ラマザーン月、聖なる月(8)
(last modified Sat, 23 Apr 2022 12:05:00 GMT )
4月 23, 2022 21:05 Asia/Tokyo
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今回はまず、なぜラマザーン月に断食が義務付けられているかについてお話することにいたしましょう。それから、コーランの朗誦をお聞きいただき、その教えについて説明してまいります。そして、ラマザーン月における医学的、栄養面で留意したい事柄についてお話したいと思います。

宗教の掟には、神が定めた神秘的な奥深い法律や礼拝の決まりが存在します。これらの掟の1つが、ラマザーン月における断食です。イスラムの文化では、ラマザーン月は1年のうちで最も重要で敬意を払うべき月であり、イスラム教徒の間では神の月として知られています。

シーア派4代目イマーム・サッジャードの言葉を借りれば、ラマザーン月は清めの月であるとともに、試練の月でもあります。この月は、神の僕である人間が神の命令と満足のために、普段なら許されている楽しみごとや自然的なニーズをも我慢し、自らの創造主なる神の僕として服従する月でもあります。

自らの内面的な欲求を抑制するというこの1ヶ月の修練は、年内の残された月日に向けて意欲を高め、自重するために有益なものです。それは、1ヶ月間にわたって神の命令により、自らの内面的な欲望と戦い、ただ神の満足のために飲食などの自然的な欲求をも抑える人は、1年のうちの残りの11ヶ月間も悪魔のささやきや自らの内面的な欲望に抵抗し、敬虔で禁欲的になれる力をもてるようになるからです。

このことから、ラマザーン月は、本能のままの動物的な自分から脱却し、神の御心に沿った自分に生まれ変わる月だといえます。実際に、この聖なる月は宗教にかなった性格を身につけ、神に近づくことを目標としています。これについて、イランの宗教学の専門家シャリーフ師は次のように述べています。

「ラマザーン月は、陰暦であるイスラム暦の月の中で、唯一コーランにその名が出てくる月であり、神が防衛目的以外の戦闘行為を禁じた4つの月の1つである。この聖なる月には、イスラムの聖典コーランをはじめ、キリスト教の新約聖書、そしてユダヤ教の律法書トーラが下されている。さらに、イスラムの伝承ではラマザーン月は神の月、そして預言者ムハンマドの共同体の宴が催される月と呼ばれ、神はこの月に自らの僕たちをこの上ない慈しみをもって歓待してくださる。預言者ムハンマドは、『この聖なる月の全ての日に断食を行った者は、神により必ずその全ての罪が赦され、残りの命をも保障される』と述べている。そもそも、ラマザーンとは、厳しい暑さや砂地に灼熱の太陽が照りつけることを意味する。このような名称が選ばれた背景には、独特の絶妙さや正確な洞察力が見て取れる。それはおそらく、灼熱の太陽に照らされて溶けてしまう、或いは変化することを意味していると思われるからである。実際に、この聖なる月は特に日照時間の長い夏の厳しい暑さや照りつける太陽による喉の渇きや、空腹に耐える月だと言える」

ラマザーン月

 

それでは、ここからはコーランの節をお聞きいただきながら番組を進めていくことにいたしましょう。まず、コーラン第4章、アン・ニサーア章「婦人」第64節をお聞きください。

 

 

“我が使徒を遣わしたのは、ただ神の御許しの許に服従、帰依させるためである。もし、彼らが自らを虐げたとき(神にそむいた時)にあなたの許に来て、神のお赦しを願い、神の使徒が彼らのためにお赦しを祈るならば、彼らは間違いなく神が、度々許される御方、慈悲深い御方であられることが分かるであろう

この節は、次のように解釈されます。神は、自らの僕たちの間から、自らのメッセージを人類に伝えるべく、ある人物たちを預言者に選びました。彼らは、人々を人間としての完全の極致に導くことを義務付けられています。しかし、この節が述べているのは、預言者たちが持っているものは全て神からのものであり、彼らに従うことは、神に従うことと同様に義務とされ、それは崇高なる神の命令によるものだということです。

