8月 06, 2017 21:21 Asia/Tokyo
  • トランプ大統領
    トランプ大統領

アメリカのトランプ政権が始まってから、7ヶ月も経っていませんが、ホワイトハウスは混乱に陥っています。この期間、多くのホワイトハウスの政府高官が辞任したり、罷免されたりしています。

トランプ大統領の就任後わずか数週間で、

フリン国家安全保障担当大統領補佐官

 

が辞任しましたが、実際には、解任されました。また、コミーFBI長官も、前例にない形で、解任されました。さらに、ホワイトハウスのスカラムッチ広報部長の起用により、スパイサー・ホワイトハウス報道官が辞任しました。彼は金融関連の経験しかない人物の下で働くことを望んでいませんでした。スカラムッチ氏は、プリーバス大統領首席補佐官を罵倒しました。

コミーFBI長官

 

こうした中、ホワイトハウスの混乱はこれにとどまりません。多くの政府関係者の辞職・解任とともに、スカラムッチ氏は一部の同僚を口汚くののしり、解任されました。プリーバス氏の後、大統領首席補佐官には、ジョン・ケリー国土安全保障省長官が就任することになりました。こうした中、セッションズ司法長官も解任されようとしています。

、スパイサー・ホワイトハウス報道官

 

ホワイトハウスがかつてないほどの混乱に見舞われた原因とは何でしょうか。この問いに答える前に、アメリカの政府のいたるところに、内部の対立が存在することに触れておくべきでしょう。過去においても、この対立は解任や辞職につながってきました。こうした中、過去の政権において、これほど解任・辞任と指名が次から次へと行われたことはないといえます。

john kelly

 

このようなホワイトハウスの混乱の理由を理解するためには、4つの問題を提示しなければなりません。この4つの問題とは、トランプ大統領個人が、個人的に部下の争いを楽しんでいること、親族がかつてない形で外交政策に関与していること、政治の舞台においてベテラン政治家と新人政治家が争っていること、大統領チームと情報機関や主要メディアとの対立が隠されていることとされています。

トランプ大統領を精神医学の観点から見れば、彼が集団の長となり、他人を服従させることに愛着を持っており、部下を争わせることで、自分に従わせ、最終的に勝利した人物に目をかけていることが伺えます。トランプ大統領が無能と考えた人物を解任するのは、今期大統領の個人的な性質とみなされています。

トランプ大統領は、高視聴率となったテレビ番組「アプレンティス」でホストを務め、就職希望の参加者を競わせ、敗者を脱落させ、勝ち残った人物を起用しています。

現在も、トランプ氏は、大統領に就任しても、この番組におけるモデルを、特にホワイトハウスにおいて適用していると考えられます。このため、ホワイトハウスをボスであるトランプ大統領にその誠実さや能力を示すような競争の場に変えたのです。こういった人物は最終的に勝者となり、ライバルは解任されるよう、互いに争い、つぶしあっているのです。

Image Caption

 

スカラムッチ氏がホワイトハウス入りし、スパイサー報道官が辞任するとともに、プリーバス大統領首席補佐官が更迭されたのは、テレビ番組「アプレンティス」を参考にしているのです。一方で、アプレンティスの参加者は、娯楽番組のために参加しているのであって、最終的に数十万ドルを得るのみです。しかし、最近、ホワイトハウスで行われていることは、アメリカの政権運営における昔からのシステムや秩序、規律を破壊しているのです。

トランプ大統領個人が部下たちに対し、地位の維持をめぐる争いを奨励している中で、大統領の家族の存在も、ホワイトハウスにおいて混乱が生じるのに大きな影響を及ぼしています。トランプ大統領は、ここ最近の歴代大統領とは違い、大家族を抱えており、そのほとんどは成人し、彼らは明確な形で、かつてないほどに、政府の業務に干渉しています。その筆頭に上げられるのが、長女のイヴァンカ・トランプ氏と、娘婿のクシュナー氏です。この2人はトランプ大統領の上級顧問として、ホワイトハウスのウエストウィングをを自身のオフィスとし、トランプ大統領により政務を与えられています。一方で、トランプ大統領を含め、誰も政治や国の運営に関する経験を持っていません。

