韓国大統領選挙のムン氏の勝利
韓国で実施された大統領選挙で、「共に民主党」のムン・ジェイン氏が当選しました。
選挙前の世論調査でも、ムン氏が優勢でした。
ムン氏は当選後、「韓国の人々は選挙に参加することで統一を示した」とし、「私を支持しなかった人たちのためにも働く、みんなの大統領になる」と語りました。
この発言は、この数ヶ月、パククネ前大統領の罷免により、韓国社会が混乱に陥っていたことを考えると、重要なものとなっています。
なぜなら韓国国民は、パククネ前大統領の支持派と反対派の2つに別れており、双方が街頭に繰り出し、自分たちの主張を訴えていたからです。このような状況の中で、国民が共に民主党の候補者を支持し、彼が保守系の候補者に大差をつけて勝利したことは、パククネ前大統領の不祥事の後、「自由韓国党」に名称を変更したセヌリ党の政策に対する断固とした拒否を示すものとなりました。ムン氏は、2012年の選挙で、僅差でパククネ氏に敗れていました。
韓国大統領の任期は5年ですが、パククネ大統領の罷免により、今回は任期満了を待たずに早期の大統領選挙が行われました。
ムン氏は、韓国が、国内、地域、国際の点から多くの問題に直面している中で、大統領に就任します。国内では、失業、経済成長の停滞、貧困の拡大、女性への差別といった問題を抱えており、ムン氏は選挙の討論会の中で、その解決を約束しています。
地域についても、北朝鮮や中国との緊張の継続が最大の問題です。韓国のこれまでの保守派政権は、アメリカの対北朝鮮政策に同調し、朝鮮半島に深刻な危機をもたらしました。それは全面的な戦争につながる可能性があり、その結果は全く予想ができません。このことから、韓国の新大統領は、選挙公約の中で、北朝鮮との協力を約束し、北朝鮮の指導者と会談する用意すら表明しました。
北朝鮮政府が、保守派の候補者に票を投じないよう、韓国国民に要請したことは、北朝鮮にも、韓国との対話と緊張緩和を望む意向が存在することを示しています。しかし重要なのは、アメリカのミサイル迎撃システムTHAADの韓国配備を巡る中国との最近の関係の悪化です。
中国は、THAADの韓国配備に反対しており、それを自国の国家安全保障の深刻な脅威と見なしています。韓国の新大統領も、この配備への反対を示唆し、アメリカからは独立した安全保障政策を進めることを求めています。とはいえ、中国は、ムン氏に具体的な行動を期待するでしょう。
THAADの配備に反発し、中国が韓国に対して行使した経済制裁により、韓国の観光会社、航空会社、その他の産業は、大きな損害を蒙むったため、新大統領には、これに関する具体的な行動が強く求められています。
国際分野では、アメリカとの関係が、ムン氏の最大の問題となるでしょう。なぜならムン氏は、アメリカの地域政策、特に北朝鮮政策やアジアの軍国主義への傾倒に完全に追従することには反対しているからです。ムン氏がアメリカの地域政策ではなく、どの程度韓国の国内の情勢と地域の現実に自身の政策を調和させることができるかには、さまざまな問題が関係してきます。
トランプ大統領が最近、北朝鮮のキムジョンウン朝鮮労働党委員長との会談の意向を示したことに注目すると、政治的な観点から、韓国の新大統領は、北朝鮮との協力に関して問題はないように見えます。しかし、アメリカの軍の司令官は依然として、THAADの韓国における稼動と、朝鮮半島周辺海域でのアメリカの艦船の駐留を強調しています。それに対しては、北朝鮮だけでなく、中国もその結果を懸念しています。こうした中、中国政府は、アメリカのハリス太平洋軍司令官の更迭を求めています。