経済における伝統工芸の役割
二回目の今回は、各国の経済における伝統工芸の役割と特徴についてお話いたしましょう。
伝統工芸については、複数の定義があります。ペルシャ語の大辞典デホダー辞典には、「伝統工芸とは、絨毯、布、金属工芸など手で作られたもの」とあります。伝統工芸の製造工程の一部は、手や道具によって行われます。このため、デホダー辞典の定義では、製造の基本工程の一部が機械によって行われた生産物もまた、伝統工芸と見なされるということになります。さらに製造したり生産物に形を与える上での人間の創造の効果的な存在、この種の製造工程における様々なデザインや多様性もまた伝統工芸の特徴となっています。
伝統工芸は工業生産と家庭生産の両方があり、小さな産業のように町や村に根付いており、最新の技術を必要とせず、独自の伝統的な専門性によって行われています。使用される材料の大部分が国内で手に入るものです。さらに、伝統工芸は消費性と芸術性の二つの特徴があり、生産者の思想や趣向、文化の影響を受けているため、それを伝統芸術を呼んでいます。国内の資源から原料の主要な部分を確保すること、他に似たものがない手工芸であること、独自の伝統的なデザインを使用していることなどが各国の伝統工芸の特徴として挙げられるでしょう。
伝統工芸の多くの活動には、それほど複雑な道具や多くの資金を必要とせず、実際、職人の趣向や才能、技術が最も基本的で重要な要素と見なされています。工房の建設が容易であること、この産業の雇用の創出、高い付加価値、使用と装飾の側面は、伝統工芸の経済的メリットの一つであり、各国の計画において注目されています。
こうした中、伝統工芸は、文化的な問題においても注目を集めています。例えば、グローバル化の問題において、国のアイデンティティーを維持しながら、他の文化や民族の間に、各国の国民の伝統工芸を広めることができます。このように、将来存続するための秘訣は、それを世界に通用するようなものにすることです。それにより、伝統工芸などすべての分野で民族の真正性の維持に深い眼差しが向けられるのです。今日、伝統工芸は人間の共通の遺産として、国際レベルで、文化や芸術、経済の分野での協力に向けて効果的な要素となりえます。一方で、明らかなことは伝統工芸の強化、普及、貿易、発展は、現代の社会の美学とニーズを伴うものであるべきで、それらの真正性の維持が現代の世代の独創性や革新の妨げになってはならないということです。
歴史の変移と生産方法や技術の変化の中で、18世紀半ばの産業革命は史上最大の出来事と見なされています。この革命により、手工芸は一斉に大きな変化に直面しました。この産業の多くが産業革命の中で消滅に向かいました。その時から現在まで、政府がどれほど手工芸を支持するかは、発展のレベルや、産業という列車によるそれらの動き、この列車の速度に大きく関わっています。例えば、インドでは1000万人以上の生活が伝統工芸に頼っており、この国の国家収入の14%以上がそれによって、まかなわれています。しかしながら、こうした状況はヨーロッパ諸国においては異なっており、伝統工芸による収入はわずかなものとなっています。
統計では、伝統工芸の世界貿易額は年間140億から145億ドルとなっており、このうち絨毯に関してはおよそ40億ドルとなっています。中国は年間50億ドルの輸出により、伝統工芸の輸出国のトップに立っています。多くの開発途上国の収入において伝統工芸が占める割合は16%から18%で、イランでは12%となっています。
伝統工芸は、町と村の二つのカテゴリーに分けられ、どちらもその質に合わせて、常設の、あるいは季節的な工房となります。それゆえ、経済利益における伝統工芸の利点については、雇用を創出し、住民に収入をもたらすということが挙げられます。伝統工芸の一分野で、自分の技術を高めたり、生計を立てている人もいます。
一方で、村の人々の間では、伝統工芸がさらなる効率性を有しており、副次的な雇用を作り出し、作物を植えて収穫するまでの間の収入を補っています。伝統工芸の専門家は、村におけるこの芸術の普及は、都市への移住を阻止し、村人たちの外部への依存を減らし、経済的独立を促しているとしています。
村や町の女性たちの仕事の価値は、先進国でも途上国でも、歴史の中で、常に軽視されがちな側面を持っていました。地元のバザールや家庭における女性たちの活動は多くが国の経済活動をはかる上で、軽視されています。しかしながら社会学者の研究で、女性たちは活動を生み出す存在で、世界の富や発展を生み出す過程で重要な役割を担っていることが証明されています。発展途上国の村の女性たちは、村の経済体制の存続において基本的な役割を担っています。
調査によれば、イランの村の女性たちが絨毯などの手工芸の分野で行っている活動は食料を生産する彼女たちの活動よりも価値が大きく、たいてい伝統工芸に従事する人々の75%から80%が女性となっています。伝統工芸における女性の存在は収入の増加や家族の福祉の向上、経済的な安定や都市への流出の阻止など肯定的な結果を伴い、文化や伝統芸術に重要な影響を及ぼしています。このようにこうした利点にもかかわらず、伝統工芸は新たな機械産業にとってのライバルとなったり、技術の正しい使用を妨げるものではなく、むしろ国々の経済的、社会的状況の改善を補完する要因と見なされています。
イランでは、豊富な資源や原料、伝統工芸の生産の長い歴史と伝統産業の多様性により、この産業は多くの人の注目を集め、雇用の下地を作るのに効果的な要素となりました。統計によれば現在1000万人以上が国内各地で継続的、あるいは散発的に各種の伝統工芸の生産に従事し、少なくとも収入の一部をこれによって確保しています。
イランの伝統工芸は全部で20種類あり、ある分類に基づくとそれらを3つのグループに分けることができます。それは芸術伝統工芸、芸術・消費伝統工芸、そして消費伝統工芸の3つです。
芸術伝統工芸は、芸術的な側面を持ち、多くの場合に、使用されない工芸のグループです。ミニアチュールや彫金がそれに当たります。
芸術・消費伝統工芸は通常、芸術的な価値を持ちながら、消費の側面も持つ工芸です。絨毯や敷物、硝子製品などがそれに当たり、日常生活でも使用されます。
消費伝統工芸は芸術的な価値は低いものの、消費の面では非常に有益な工芸のことです。陶器やセラミック、各種の織物、地元の衣装、ござなどです。
これらの伝統工芸のそれぞれがさらに数十のグループに分かれます。次回はこれについてお話することにいたしましょう。