世界の情勢:西側の若者に向けた最高指導者の書簡を振り返って
数年前、イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が西側諸国の若者に向けて2つの書簡をしたためましたが、これは広く伝えられています。
西側のメディアがこれに関する報道を自粛したにもかかわらず、ハーメネイー師の書簡は大きな歓迎を受けました。
近年の国際情勢、特にテロリストや過激派の出現、フランスなどの西側諸国におけるテロの広がりは、西側のメディアや政府がイスラム恐怖症を拡大するための口実を整えています。
一方で、西側がこのようなテロ組織を支援したことで表れた難民危機は、西側で極右政党の活動が活発化する原因となり、さらなるイスラム教徒に対する圧力や、反イスラムのプロパガンダに向けた下地を整えています。
このような状況の中で、イスラム教徒は、2つの方向から標的とされています。ひとつは、テロ組織ISISが主張するイスラムがこの宗教の基本的なものとしてヨーロッパに紹介されており、もう一方では、イスラム教徒の難民がヨーロッパ諸国で大きな圧力を受けています。
この状況を受けて、ハーメネイー師は西側のイスラムに対する陰謀を暴く2つの書簡をしたため、西側諸国の若者に、イスラムのよい教えを知るよう求めたのです。
ハーメネイー師は外交慣例に即していない、独創性あふれる2つの書簡を西側の若者に向けて記しました。
ハーメネイー師のこの2つの書簡の公開は、近年における最も重要な出来事のひとつです。2つの書簡は、西側のメディアの報道自粛に向けた努力をよそに、国際レベルでさまざまな反響を呼びました。
アメリカの活動家組織、インターナショナル・アクション・センターの上級メンバー、サラ・フランダース氏はこの自粛について、次のように語っています。
「アメリカのメディアは、軍の規制や支援の下にあり、アメリカの人々、特にハーメネイー師が語りかける若者が、この貴重な書簡の内容を知ることができないようにした。イスラムの敵の目的は、イスラム諸国に対する侵略の継続に向けた下地を作り出すことにある」
ハーメネイー師の書簡の1通目は、2015年1月22日、イスラムの神聖を侮辱するフランス・パリの出版社シャルリーエブドのテロ事件と、西側の政治家とメディアの反イスラム的な行動の高まりを受けて、国外の報道各社に対して4ヶ国語で発表されました。
この書簡は、ヨーロッパと北アメリカの若者一般に対して語りかけており、フランスのテロ事件に触れ、イスラム世界とヨーロッパに関する基本的な問題のいくつかについて指摘しています。
その問題の一つ目は、イスラム排斥と、西側政府の世界の人々と文化に対する不誠実な行動です。
2つ目は、地域におけるテロの問題について暴露し、それは欧米諸国によって作られたものだとしています。ハーメネイー師は、この問題にふれ、次のように記しています。
「彼らが自分たちの雇うテロリストをイスラムの代表者としてあなた方に紹介するのを許さないでほしい」
第3の問題は、西側の若者が、イスラムの基本的な教えやコーランを通じてイスラムを知ることです。ハーメネイー師は、書簡の中で、西側の若者に対して次のように問いかけています。
「これまでに自分で直接、イスラム教徒のコーランを参照したことがあるだろうか?果たしてこれまでに、メディア以外の別の情報源から、イスラムのメッセージを受け取ったことがあるだろうか?」
また、次のように述べています。
「自分自身にこう尋ねてほしい。なぜ、恐怖を植え付け、嫌悪を広めるという古い政策が、今回は、前例のない激しさで、イスラムとイスラム教徒を標的にしているのだろうか?私が第一に求めるのは、このようなイスラムのイメージを壊すことの動機について問い、分析してほしいということだ。そして第二に求めるのは、先入観の植え付けとマイナスのプロパガンダの洪水に対し、この宗教に関する仲介のない直接の知識を手に入れるよう努力してほしいということだ。私はあなた方に、私の解釈やイスラムに関する別の解釈を受け入れることを主張してはいない。そうではなく、現代の世界において、この生き生きとした影響力のある事実が、穢れた目的や私利私欲によってあなた方に示されるのを許してはならないと言っているのだ。彼らが偽善によって、自分たちの雇うテロリストをイスラムの代表者としてあなた方に紹介するのを許さないでほしい」
実際、ハーメネイー師は、西側の現状を正しく理解し、コーランを知りそれを学ぶことで真のイスラムを容易に理解出来る道を西側の若者に示しました。とくに、ヨーロッパの若者やエリートが、直接コーランを参照することで、イスラムに導かれる多くの例が存在します。
これに関して、コーランを読んでイスラム教徒となったイタリアの投資家エドアルド・アニェッリや、フランスの著名な医師、モリス・ビュカイユの例を挙げることができます。アメリカ・シラキューズ大学のドレーク・フォード教授は、次のように語っています。
「ハーメネイー師の書簡は、西側における反イスラムの感情を抑える下地をつくりだしている。イスラムと西側世界の架け橋を築くことは、現代における最も重要な優先事項の一つだ。この書簡では、イスラム恐怖症は恐怖を広める歴史的な過程の一部だとされており、ISISとイスラムとの間を明確に区別しているのはイランの行動だ。イランはもっとも厳しい、ISISの反対者だ」
