7月 30, 2017 20:31 Asia/Tokyo

イエメンはアラブ諸国の最貧国で、人口はおよそ2550万人です。

このうち、1800万人以上が、人道支援が必要な状態にあり、またおよそ700万人は飢餓の危険にさらされています。これに加えて、サウジアラビアのイエメンへの攻撃で、民間人が死亡し、インフラが破壊されており、コレラなど、様々な医療、衛生面での問題に直面しています。コレラは急速にイエメンで流行しており、これにより、特に多くの女性や子供が命を落としています。

 

イエメンのコレラ流行

国連のオブライエン人道問題担当事務次長は、国連安保理に宛てた報告の中で、次のように語りました。

「我々からすれば、イエメンの危機で苦しんでいるのは一般の人々であり、さらに悪いことに、紛争がイエメンの飢餓を急速に拡大している。もしイエメンで戦争がなければ、飢餓や伝染病などは発生していなかった」

WHO世界保健機関はイエメンの人々がコレラの流行により死亡しているとして、今年4月から現在まで、コレラによる死者の数は1800人に達しているとしました。アルジャジーラテレビは、これについて、次のように語っています。

「WHOの報告によれば、イエメンにおけるコレラの犠牲者の数は、今年4月27日からこれまで、1802人に達している。また、35万6591人が、コレラに感染した疑いがある。この報告では、コレラが流行しているイエメンの5つの州とは、サヌア、フダイダ、ハッジャ、アムラン、イッブであり、こういった州のコレラの感染者の割合は、全体の53.9%にあたるとされている。」

イエメンのコレラに関するWHOの報告

イエメンのコレラ流行

 

イエメンのハッジャ州は、コレラの感染率が最も高い州であり、この州では、346人がコレラにより死亡しています。ついで、イッブ州が231人、フダイダ州が210人、タイズ州が159人、アムラン州が149人となっています。また、WHOの報告によれば、イエメンの22の州のうち、コレラの感染が確認されていないのは、東部の島のソコトラ州だけです。

イエメンのコレラ流行を抑制しようという、人道支援機関の努力にもかかわらず、イエメンのコレラ流行は続いています。コレラは、主に、サウジアラビアや、ハーディ元大統領の政権の傭兵が、イエメンのシーア派組織フーシ派と衝突している場所で流行しています。ドイツの新聞ターゲスシュピーゲルは、コレラがここまで急速に流行している国は、イエメン以外に存在しないとしています。コレラの感染者は36万人に増え、これから先も増える可能性があります。コレラが流行している国は、イエメン、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、ケニアで、先月にも拡大しています。WHOのリンメア報道官は、これに関して、次のように語っています。

「こういった国々は、コレラが流行しやすい状況におかれている。内戦や情勢不安により、多くの人々が難民化し、感染症の原因となるものが、その流行の下地を作り出している。」

イエメンのコレラ流行はサウジアラビアの攻撃による結果

赤十字国際委員会のマウラー総裁は、イエメンにおけるかつてないほどのコレラの流行を受けて、5日間の日程でイエメンを訪れ、アデン、タイズ、サヌアを視察しました。マウラー総裁はイエメンにおけるコレラの急速な拡大に警告を発し、今年末までに、60万人がコレラに感染するだろうとしました。

「コレラの流行抑制に大いに影響する、ごみ収集や飲料水の浄化、浄水施設の修復に関する予防的な措置は大変重要であり、ほかの機関と共に、コレラの流行を防ぐ医学的な措置を行っていく。」

人道支援団体オックスファムも、イエメンのコレラの流行状況に関する報告を発表しました。この報告では、イエメンのコレラ感染者は、おそらく60万人に増加することになるとしています。WHOも、およそ37万人がコレラに感染した疑いがあり、また、今年4月から現在まで1828人がコレラで死亡したとしています。この数は、2011年にハイチで報告されたコレラの死者数を上回っています。2011年のハイチのコレラ感染者数は、34万311人でした。

国連人道問題調整事務所の報告によりますと、イエメンで人道支援を必要としている人の数は2000万人を超えています。この報告によれば、イエメン人2070万人が人道支援を必要とし、また、この人数の増加は、イエメンのコレラの流行と食料不足に直接関係しています。

コレラ菌は、水や食べ物などにより経口感染する病原菌です。残念ながら、サウジアラビアのイエメン攻撃は、この国のインフラを全面的に消滅し、汚染を広げ、かつてないほどの伝染病蔓延の要因となっています。イエメンの人々はまともな水や食料もなく、また、病院や医療施設の攻撃により、医療活動は困難になっています。

水や食料の汚染、好ましくない衛生状況

人権規約によれば、安全な水と浄水システムの利用は、基本的人権のひとつであるとされ、戦争でこういった施設が攻撃を受けるべきではありません。2010年8月、国連総会で採択された決議64/292によれば、安全な水と浄水システムの利用は、生存権に必須のものであり、基本的人権のひとつだとされています。

安全な水の確保における問題

また、国連の経済的、社会的及び文化的権利委員会の条項・権利の解釈に関する意見でも、もし、利用可能な安全な水が十分に手に入らなければ、食料に関する権利も満たされることはないとされています。

WHOのアダノム事務局長は、イエメンを視察した後、フェイスブックやツイッターで、イエメンにおけるコレラの流行は世界における最大の危機だとしました。一方で、世界の人々は、この世界的な危機の根源に注目すべきなのです。赤十字国際委員会のマウラー総裁は、次のように語っています。

「明らかに、イエメンのコレラは、戦争によって流行した。赤十字国際委員会は、以前からイエメンのインフラの破壊は、この国における人道的な法規や原則の秩序を乱す行為であると警告を発しており、コレラの流行もこの破壊による直接的な結果である。」

サウジアラビアの攻撃による破壊、虐殺、伝染病の流行

サウジアラビア政府は、権力欲により、西側の支援を得て、イエメンの人々の命を危機に陥れており、日ごとにイエメンの罪のない人々の市民生活をより困難なものにしています。イエメン市民は破壊や難民化、飢餓に直面しているだけでなく、現在、コレラの流行による危機に直面してます。

サウジアラビアはイエメンを封鎖しており、サヌアの空港を破壊し、イエメンの人々への医薬品や人道支援の移送を妨害しています。イエメンの医療システムも激しく損なわれており、コレラの大規模な流行に対処することはできません。イエメンの罪のない人々が大いに苦しんでいるのにもかかわらず、世界で人権を主張するアメリカのトランプ大統領は、初の外遊としてサウジアラビアを訪問し、アメリカの最新鋭の武器でイエメンの人々の虐殺を続けさせるため、サウジアラビアの政府と最大の武器協定を締結しました。しかし、アメリカだけでなく、イギリス、フランス、ドイツなど、ほかの西側諸国も、サウジアラビアに武器を売却しているのです。

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