3月 15, 2016 19:23 Asia/Tokyo

イラン音楽は即興を基本として行われる音楽だと、以前にお話しました。

そしてこの即興は、ラディーフと呼ばれるメロディの集合体を覚え、その上で行われるという点についても触れました。しかし、このほかにも、イラン音楽の演奏は、一定の規則が存在します。

 

そのひとつは、イラン音楽で演奏される「グーシェ」と呼ばれるフレーズには順番が存在することです。つまり、特定の順番を守らず、不自然な形でフレーズの順番をアレンジする行動は、批判の対象になることがあります。また、基本的にダストガーを変え、転調することは出来ても、それが唐突な形であってはならないとされています。これについては、また後ほど説明しますが、いずれにせよ、多くの場合、特定のフレーズの順序を守って行われます。

具体的には、イラン音楽の旋法体系の中には、ダルアーマド、ケレシュメ、チャハールメズラーブ、レングといった名前のフレーズが存在し、それは一定の順序で演奏されます。原則的に、ダルアーマドという最初のフレーズから初め、最後はレングというリズムつきの曲や、タスニーフという歌で終わる形式をとります。

古典音楽の演奏を始める際、たいていの場合序の部分に当たる、「ダルアーマド」というフレーズを演奏することになるわけですが、ダルアーマドという曲は、イラン音楽の体系においては、非常に重要なフレーズです。

また、ダルアーマドの演奏を始める前に、ピーシュダルアーマドという定型リズムをもつ曲が演奏されることもあります。この場合、ピーシュダルアーマドは、ダルアーマドと同じく、ちょうどこれから演奏する演目を目録のように提示する形となっています。

また、ダルアーマドからレングにいたる中で、1オクターブ中の全ての音階が同じ様子で演奏されることはなく、展開によって使用される音階が変わります。特にマーフールという旋法体系では、メジャー調の音階を基本としながら、展開によって劇的に変わります。このような転調により、聞く人を飽きさせないシステムになっています。