西側の若者に向けたこの書簡の1通目は、短い期間、letter4youというハッシュタグをつけて、ツイッターやフェイスブックで公開されました。ハーメネイー師は、このメッセージを公開することで、西側で広まっているイスラム排斥、イスラム恐怖症という立場に対抗する中で、それらを活用するよう、イスラム教徒に対して正確かつ根拠ある回答を与えています。
一部のイスラム諸国の首脳ですらもシャルリーエブドの攻撃を非難するためにパリを訪問し、シオニスト政権イスラエルのネタニヤフ首相とともに、いわゆるテロを非難する行進を行いましたが、このとき、ハーメネイー師は賢明さと洞察力により、書簡の中でテロの本質に注目し、その発生源は西側だとしました。
このことにより、インターネットやメディアでは、ある種の波が起こり、イスラム排斥の波を防ぐための外交談話が発せられるとともに、イスラム教徒のネット使用者は、ハーメネイー師の書簡の公開により、真のイスラムを守る行動を取りました。
この書簡が公開されたことで、西側の若者に、イスラムについて勉強し、正しいイスラムを知ろうとする動機が生じました。アメリカの大学教授、リチャード・ファルク氏は、最高指導者の一通目の書簡について、次のように述べました。
「この書簡は、美しく、人道的な内容がしたためられている。確かに若者に向けてかかれたものだが、われわれ皆にとって重要だ。この書簡の内容は、各社会の精神的、道徳的基盤を作り出し、それを全人類に広げることができる。私は84歳だが、この書簡は私に語りかけているようで、このメッセージに回答を与えようとしているほど、私は若いと感じている」
ハーメネイー師の2通目の西側の若者に向けた書簡は、2015年11月にフランスで発生したテロを受けて、共通の懸念というハッシュタグをつけられ、最高指導者のウェブサイト上で、9ヶ国語により発表されました。
この2通目の書簡では、矛盾した欧米のテロ対策、イスラム世界に対する軍事的侵略、パリのテロ、パレスチナでの流血、イラクとシリアでのISISの暴力への非難、暴力やテロを生み出す思想に対抗する必要性など、といったより具体的な問題が、イスラム世界と西側の共通の痛みとして扱われました。
この書簡が2015年11月のパリでのテロの後に出されたことから、ハーメネイー師はこの書簡で、テロの問題とその根源について注目を寄せました。この書簡では、次のようにあります。
「今日、テロリズムが我々の共通の問題であるのは確かだ。だが、最近の出来事の中で経験した情勢不安と、イラク、イエメン、シリア、アフガニスタンの人々が長年強いられてきた苦しみとでは主に二つの違いがあることを知るべきだ。まず、イスラム世界はより広い側面で、より大きな規模で、より長い年月 において、恐怖にさらされ、暴力の犠牲になってきたということだ。そして次に、残念ながらこうした暴力は常に一部の大国によって、さまざまな手段、効果的 な形で支持されている。タクフィール主義のテロリズムの明らかな支持者は、政治的に最も遅れた体制を持つにも関わらず、常に西側の同盟者の列に位置している中、地域の躍動的な民主主義から立ち上った最も明らかで発展した思想は冷酷に弾圧されている。イスラム世界の目覚めの運動に対する西側のダブルスタンダードは、西側の政策における矛盾を示す例の一つだ、また、この矛盾はシオニスト政権によるテロを支持する中にも見られる。パレスチナの抑圧された人々は、60年以上も前から、最悪のテロを経験している」
ハーメネイー師はイスラムの目覚め、イスラム世界における政治体制など、政治的、社会的な流れに対する西側のダブルスタンダードについて明らかにするとともに、テロは西側が全面的にこのような悪しき現象や、テロ組織の出現と拡大に直接的に関与した地域の政権を支持してきた結果だとしています。
最高指導者の2通目の書簡が公開された後の反響は、西側の若者やエリートに対するその影響力が拡大したことを示しました。イランに対する制裁や軍事的介入に反対するアメリカのキャンペーンのメンバーで、新聞バージニア・ディフェンダーの編集者、ウィライトゥ氏などの人物は、この書簡を読んだ後、ハーメネイー師の言葉は理性的で正しく、開明的だとしました。
大学レベルの学術的なエリートの間でも、この書簡は歓迎されました。たとえばカナダ・オタワ大学のランコート教授は、この書簡を読んだ後、次のように記しました。
「国際的なテロの根源に関する心理学的、地政学的な深い分析に心から感謝している。私は、あなたの分析が根本的に正しいと考えており、あなたがこの事実に向き合ったことに関して驚いている。私は欧米諸国の若者があなたの書簡を読み、この様な鋭い見解をもつよう、そしてこの書簡が西側の人々の目覚めを促すよう、希望を抱いている」
シリアとイラクの政府が同盟勢力とともに、ISISとの戦いに勝利したことにより、現在の地域情勢は抵抗戦線が望む方向に進んでいます。こうした中、ハーメネイー師の書簡について考えるための良い機会が生まれています。これにより、西側の人々、特に若者は、真のイスラムが暴力や過激主義に反対しており、また、テロの根源は、自身の利益の確保のため、テロ組織の結成と拡大を支援した西側政府やその地域の同盟勢力にあることに気付くはずです。