そして、この節ではさらに続いて、罪を犯した人にも立ち直りの道を開いています。ですが、この節における重要で注目すべきもう1つの点は、神にそむいたという表現を使わずに、自らを虐げたという表現に言い換えていることです。即ち、ここでは、神やその預言者の命令を無視し、彼らに従わない人々は事実上、自らを虐げた人とされています。それは、神の命令がどの角度から見ても人間のためになり、この命令に注目しなかった人は、自分の生活の基盤をかく乱し、精神面でも進歩しないと考えられるからです。

 

ラマザーン月

 

それでは、ラマザーン月に医学面や栄養面で心がけたい事柄についてお話しすることにいたしましょう。現在断食を実践しているイラン人女性のサーレヒーさんは、次のように語っています。

「私は、断食が非常に好きである。この聖なる月の精神性あふれる側面や厳粛なムードは心にしみる美しいものである。だが、断食をするとき、私はだるさや倦怠感に襲われる。このため、自分がこの宗教的な義務を全うできないのではないかと不安になることがある」

 

それではここで、伝統医学の研究者で生理学の専門家である、ミールガザンファリー博士のお話をお聞きいただくことにいたしましょう。

「暑さの厳しい時期に断食をすることは、他の季節の断食とは少々異なる。夏の断食ではすぐに喉の乾きを感じることが多い。もし、職業についているなら、1日を通してエネルギーや肉体的な活動量がダウンすることが分かるはずである。ラマザーン期間中には、喉の渇きや空腹によるプレッシャーを緩和するため、できる限り早朝の食事をおろそかにしないことである。日の出前の食事をきちんととらないことは、長時間にわたり炭水化物が摂取されないために血糖値の低下やだるさ、頭痛、神経衰弱などを招く恐れがある」

 

断食が始まる前の早朝にとる食事はサハリーと呼ばれ、これはイスラムの伝統の1つです。それは、断食により生じる実際的なトラブルを緩和し、空腹や喉の渇きを感じる時間を短縮するからです。このため、断食を行うイスラム教徒は、朝早く起床した際にはサハリーがとれる時間ぎりぎりに起床した場合でも、仮にナツメヤシ1つであれ少量の食物や水をとることが望ましいとされています。これについて、ミールガザンファリー博士は次のように述べています。

「断食前の早朝にたんぱく質の豊富な食物をとることで、空腹による体のだるさが緩和される。さらに焼肉とライス、スパゲッティといった、複数の食材を使ったメニューも腹持ちが良く、断食中にすぐ空腹を感じなくて済む。それは、これらのメニューに使われる食材は、消化に比較的時間がかかるからである。これに対し、単糖類を含む食物はお勧めできない。こうした食品には、果物のエキスで作る甘い飲み物やジャムなどがある。これらの食材は、血糖値を急速に上昇させ、早朝に体内でインシュリンが分泌される原因となる。一方、レタスなどの野菜を豊富にとることで、日中の喉の渇きが緩和される」

それでは今度は、食物栄養学の専門家ハージーファラジー博士のお話をお届けいたしましょう。

「早朝の食事は、断食をする人にとって最も重要な栄養の補給源である。この時に、適量の野菜やでんぷんをとることで、腸による栄養の吸収や消化が促進される。小麦ふすま、野菜や果物に含まれる食物繊維は、体内の水分の維持を助ける。断食をする人は、脂肪分のない、或いは少ない肉のたんぱく質を食事に取り入れるべきであり、炒め物など油の多い食事は控えるべきである。それは、そうした食物がだるさや倦怠感を引き起こすからであり、ラマザーン月には煮物や湯で物の摂取をお勧めする」

全ての宗教において、日の出前の早朝の時間は神との語らいに最も適した時間とされています。これについて、神の預言者の言葉をご紹介し、今夜の番組を締めくくることにいたしましょう。

“天使たちは、黎明に罪の赦しを乞い、断食前の食事を取る者の罪をすすがれる”

 

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