ペルシャ語ことわざ散歩(169)「情愛により棘が薔薇になる」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「情愛により棘が薔薇になる」です。
ペルシャ語での読み方は、Az mohebbat khaar-ha gol mi-shavadとなります。
このことわざが意味しているのは、情愛や優しさにより他人を宥め穏やかにさせられること、または最もつらく苦しい状態の中でも情愛や優しさにより何かを成し遂げられること、これ以上なく性格が悪いと思われる人をも惹きつけられることなどを意味しています。
このことわざは、ある物語に由来しています。ある女性が結婚し、夫の下に嫁ぎましたが、どうしても姑とは口論が絶えませんでした。ある日、この女性は姑の毒殺を思い立ち、薬局に出かけ毒物を買い求めようとします。
しかし、この計画を知った薬剤師は、この女性が姑を毒殺すれば、彼女自身が疑われることになるだろうと考え、ある練薬を彼女に与え、「これを毎回食事に混ぜて姑に与えよ。そうすると、薬がだんだん効いてきて最終的に姑は命を失うだろう」と告げます。そして、この間は姑と表向きにはうまく折り合うよう諭します。
さて、その女性は毎回姑にその薬を混ぜて食事を出しました。この間、彼女は芝居を演じるかのごとく、姑と表向きに折り合いました。そして数週間がたつと、姑はすっかり優しくなりました。さて、そうしたある日、この女性は再びある薬局に出向き、もう姑を実の母親のように好きになったから、今度は前の薬の毒が抜ける薬をくださいと頼みました。すると、薬剤師は「ご心配なく。あの薬は毒薬ではありませんでした。毒薬はあなたの意識の中にあったのですよ。あなたの情愛により、毒素はもうなくなりました」と答えたということです。
日本でも「アラビアンナイト」として有名な「千一夜物語」の中で、毎晩1人ずつ女性を殺めていたとされるサーサーン朝ペルシャのシャフリヤール王に、側近である1人の大臣の娘シェヘラザードが毎晩面白い話を語り聞かせ、王が話の続きを聞きたいがためにシャヘラザードを殺めるのをまた1日、また1日と延ばし、遂に一千夜となったときに、シャフリヤール王の心は温かく溶け、それ以降毎晩1人ずつ女性を殺めることを止めた、という話はよく知られているかと思います。
私たちの悩み事のかなりの部分は、人間関係が占めていると言われています。もちろん、地球上に生きている80億人以上もの人々のすべてと仲良くし、分かり合うことは難しいかもしれません。どうしても無理な場合は距離を置くなどの方法もやむをえないと思われますが、今回ご紹介した方法もぜひ一度お試しいただければと思います。それではまた。