石油化学産業
この時間は、イランの石油化学産業とその特徴についてお話ししましょう。
石油化学産業は、化学工業の一部で、石油や天然ガスから化学製品が生産されます。
石油や石油製品が人間の生活において現在のような形をとるようになるまで、化学物質は植物や動物由来の原料から作られていました。20世紀の初め、石油と天然ガスが、多くの製品を作るための原料として使用されるようになりました。
科学技術の進歩により、石油や天然ガスから多くの製品が作られるようになりました。現在、石油化学産業には多くの製品が存在します。石油化学産業は、化学工業、電力、電子産業、繊維産業、医療、自動車製造業、家電製品や食料品など、多くの分野で活用されています。
石油化学産業の最も重要な特徴は、非常に高い価値を有していることです。経済的な価値の点から、国際市場における石油化学製品の価値は、原油や天然ガスよりも高くなっています。特に、この産業において、原料から製品までを担う国々には投資や支援が行われています。
石油化学産業の特徴のひとつは、その製品の多様性にあり、原料が別の製品に変えられています。石油化学産業の製品の生産とは、通常、原料を生産する工場から、それを製品に変える工場へと送られる様な形で行われます。言い換えれば、石油化学産業は、別の産業部門の母体であり、開発途上国の経済の原動力として、根本的な役割を担うことができます。
この他の経済的な特徴に、雇用の創出と失業率の低下を挙げることができます。石油化学産業の生産サイクルでは、消費市場に近づくにつれ、多くの雇用機会が生まれ、そのコストも少なくなります。
イランの石油化学産業は、50年以上の歴史を有しています。1963年、イラン国営石油産業会社が活動を開始しました。この会社の最初の活動として、イラン南部のシーラーズに化学肥料生産工場が建設されました。
1979年以前のイランの国営石油化学会社の活動は、シーラーズ石油化学開発プロジェクトの実施、ファーラービー、ハールク、アバダーン、ラーズィーといった石油化学コンビナートの建設でした。
イスラム革命の勝利により、シーラーズの石油化学開発プロジェクトなど、中断していたプロジェクトが完成されたにも拘わらず、イランイラク戦争により、イランの石油化学コンビナートの生産活動は最小規模に縮小しました。
イランイラク戦争が終わり、バンダルイマーム・コンビナートなどの石油化学施設の改修と完成のための活動が開始されました。これらの施設の稼働により、10年の間に、イランの石油化学産業は、質と量の点で国際規準に達しました。
この時期の特徴としては、生産量の増加、製品の経済的価値の向上、非石油製品の輸出と国内の経済における石油化学産業の地位の向上が挙げられます。この産業は、イスラム革命前に比べ、地域や世界の市場により積極的に参入するようになりました。
ドイツのアルヴォスグループのクレッカー貿易開発局長は、昨年開催された、イラン石油化学産業国際会議の傍らで、イランの石油化学産業について次のように語りました。
「イランは数十年に渡り、石油化学市場において重要な役割を果たしてきた。この成功はこれまで維持されている。今後もイランは、さらに優れた段階に到達すると考えている。石油製品、石油化学製品など、さまざまな分野における先端技術の利用により、イランの製品は国際的な競争力を有している」
イランの輸出統計において、石油化学製品は、イランの非石油製品の輸出品目の中で最も多く、40%を占めています。
イランの石油化学製品は、世界数十か国に輸出されています。イランの石油化学製品の輸出のうち、13%がインド亜大陸、23%が東南アジア、22%が中国、18%が極東、5%がヨーロッパ諸国、19%が中東諸国となっています。
近年の制裁期間にも、イランの石油化学産業は、その多様性により、様々な部門で活動を継続していました。イランの石油の売却に対する制裁や石油輸出量の減少にも拘わらず、制裁の圧力が、石油化学製品の輸出を止めることはありませんでした。この期間、石油化学製品は、イランの外貨収入源のひとつでした。
イランの石油化学産業は、優れた特徴を持っており、国内外の投資家の注目を集めています。最も重要な利点は、豊かな石油・天然ガス資源の存在です。
イランは、石油埋蔵量の点で世界4位、天然ガス埋蔵量の点で世界2位となっています。石油化学作業は、資源、特に天然ガスに大きく頼っています。世界の多くの地域における資源の不足により、イランは豊かな天然ガス資源の存在、石油化学産業における歴史、適したインフラの存在により、多くの外国投資を誘致しています。
イラン南部のバンダルアッバースの周辺、ペルシャ湾の北岸に、面積およそ700ヘクタールのバンダルアッバース製油所が建設されました。この製油所は、イランや中東で唯一かつ最も近代的な重油の精製所となっています。
地域諸国は、石油化学産業の設計から生産に至るまでの様々な部門で、人材を確保するために、海外から雇う必要に迫られています。しかし、イランの石油化学産業の利点のひとつは、国内に優秀な人材が存在していることです。これは、イランの石油化学産業の強みのひとつであり、外国の投資家の目にも明らかです。
スウェーデンに本拠を置くアトラス・コプコの幹部の一人、シュナーブル氏は、昨年、イラン石油化学産業国際会議で、この点を指摘し、次のように語りました。
「豊かな天然ガス資源の存在は、イランの石油化学産業の唯一の利点ではない。優秀な人材も、この国の重要な利点のひとつである。中東におけるイランの成功はよい知らせであり、我々が今回の会議に出席した最大の理由である」
イランの地理的な状況、アジアやヨーロッパの市場や国際水域へのアクセスの可能性も、イランの石油化学産業の利点です。イランは、中東で唯一、設備の多くを国内で製造しています。一部のハイテク設備を除き、多くの設備をイラン国内で製造することができます。若い専門家やナレッジベース企業の存在により、イランの石油化学産業の展望は明るいものとなっています。
グローバル・データ・エネルギーの最新の分析によれば、イランは今後、世界で最もメタノールの生産を伸ばすと見られています。メタノールは、世界で3番目に消費量の多い化学物質で、製薬や農薬、クリーンエネルギーなどの石油化学の下流部門において、広く応用されています。
現在、イランでは、年間平均500万トン以上のメタノールが生産され、東アジア、西ヨーロッパなど、世界の市場に輸出されています。グローバル・データ・エネルギーの報告では、2022年までに、イランのメタノールの生産量は3000万トンに達すると見られています。それでは最後に、フランスのエア・リキードの化学産業製品市場部門の責任者であるマティス・シュタイン氏の言葉をご紹介しましょう。
「現状において、イランは国際分野における石油化学製品の最大の輸出国のひとつである」