部の若者たちの目や耳、自尊心や自負心はムハンマドの呼びかけに応じていた。彼らはあたかも眠りから目覚め、新たな人生に足を踏み入れたかのようだった。啓示は、不信心に染まっていない人々の耳に真理の鐘を鳴らしていた。コーラン第23章アル・ムウミヌーン章信仰者、第115節の内容のように。この節には次のようにある。
『我々があなた方を無為に創造し、我々のもとに帰されないと考えるのか?』
コーランの節は光り輝いており、導きの力を持っている。ムハンマドの教えが受け入れられた別の理由は、彼の人格にあった。ムハンマドは皆に正直な人間として知られ、誰かをだまそうとする意図などなく、非常に賢いため、欺かれるはずがなかった。彼のメッセージは吉報と警告を含んでいた。警告は聞くものに行動を起こさせ、吉報は彼らの心を喜びで満たした」
リングスの「ムハンマド:初期文献に基づくその人生」の翻訳者であるサイード・テヘラーニー・ナサブは、次のように語っています。
「リングスは、真理を理解することで、イスラムの預言者ムハンマドに魅了され、その生涯の多くの時間をこの偉人の紹介に費やした。私は2004年夏の終わり、リングスが亡くなる1年前、彼の家で彼に会った。リングスは風格と威厳をたたえながらも、恭しく預言者について語り、預言者を神から人類への大きな贈り物と呼んだ。彼の家には、壁面上のアッラーという神聖な名と礼拝用の敷物だけがあった。その部屋は彼の家の中のモスクのようであり、そこで一日に5回祈りを捧げ、、恐らくそこで本も執筆していたと思われる。いずれにせよ、彼の生活がイスラムの預言者に従い、正確な時計のように、完全に規則正しい意味のある計画に基づいていることは明らかだった」