9月 18, 2016 14:19 Asia/Tokyo
  • ロル族の文化や社会の特徴(1)

前回の番組ではクルド人の文化をご紹介しました。今回の番組ではイラン西部ロレスターンに住むロル族の文化や社会の特徴についてお話しすることにいたしましょう。

ロレスターン州はイラン西部の州で、およそ2万8千平方キロメートルの面積を有し、人口はおよそ175万人となっています。州都はホッラムアーバード、第2の都市はブルージェルドとなっています。

 

考古学的発掘によれば、現在ロレスターンと呼ばれている地域は、初期の人類が居住した場所のひとつだということです。これにより、ロレスターンの青銅は考古学的に高く評価されています。メディア人が来る前、ロレスターンの住人は、カースィー、ルルビヤーン、エラム人でした。メディア人がイランの地に入ってくると、これらの民族は現在のイラン西部、ロレスターンに移住しました。メディア人はザグロスに入ると、そこに住んでいた部族を取り込み、自分たちの言葉を広めました。ロレスターンは、アラブ人の襲撃後、ジェバールなど様々な名前で知られていました。

 

ロレスターン州の多くの地域にはザグロス山脈が聳えており、気候は多様です。ロレスターンは北部をハメダーン、マルキャズィー州に、東部をイスファハーン州に、南部をフーゼスターン州に、西部をケルマーンシャーとイーラーム州に囲まれています。さらに南東部はチャハールマハール・バフティヤーリー州に接しています。

 

ロレスターン州の人口の多くはロル族で構成されています。ロル族の言語はロル語です。とはいえロル族の居住地はロレスターンに限られません。チャハールマハール・バフティヤーリー、ファールス、イスファハーン、コフキールーイェ・ブイェルアフマド、フーゼスターン、ハメダーン、イーラームの各州にも暮らしています。

 

ロル語は、ロリー、ラキー、バフティヤーリーの三つの方言に分けられます。バフティヤーリー方言はバフティヤーリーロル族の間で使用されています。バフティヤーリー族は、チャハールマハールバフティヤーリー、イスファハーン、フーゼスターンの各州で暮らしています。

 

ラキー方言を話すロル族は、ロレスターン北西部に住んでおり、ロリー方言を話す部族は、ロレスターン州の広い地域に暮らしています。ロル語に三つの方言があることから、音楽などそれぞれの文化にも違いがあります。

 

自然の厳しさや地理的条件が、ロル族に労働の多様性をもたらす原因となっています。作業の主要な部分を女性たちが担っていることから、労働の音楽の多くも彼女らが歌っています。また中には男性と共通の作業の際に歌われる歌もあります。この種の音楽には放牧、収穫、乳絞り、絨毯織り、戦いなどの歌があります。

 

ロル族は農作業の音楽の中に、種まき、栽培、収穫の音楽を有しており、それぞれの作物のそれぞれの時期において、詩や歌、体でとる調子や動きが異なります。ときに季節ごと、あるいは二つの季節ごとに、男性が女性を置いて、集団となって農作業のために居住地を離れることもあります。このとき心に染み入るような哀歌が歌われ、この中では労働の辛さや自然の厳しさ、友と離れた悲しみが語られています。

ロル族の結婚式

 

 

ロル族の最大の儀式の一つに、チャマル、あるいはチャマリーと呼ばれる儀式があります。この儀式では、あらゆる道具を使ったロルの音楽が用いられます。この儀式ではさらに、ロル族の信条、関心、関係、芸術の多くが具現されます。チャマリーの儀式ではすべての男女が主催者と客人の二つに分かれます。

チャマリーの儀式は病気や戦いで亡くなった長や若者たちを悼む際に行われます。部族の人々は、遠方などから平たんではない道を通って、この儀式に参加します。

 

チャマリーの儀式は、部族の上層部の女性たち、様々な理由で部族にとって重要性を持ち、特別な敬意を示されている女性たちの死を悼む際にも行われます。これはロル族の文化と考え方を明らかにするもののひとつです。チャマリーの儀式は、ロル族と多くの文化的共通性を有している部族の間でも行われています。

 

チャマルという言葉はロル語で輪を意味します。客人をもてなすために用意されるテントの配置、客人や出席者の並び方、また彼らの踊りが輪のように見えることからこの名前が付きました。開催場所も平らな円形の広い土地となっています。

 

チャマリーの儀式の音楽は、チャマリヤーネと呼ばれます。ロル族の踊りは、チューピーと呼ばれます。チャマレ・チューピーは、チャマリーの儀式の特別な音楽で踊る踊りです。

 

民族衣装も、ロル族の文化を表すものです。衣装は様々な形や模様を持っています、ロレスターンの女性の衣装は、シンプルであるにもかかわらず、非常に美しく、この地域の人々の精神に大きな影響を及ぼしています。民族衣装は通常、ロルの女性を神聖なものとし、部族のメンバーや家族によい精神的影響、安定をもたらします。例えば、自身の母親の衣装に誓いを立てたとしたら、それは約束を守るということを意味します。

 

ここからは、ロルの女性の衣装を研究しているダーラーアフシャール・グーチャーニー教授の話を聞いてまいりましょう。

「衣装は民族や国民性を表す最も明らかなものとみなされています。というのも、他の文化に対して、言葉を発する前に見て判断することのできるものだからです。民族衣装、特にロルの女性の衣装は、世代から世代へと引き継がれ、特別な調和によってその民族の文化を具現しています」