イランの芸術
イラン伝統手工芸・ガラムカーリー
今回は伝統工芸の1つで、表面に様々なデザインの模様がプリントされた布地・更紗の制作技術である、ガラムカーリーをご紹介してまいります。
私たちは今、イラン中部イスファハーンにある伝統的バザールに来ています。
ここは、リネンの生地の表面に様々な模様をプリントする、更紗の制作工房です。この技術は、ペルシア語でガラムカーリーと呼ばれています。
ー 何をしていらっしゃるのですか?
ここでは、布地の表面に様々な模様をプリントする作業が行われます。
ー ここで使われる生地は、決まった素材ですか?
ほとんどはリネンですが、木綿の生地を使うこともあります。
ー どのくらいの期間、このお仕事をされていますか?
かれこれ40年ほどになります。私の父は建築家でしたが、私は個人的な興味から、この業界に入りました。バザールでこの仕事がどのように行われるかを目にして、そのとりこになりました。
ー ガラムカーリーの仕事について説明していただけますか?
プリントされるデザインは、非常に多岐にわたります。また、色調も様々です。
図柄や配色は、その時々に合わせて選びます。
例えば、バザールに来るお客が好む色柄の傾向を見て、それに合わせたものを取り入れたりします。
バザールの状況や需要に従って生産していくのです。
ー 図柄は、型を使ってプリントするのですか?
はい。色彩や模様は様々なので、型も多岐にわたります。
様々な型のうち、いくつかをお見せしましょう。
例えばこれは、「パテ」と呼ばれる型で、布地の角もしくは中央部に使います。
この型による模様の全体図は、こちらの布地のようになります。
模様は非常に沢山あります。
さらに模様には、様々な色が使われます。
これは第1の色の型。
第2の色は赤系です。
こちらが第3の色、こちらは第4の色です。
ー 色を番号で分けているのはなぜですか?
それは、色を抜けなく構成させるためです。
ー この模様は、女性用の上着に使えばきれいになりそうですね。
そうですね。これは、イラン風の衣装によく使われる模様です。
この手工芸は、今から400~500年前のサファヴィー朝時代に広がりました。
その模様の多くは、草花や樹木をモチーフとしていました。
しかし次第に、「ライラとマジュヌーン」「シーリーンとファルハード」のような、イランの恋愛物語をモチーフとしたデザインも加わっていきました。
ガラムカーリーではまず、布地の端に決まった模様がプリントされます。
それから、布地の中央部に他の模様がプリントされます。
様々な模様が彫り込まれたプリント型は、西洋梨の木などを使って作られます。
ガラムカーリーの原形は、13世紀のモンゴル軍の侵攻によって伝わりました。しかし、芸術の民であるイスファハーンの人々はその技術を改良して、創意工夫により様々な模様を加えていき、現在のようなガラムカーリーの形としたのです。