朝鮮半島危機の根本的な原因
朝鮮半島危機の歴史的な根源についてみると、アメリカの痕跡と、この国の約束違反が完全に浮き彫りになります。アメリカは、1950年から53年にわたって3年間行われ、38度線で南北朝鮮が分割することになった朝鮮戦争に関与しました。

北朝鮮が中国やソ連とともに共産主義陣営に入ったことで、世界が東西に二極化する中で、北朝鮮はアメリカに対抗する側に回ったのです。
このため、朝鮮半島危機の根源は、共産主義と資本主義の2極間による、冷戦時代の対立に端を発していました。この対立の中で、北朝鮮は軍事、核において、ソ連と中国に強化されました。アメリカも、共産主義の拡大を防ぐため、韓国、日本の復興と安全保障を担いました。
こうした中、北朝鮮のアメリカの脅威に対する抑止力としての核兵器とミサイルに関する発展については、ソ連の崩壊にさかのぼります。中国とロシアが、アメリカに対して、緊張を作り出す破壊的な競争の変わりに協力を行ったとき、ロシアの北朝鮮に対する支援は減少しました。CNNのジャーナリスト、トム・フォアマン氏は次のように語っています。
「さまざまな見積もりから、北朝鮮は10から20の核弾頭を保有している。いまだに、北朝鮮が中距離弾道ミサイルに核弾頭を搭載できるようになったかについては、明らかになっていない。もし、これに成功していても、信頼できる情報筋は、このことを確認していない」

中国とロシアは、経済計画により、資本主義的な傾向を見せるようになりましたが、現在、北朝鮮のみが、冷戦時代に取り残された唯一の国となっており、共産主義を掲げています。
朝鮮半島危機の根本的な要因についてお話しする中で、いくつかの注目すべき事柄が存在します。
第1に、中国が台湾問題の解決において希望を失い、台湾がアメリカ軍の地域における基地に変わったことから、中国はアメリカの軍事的な競合国となり、地域におけるアメリカの利益を脅かすため、北朝鮮を強化する方向性で行動しました。、
第2に、アメリカがNATO・北大西洋条約機構を維持し、それをロシアや中国付近にまで地理的に拡大したことにより、中国とロシアは、アメリカに対する代理戦争の要因として北朝鮮を利用しようとしました。つまり、北朝鮮は韓国や日本、グアムにあるアメリカ軍の基地を攻撃目標とするのには最適な場所だったのです。
第3に、アメリカの、表面的には北朝鮮に、実質的には中国に対する、東アジア地域における軍事的な挑発政策により、北朝鮮の指導者は、アメリカの侵略政策に対する抑止力を強化することになりました。ソ連崩壊後、ロシアは一方的に北朝鮮と1961年に締結した協定を破棄しました。ロシアの軍事研究所の所長は、次のように語っています。
「北朝鮮は、あらゆるアメリカの攻撃に厳しく抵抗するための用意を示している。そうなれば、北朝鮮軍は韓国領内に流入することができる。」
アメリカのジョージ・ブッシュ元大統領は、北朝鮮を悪の枢軸と呼び、アメリカは中国、ロシアに対抗するため、北朝鮮を東アジアにおける安全保障政策上の対象国とするとしました。
確かに北朝鮮は、アメリカとの協力を望んでいないわけではありませんでした。中国のイニシアチブにより、日本、ロシア、韓国、アメリカ、中国、北朝鮮が参加していた北朝鮮の核問題を解決する6カ国協議が開催され、この問題に関与する国が、対話と協力によって危機を解決する希望が高まっていました。
しかし、アメリカは、北朝鮮の核問題を解決するつもりはなく、6カ国協議を失敗させることで、政治的な解決法による成功を妨げました。アメリカが合意を守らなかったことにより、北朝鮮は、ミサイルと核の分野で、抑止力を強化する決意をよりいっそう固めたのです。

6カ国協議の合意は、北朝鮮が軍事的な核計画を停止し、代わりに燃料と食料を受け取るということで締結されました。実際、朝鮮半島の核による危機を政治的に解決する上で、北朝鮮はこの合意をもっとも真剣な形で受け止めていましたが、アメリカが約束を反故にし、原子炉冷却塔の破壊により、北朝鮮は失望し、核計画を再開しました。
北朝鮮は2003年に、NPT核兵器不拡散条約を脱退し、これまで、6回の核実験を行いました。これにより、アメリカの攻撃に対する抑止力の強化に向けて、軍事力とミサイル能力の強化を選んでいるということを示しました。これは、北朝鮮の目的が、アメリカの北朝鮮攻撃に向けたあらゆる試みを制限するにより、体制を維持することにある、ということを示しています。ロシアの安全保障関連の専門家は、次のように語っています。
「アメリカは、極東アジアに大量の軍備を配備し、多くの兵士を派遣しており、いつでも北朝鮮に大きな打撃を与えられるようにしている。アメリカの軍事力の柱は、アメリカ海軍の第7艦隊と、日本や韓国に駐留する空軍と陸軍であり、その数は、海兵隊や海軍を合わせると、7万人以上の兵力となる」
アメリカと北朝鮮の不均衡な軍事力にある種のバランスを確立することは、北朝鮮が体制維持において最も重視する戦略です。地域の安全保障に問題を生み出そうとするアメリカの政策とは、地域を北朝鮮に反対するよう仕向け、韓国と日本への軍事的支援を拡大し、特に韓国が参加するさまざまな軍事演習を実施することに当たります。アメリカのパネッタ元国防長官は、NBCニュースのインタビューで、次のように語っています。
「北朝鮮の核問題に対するアメリカのアプローチは、最終的に数百万人の命が奪われる核戦争に行き着く可能性がある。」