11月 13, 2016 15:47 Asia/Tokyo
  • ギーラーン州に住む民族の文化(1)

今回の番組では、イラン北部ギーラーン州に住む民族についてお話しすることにいたしましょう。

ギーラーン州は、カスピ海南岸に面するイラン北部の3つの州のひとつです。一部の学者は、ギーラーンという言葉をギール族が住む場所を意味するギールからとったとしています。この州の人口はおよそ250万人です。人口の点からギーラーン州はイランで10番目の州となっています。面積では28番目の大きさです。

ギーラーン州の総面積は1万4千平方キロです。この州は北をカスピ海とアゼルバイジャン、西をアルダビール州、南をアルボルズ山脈、ザンジャーン・ガズヴィーンの両州、東をマーザーンダラーン州に囲まれています。

ギーラーン州の州都はラシュトです。この町にはギーラーン州の人口の半数未満が住んでおり、ギーラーン州、そして北部の都市の中で最も人口が多く、イランで12番目に人口が多い都市となっています。

ギーラーン州の人口の多い都市の中で、バンダルアンザリー、ラーヒージャーン、ターレシュ、ランゲルード、ルードサル、バンダルアスタラ、フマンを挙げることができます。バンダルアンザリーはカスピ海沿岸のイラン最大の港です。

ギーラーン州は自然、文化、社会、観光の点から、イランの最も魅力的な州のひとつです。年間数百万人が国内外からギーラーン州を訪れます。

雨量の多い密集した森、広大な稲田、茶やオリーブの畑、湿原、カスピ海の美しい海岸、川岸、これらはギーラーン州の神秘に満ちた自然の一部です。ギーラーン州ではさらに、鳥類や珍しい植物などを見ることができます。

ギーラーン州はイランのほかのどの地域よりも、民族や方言が多様です。ギーラーンの多くの人はペルシャ語の派生語であるギーラキーという方言を話しています。ギーラキーにもいくつかの派生語があり、少しずつ違います。また、この方言は東と西では大きく異なっています。

ギーラク族は、ギーラーン平原に散らばって住んでいます。彼らはギーラーンの最初の住人であり、農業に従事していました。ギーラク人の一派であるガーレシュ人も、山岳や山ろくに暮らしており、畜産業で生計を立てています。この人々の文化は昔から続く非常に珍しい文化となっています。古代の慣習の多くは暦や音楽と共に、今もガーレシュ人の間で広く行われています。

ギーラーンの一部では、ターレシー、ターティー、アーザリーの各方言が使用されています。ターレシュ、アスタラ、ラシュト、レズヴァーンシャフル、バンダルアンザリーの町には、トルコ系のアーザリー族が住んでいます。ルードバールにはタート人やクルド人が住んでおり、それぞれの言語を話しています。ラシュトやバンダルアンザリーの町には、少数派のアルメニア人も暮らしています。

タート人はギーラーンの南部、特にルードバールに住む民族です。この民族もまた、特別な言語と文化、慣習を有しており、その一部は古い時代から維持されているものです。

ギーラーンの人々の文化・慣習は、民族の数や方言の多様性に注目すると、非常に豊かなものですが、残念ながらその一部は廃れてしまっています。

ギーラーン州西部で行われている儀式にアーイェネ・タキャムと呼ばれる人形劇があります。この劇を行う人はアーザルバイジャーンからアンザリーやラシュトまでやってきて、新年のメッセージを伝えます。

タキャムは山羊の人形のことで、羽や色のついたビーズや布で飾られ、木の棒にくくりつけられており、それを上下に動かしながら、人形を動かします。この人形劇では、さらに二本の木の棒をたたき、明るいメロディーを奏でながら、歌が歌われます。

昔から行われている伝統的な格闘技もあり、これはギーラーンの人々の威厳や勇敢さを想起させるものとなっています。この格闘技には歴史的な根源があり、夏や結婚式などの祝祭に行われます。

選手は競技用のズボンをはき、上半身は裸です。この格闘技では、どちらかが地面に手を着くと負けです。競技の報償は布や鏡、衣服、ヒツジ、牛など現金以外のものとなっています。

ギーラーンのこの他の儀式には、人間の誕生から死までの人生の様々な段階に関わる多面的な儀式があります。

花婿の家に花嫁を連れて行くこと、この儀式は、結婚式のピークに行われる最も盛り上がる儀式です。この際には楽器の音が鳴り響き、祝いの歌が歌われます。ギーラーンの各地でこの儀式はそれぞれ独自の方法で行われ、ギーラーンの東部では花嫁の父の家から持ってきた苗木を、花婿の家に植えるという慣習があります。

ギーラーン州西部と東部の村の一部では、花嫁の母が花婿の母から受け取った雄鶏の足を、色のついた絹の糸で縛り、その鶏を花嫁と共に花婿の家に連れて行き、そこで糸を解いて放つという慣習があります。

またギーラーン州の多くの地域では、恩恵があるようにと、花嫁の腰にナンや小麦粉をくくりつけ、花婿の家に向かうという慣習もあります。