視点
米元高官や専門家らがバイデン政権の核合意復帰を要請
欧米の元政府高官や核不拡散の著名な専門家ら40名からなるグルーブが声明を発表し、米バイデン政権に対して核合意復帰のための交渉を成功裏にまとめるよう要請しました。
これらの専門家は、2018年に核合意から離脱したトランプ政権の政策を受け継いでいることは「無責任」だとしました。この声明では、もしバイデン政権がトランプ前政権の政策を変更しないならば、「イランが核武装する危険性を高めることになる」としています。
今回の声明は、オーストリア・ウィーン協議に出席している全関係国が、核合意復活のための新たな合意成立の可能性について日増しに悲観的な見方を示している中で発表されました。
米の共和党議員のほぼ全員に加えて民主党議員の多くも、検討なしでのイランとのいかなる合意にも反対する旨を表明しています。バイデン政権は、イラン・イスラム革命防衛隊のいわゆる「テロ組織」指定解除をめぐって、国内の反対に直面しています。今回専門家らが発表した声明は、革命防衛隊のテロ組織指定という問題には直接触れていませんが、「下院議員の一部が、イランを核合意で規定された核活動の制限に復帰させるために必要な歩みを止めようと脅している」と指摘しています。
イランと英仏独中露の4+1グルーブおよびアメリカの間接的参加のもと8ラウンドにわたって長い協議が続けられましたが、最初こそアメリカによる対イラン制裁の解除やイランによる核合意の履行再開などで合意到達に楽観的な見方がありましたが、いまやこれについては疑いや失望的な見方さえ存在しています。
イランは、トランプ前政権が2018年の核合意離脱以降に発動したすべての制裁の解除、およびその検証とバイデン政権がアメリカによる再度の核合意離脱がないことを保証するとした条件を何度も強調してきました。また、イランは革命防衛隊のテロ組織指定解除を求めていますが、この要求についてもアメリカは難色を示しています。
一部報道によれば、バイデン政権はコッズ部隊を除く革命防衛隊をテロ組織指定から解除することに前向きなものの、イランからは反発を受けているとされています。重要なのは、英仏独を含むウィーン協議の全参加国が協議の一刻も早い妥結を求めているものの、合意到達には残る重要課題についてアメリカが政治決断を下すのを待っている状態です。
イラン国会・国家安全保障委員会委員のキャリーミー・ゴドゥースィー氏は、「欧州はアメリカのウィーン協議での振る舞いを不快に思っており、『我々はイランと合意に達したにもかかわらず、アメリカがイランの要求を受け入れようとしない』と語っている」としています。
イランは、アメリカが現実的に行動するなら、ウィーン協議の合意到達の可能性はあると再三表明してきました。イランが求める合意とは、各種制裁が最大限解除されるものです。
イランのアミールアブドッラーヒヤーン外相は、「我々は、過剰な要求に配慮することもなければ、譲れない一線から引き下がることもないと繰り返し強調している」と述べています。
それでもなお、バイデン政権は共和党議員の脅迫など国内の反対により、重要な決断をする用意ができておらず、過剰で核合意の範疇を超える要求を繰り返しているのです。
米国務省のプライス報道官は、「イランが核合意の範疇を超える制裁解除を求めるなら、同様に核合意の範疇を超えるアメリカの懸念を解消せねばならない」と述べています。
実際、アメリカはイランのミサイル開発能力や地域政策などの問題を、イランとのあらゆる合意にねじ込もうとしています。一方、イランは、核合意は純粋に核問題に関する合意であると繰り返し表明しています。