西側の思想家が考える預言者ムハンマド(24)
これまでの2回に渡り、イギリスの著作家、マーティン・リングスの著書、「ムハンマド:初期文献に基づくその人生」の内容の一部をご紹介しました。
マーティン・リングスは、この著書の中で、イスラムの預言者ムハンマドの人格を、ありのままの姿で独特の芸術的な情熱によって表現し、誠意をこめて、預言者への敬意をあらわしています。多くの人が、この本の中の預言者の人生の物語を読み、深い感銘を受けています。
リングスは、著書の中で、「神から世界の人々に送られたイスラムの預言者という輝く光は、特定の時代に限られず、永遠のものである」と強調しています。また、新興宗教を批判し、偉大な宗教の建設的な役割に触れ、預言者イーサーとムハンマドを、宗教的に優れた人物として紹介しています。リングスは、著書の中で、メッカ征服後のムハンマドの行動を賞賛し、次のように記しています。
「預言者は、カアバ神殿の中にある神々、偶像、それらのシンボルのすべてを破壊するよう指示した。だがイブラヒームとマルヤム、その息子のイーサーの肖像画だけは破壊させなかった」
リングスは、預言者の奇跡について次のように記しています。
「預言者は数々の奇跡を持っていた。一度、クライシュ族の指導者たちが、預言者であることを証明するために満月を真っ二つにするよう求めたことがあった。すると預言者は、その要求を果たしてみせた。ところがクライシュ族の指導者たちは、その大きな奇跡を魔術だとし、預言者は彼らに魔術を使ったと主張した」
リングスによれば、預言者はさまざまな奇跡を持っていたにも拘わらず、これらの奇跡を自分の活動の中心に据えることはありませんでした。なぜなら、彼の最大の奇跡は啓典であったからです。それはあらゆる時代に人々を導くための聖典です。コーランは光と導きの書なのです。
リングスは、預言者が人類にもたらした最も重要なもののひとつとして、救世主の存在を知らせたことを挙げています。リングスは次のように記しています。
「人類社会の大部分は最も危険なレベルに達し、それを乗り越えることは難しい状態にあった。しかし、それが全体に広まることはないだろう。神が世界を放置するとは考えられない。預言者は、世界の終わりが醜さや卑しさに満ちている中で、マハディと呼ばれる救世主が現れるとした。この救世主は間違いなく現れる」
リングスは、97歳で亡くなる1ヶ月前まで著作活動を続けていました。有識者の多くが、マーティン・リングスを形而上学の人だとし、中には彼を第一級の詩人だとする人々もいます。しかし、リングスの身近にいた教え子たちにとって、この人物は、美の追求と神への崇拝の2つの事柄によって知られています。リングスは、美を愛し、自宅の庭に花や植物に囲まれた小さな楽園を作りました。2005年5月に彼が亡くなると、その遺体はこの小さな楽園に埋葬されました。リングスは、著作をコーランの節で締めくくっています。そこには、コーラン第33章アル・アハザーブ章部族同盟の第56節があります。
「まことに神と天使たちは預言者に平安を送る。信仰を寄せた人々よ、[あなた方も]彼に平安を送り、挨拶をしなさい。相応しい挨拶を」