アメリカ国務省によるイランでの人権侵害の主張
西側諸国は、世界における人権状況への懸念を表明しています。
この中で、国連人権理事会に影響力を及ぼし、人権に関する事実ではなく、政治的な報告を発表し、覇権主義に反対する国々に圧力をかけています。ではなぜ、人権問題が、西側の政治的な目的に利用され、真の問題が無視されるのでしょうか?
これから数回に渡り、アメリカ国務省のイランの人権状況に関する報告の内容についてみていくことにいたしましょう。この番組では、アメリカが人権に関する報告を発表する目的、西側における人権のダブルスタンダードについて検討し、アメリカなど、世界で人権擁護を主張する国々による明らかな人権侵害の例についてお話しする予定です。
人権に関する懸念は、明らかに重要な問題です。この懸念がしかるべき形で建設的に提起されれば、人類社会に大きな効果をもたらすことになるでしょう。イランはこれまで何度も、宗教的、人間的な価値観に注目し、人権に関する真の懸念を緩和することを重視していることを強調してきましたが、西側が、イランなどの人権の問題を政治化しようとしているとする懸念も、何度となく表明してきました。
こうした吹き込みとして使用されている手段のひとつは、毎年、アメリカやイギリスの外務省によって各国の人権侵害として発表される報告です。これらの報告では、世界における人権擁護を主張する国々が、イランを人権侵害で非難しています。国連人権理事会も、根拠のない報告を発表しています。
アメリカをはじめとする西側のイランに対する動きは、近年、イラン恐怖症を広める目的で、核活動、人権侵害、テロ支援という3つの問題に基づいて行われています。これらの問題は常に、アメリカによって、政治的な手段として用いられてきました。アメリカ国務省は、折にふれて、各国の人権状況に関する偽りの報告を発表し、イランの人権問題に疑問を提示しています。
これらの報告の一部は、イランの人権問題を担当するアフマドシャヒード国連特別報告者によって作成されています。その中では、根拠のない事実に反するインタビューや発言が引用され、証拠を提示することなく、“人権の組織的な侵害”を行っているとしてイランが非難されています。これらの報告では、イラン社会の懸念すべき状況を系統立てて示そうとする努力が見られます。カナダ、アメリカ、イギリスの政治ロビーによって作成されている報告では、イランの人権状況が分析されていますが、その主な目的は、政治的な圧力を強化し、イランを国際社会で孤立させることにあります。これらの報告は、イランでの市民の自由の欠如や人権侵害という使い古された政策の中で発表されており、実際、西側によるこの問題の道具としての利用を示しています。
アフマドシャヒード特別報告者や西側諸国の外務省によるイランでの人権状況に関する報告では、イランでは人権擁護における規定を含んだ政策や法が無視されていると主張されています。この種の報告の作成者は、アメリカ国務省であろうと、アフマドシャヒード特別報告者であろうと、イランの人権状況を危機的なものに見せようとしています。その中では、イスラムの戒律に沿ったイランの法の行使が、人権への侵害として挙げられています。
アメリカ国務省のイランの人権状況に関する今年の報告でも、これまで同様、報復刑や麻薬密売人の死刑の他、表現の自由の無視、宗教少数派に対する圧力といった主張が、イランにおける人権侵害を非難する口実にされています。
アメリカの報告は、実際、核活動やテロ支援というイランに対する西側の主張や動きの輪を完成させるものであり、これらは皆、イラン恐怖症の拡大という問題につながります。アメリカと同時に、イギリス外務省も世界各国の人権状況に関する報告の中で、イランでの人権侵害という事実に反する報告を認める主張を行っています。これは偶然の一致ではないでしょう。
明らかに、この種の報告の作成者の目的は、イランのイメージを歪めることにあります。彼らは国連人権理事会を政治的に利用し、世論を扇動し、イラン恐怖症を広めようとしています。しかし、国連人権理事会の責務は、人権問題が政治的に利用されるのを防ぐことにあります。
アメリカ国務省の報告は、実際、アメリカと西側のその同盟国のイランに対する敵対政策を反映したものです。アメリカは、核問題において、それまでの立場を譲歩せざるを得なくなったため、現在、イランにおける人権状況への懸念を主張し、敵対政策の継続を正当化しようとしています。
アメリカなど、人権の主張者は、なぜ、イランを人権侵害で非難しようとするのでしょうか?彼らは自分たちの報告が、事実に反し、政治的な目的を持ったものであることをよく知っています。また、人権擁護を主張する国で、一体どれほど人権が守られているのでしょうか?果たしてこれらの国は、人権に対して平等な見方を持っているでしょうか?それとも、テロとの戦いと同じように、人権問題に関しても、自分たちの都合のよいように、よいものと悪いものに分けているのでしょうか?
これらの疑問に答えるためには、さらなる分析が必要です。実際、イランは覇権主義体制に抵抗するという偉業を成し遂げています。もしイランが全力で圧力に抵抗していなかったら、今日、イランの人権侵害が非難されることも、イラン恐怖症を広める動きも存在しておらず、イランは覇権主義大国の衛星国のひとつとなっていたでしょう。
イランの人権状況に関する西側の非難を分析する際には、何よりもまず、覇権主義大国が常に、イランのイメージを破壊しようとしていることに注目すべきです。一方でイランは、真の価値を守り、抵抗することで、覇権主義大国の不当な要求に従うつもりはないことを示してきました。そのため、自分たちの権利を守るためには、その犠牲を支払う必要があります。イランに対する世論操作は、実際、理不尽な大国に対するそのような抵抗の結果、生じているのです。
これまでの経験は、理不尽な大国が、覇権主義体制の要求に従わない限り、世界のいずれの国に対しても、独立した立場を取ることを許していないことを示しています。1979年のイランイスラム革命勝利後、アメリカを筆頭とした覇権主義大国は、イランを屈服させ、自分たちの目的を果たすためにあらゆる手段を用いてきました。彼らが、人権問題などにおいて、イランに影響力を及ぼすためにわずかでも隙を見つけていたら、イランにダメージを与えるための機会と捉えて、声明の発表や報告の提示だけに留まっていなかったでしょう。
実際、人権状況に関する西側の主張は、西側社会の内部でも、多くの問題に直面しています。そのため、これらの国は、仮想空間を利用し、イランのイスラム体制を内側から破壊しようとしています。イランのイスラム体制は、自らの理念と目標に到達するために、あらゆる圧力に対抗する決意であり、この抵抗が発信する明らかなメッセージは、世界の大国の覇権の否定です。
イランの人権状況に疑問を呈するための西側の努力は、実際、イランのイスラム体制に対するアメリカとその同盟国の戦略の一部です。現在、核問題は、イランのイメージを壊すための西側の世論操作の軸から外れましたが、人権侵害やイランの防衛力の脅威、弾道ミサイルの保有といった主張が、イラン恐怖症政策を継続するための手段となっています。
こうした世論操作は、イランに対する数々の反人道的な行動の中で行われています。それらは、アメリカなど、人権擁護を主張する国々の直接、あるいは間接的な関与によって行われています。その例については、次回の番組でお話しすることにいたしましょう。