2月 26, 2018 18:32 Asia/Tokyo

最近、デジタル通貨として最も人気の高いビットコインの価値が下落しています。

2009年からこれまで、ビットコインは、価格の変動を経てきました。2010年にはほんのわずかな価値しかありませんでしたが、2017年終わりにはおよそ2万ドルに達しました。しかし、2018年の年始には、ビットコインの価格の下落が始まりました。

2週間前には、ビットコインの価格は、3割以上下落しました。

ビットコイン・ネットワークの価値は、およそ180兆ドルといわれています。前回の番組では、ビットコインの賛同者の見解についてお話しました。今夜の番組はビットコインに反対する人々の見解についてお話しますが、その前にビットコインの利点についてお話することにしましょう。

ビットコインは、マイニングという採掘作業によって作られ、コンピューターは数学における非常に複雑な問題を解決し、その対策を取る中で、ビットコインを得ることが必要になります。このデジタル通貨は、複雑なプロトコルとコンピュータ・ネットワークに依拠しており、このネットワーク上の通貨のやり取りは、速やかかつ大量に、そして安全に移動が行われます。

通貨のやり取りが行われる相手の身元が秘匿されることは、ビットコインの優れた点とされています。

 

ビットコイン

 

ビットコインに賛同する人々に対して、反対者は、ビットコインに関する明るい未来を思い描いていません。ビットコインに反対する理由のひとつに、ビットコインの価格の驚くべき上昇が挙げられます。2008年にノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏は、次のように語っています。

「われわれが金融システムに関して期待しているものとは、ある人物がそれを溜め込むことで富豪になるようなものではない。我々が金融システムに対して期待していることとは、取引が容易になり、経済全体を豊かにすることだが、このビットコインには、そういった特徴はない」

紙幣の世界では、政府は需要と供給をコントロールすることで、市場を管理し、大きな通貨の価格の動きを防ぐよう努力します。こうした中で、ビットコイン市場においては、需要と供給のバランスを取る力となるものは存在せず、このため、市場におけるビットコインの価格変動は、ほかの通貨と比べて、より大きなものとなっています。

2001年のノーベル経済学賞の受賞者、ジョセフ・スティグリッツ氏など、多くの経済学者は、ビットコインは仮想通貨バブルであるとして、この市場の進出に警戒を促すと共に、このバブルに投入した多くの資産は、失われることになると予想しています。

そのほか、世界情勢にあわせて、ビットコインの価格が大幅に変動することが挙げられます。

調査によれば、アメリカと北朝鮮の攻撃的な発言などで、地政学的な緊張や、衝突の可能性に関する国際社会の懸念が高まったとき、世界市場におけるビットコインの価格は、ほかの通貨よりも高騰するということが明らかになっています。

取引をする人物の身元の秘匿性も、この仮想通貨に反対する理由のひとつです。反対派は、ほとんどのデジタル通貨は、違法な活動を行う中で使われ、ビットコインもまたそうであると考えています。

イランの経済学者、ダードペイ氏は、次のように語ってます。

「ビットコインは、ほかの通貨とは違い、ハッカーや資金洗浄を行う人物など、違法行為を行うものに都合がよく、その持ち主の身元が不明な通貨は、匿名で送金を行う人物にとって、魅力的だ」

ビットコインはハッカーや資金洗浄を行う人物などにとって魅力的だ

 

ビットコインは、10年未満で、大幅な価格変動を経験してきました。2018年におけるビットコインの大幅な下落には、さまざまな理由が存在します。IMF国際通貨基金などの金融機関の立場に加えて、ビットコインの価値が下落した理由のひとつは、サイバー攻撃です。

日本のビットコインの取引所に対するサイバー攻撃が行われ、5億ドル相当の日本の大手企業のデータが盗まれたというニュースが発表されましたが、これは、仮想通貨の歴史における最大のサイバー攻撃だとされています。

このような攻撃は、近年、韓国や日本で繰り返し行われていますが、最近の攻撃の規模や、それがメディアで大々的に取り上げられたことは、ビットコインの購入者に情報セキュリティの必要性を感じさせました。ビットコインの使用者は資産の盗難に恐れを感じ、彼らはビットコインを売る傾向に走り、そのネットワークから離れるようになりました。このことは、ビットコインの価格下落に影響を与えました。

ビットコインの発明者とされるサトシ・ナカモトなる人物は、ビットコインのアルゴリズムを取引の双方の身元が不明なことに基づいて記しましたが、彼の主目的とは、世界各国の金融システムから、銀行などの中間に存在する金融機関を排除することにありました。ビットコインの利用において、利用者の身元を秘匿する原則があるため、この原則が損なわれることは、ビットコインの価格下落につながりました。

 

ビットコイン

 

一部の人は、現在のビットコインの強い歓迎は、ある種、強いドルへの反発だと考えています。言い換えれば、この種の反応は、世界の不都合な金融制度に対する情報技術の発展によって起こったものなのです。こういった反対派の見解では、ビットコインという現象は、1998年の株価暴落を受けて、新たな市場を創出した人々が思い描いたものなのです。

1998年に始まった経済危機では、株価暴落に影響を及ぼした人物や組織が明らかにされました。ビットコインの企画者の身元が不明なのは、ある意味でこれが利用者の自己責任によるものだからです。つまり、一見、政府や中央銀行、独立法人は、ビットコインに責任を負わず、また、サトシ・ナカモトなる人物の身元も不明なのです。

ビットコインの賛同者は、ビットコインにはEメールのように所有権が存在しないとしていますが、反対派は、この見解に賛同しておらず、Eメールもインターネットの中に隠された技術により成立していると考えています。

GoogleやYahooなどで問題が発生すれば、Gメールやヤフーメールは利用できなくなります。つまり、グーグルやヤフーなどのアカウント所有者は、実質的にメールアドレスや技術、アプリケーションを所有していることになっているのです。

このため、ビットコインの技術にも所有者が存在しないとは言えません。忘れてはならないのは、ビットコインの情報セキュリティは、完全に使用しているソフトウェアに依拠しており、ソフトウェアの開発者やアプリケーションサーバは、この情報を利用できる、という点です。この問題は、ビットコインの高いセキュリティに疑問を投げかけています。

ビットコイン

 

仮想通貨法を施行した日本のような国を例外として、アジア・ヨーロッパ諸国では、仮想通貨をコントロールし、制限するための多くの努力により、ある程度ビットコインの合法性が失われています。

現在、ビットコインの賛同者の多くは、リスクを恐れない冒険好きな投資家であり、彼らの資産の一部が失われても、その生活にはほとんど支障がありません。しかし、一部の人の見解によれば、ビットコインは未来の国際通貨となるということです。

仮想デジタル通貨がすべての取引における代替の通貨になるかどうか、あるいはビットコインの歓迎が一時的な現象で、消え去っていくのかについては、これからの動向を見守る必要があります。株式市場において、ビットコインがほかの決済手段と併用され、最終的に、セキュリティや運営に適したインフラなど、必要な可能性が整えられ、ビットコインなどの仮想通貨が、投機的な市場の第一の選択となる時代が到来するかもしれません。