トランプ大統領が心から家族に頼っていることで、状況は複雑化し、クシュナー氏とニュージャージー州のクリスティ知事の個人的な確執により、クリスティ知事はトランプ政権に参入しませんでした。また、クシュナー氏と主席戦略官のバノン氏の確執から、バノン氏は国家安全保障理事会のメンバーからはずされました。こうした中、ドナルド・トランプ・ジュニア氏とクシュナー氏が、アメリカ大統領選へのロシアの関与にかかわっていたという疑惑は、ホワイトハウス内の混乱をより大きなものにしています。

前代未聞のアメリカ政府の混乱は、アメリカのベテラン政治家とトランプ大統領を筆頭とする新規参入者の間の激しい対立という問題をも示しています。トランプ氏は、大統領選の中で、アメリカの腐った政治組織と戦うと公約しました。

トランプ大統領は、ディープステートという影の国家組織と対立する中で、一連の行動に出ました。それは、ティラーソン氏など、この集団に属していない、政治や外交のキャリアのない人物に国務長官などの重要なポストを任命したことです。あるいはトランプ大統領が絶え間なく共和党幹部や主要メディアの関係者を攻撃していることも指摘できます。

トランプ大統領は医療保険制度「オバマケア」の審議に関して、一部の上院議員を「愚か者」としました。彼はまた、中国が豊かになるのを防ぐことができなかったとして、歴代のアメリカ大統領を愚かだとしています。こうした中、トランプ大統領は就任後間もなくしてアメリカの一部メディアを「フェイクニュース」と呼び、主要メディアとの対立を激化させました。これは、こうした主要メディアがこの国の政治組織を反映するものと見られている中でのことです。

最後に4つ目の問題についてお話しましょう。これは、トランプ大統領と情報機関が争っていることによるというものです。昨年の選挙運動の中でも、情報機関のメンバーは皆、トランプ氏は大統領、そしてアメリカ全軍の司令官になる資質はないと考えており、トランプ氏に損害を与える上で、いかなることも惜しみませんでした。こうした中、様々な理由により、トランプ氏は大統領に就任し、ここでこの争いが始まりました。

アメリカの情報・治安機関は、これまでには見られない行動により、ロシアと共謀したとして、トランプ大統領の選挙本部のメンバーや近い親族を非難しました。この嫌疑の最初の犠牲者は、国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・フリン氏でした。次にクシュナー氏で、現在はドナルド・トランプ・ジュニア氏により深刻な嫌疑がかけられ、トランプ大統領は弾劾の危機に直面しています。

この半年間、何度もメディアにFBIやCIAなどの情報機関や治安機関しかアクセスができない情報が流されました。また、この期間、一部の政府関係者はトランプ大統領とロシアの関係についての問題で、辞任した、あるいは解任されたり、この問題の影響を受けました。

これまでお話してきたホワイトハウス内の4つの問題とは別に、現在、アメリカ大統領に近いグループの内部的な秩序を確立するため、元アメリカ軍高官のジョン・ケリー氏が大統領首席補佐官に就任しました。こうした中で、トランプ大統領の一貫しない性質も、ツイッター上の機密事項に関する彼のツイートとともに、その目的を果たすのを困難なものにしています。言い換えれば、ケリー大統領補佐官がホワイトハウス内の秩序を確立し、トランプ一族の政府業務に対する干渉が終わり、ホワイトハウスの機密情報の漏洩が防がれ、トランプ大統領と政治組織や情報機関との争いが終わっても、トランプ大統領に現行のアメリカの政治システムや政治構造を配慮させることはできず、政府内の混乱は続くことになるでしょう。

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