サウジアラビアのイエメン戦争から3年
サウジアラビアはイエメンのハーディ大統領の復権を理由に、アメリカや数カ国の支援を受けて、2015年3月25日からイエメンを攻撃し、この国を全面的に封鎖しています。
この侵略行為により、これまでに1万3千人以上が死亡し、数万人が負傷、数百万人が住む家を失うという結果を伴っています。
サウジアラビアのイエメン戦争は、10日間で終了する予定だったのが、3年も長引いています。この戦争では、戦争に関する最低限の基準も守られていません。
サウジアラビアの国防相をつとめるムハンマド皇太子は、イエメンで戦争犯罪、非人道的犯罪の見本市とも言うべき様相を引き起こしています。
この3年の戦争で、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス事務局長は、サウジアラビアの政策の残虐性を世界の人々に示しましたが、西側諸国、特にアメリカはサウジアラビア政策を立案する中で、その利益から、イエメンの現状について伝えるつもりはありません。ロス事務総長はイエメンの現状をこのように伝えています。
「サウジアラビアの皇太子は、中道的なイスラムを語っているが、いまだに全面的な危険性が明らかになっていない、イエメンの人々の飢餓やイエメンの空爆は、その体制の真の行動規範を示している。」
この短い言葉は、イエメン戦争のすべての現実を示しています。21世紀において、多くの人権の主張者の目の前で現代的な暴力が行われており、誰もそれに対して回答しようとはしません。
サウジアラビアのイエメンに対する攻撃と封鎖の継続により、イエメンはコレラやジフテリアといった感染症の拡大に直面しています。イエメンの封鎖や攻撃により、50以上の医療施設が活動を停止しており、全国の給水網や水道施設が攻撃を受けています。
WHO世界保健機関の統計によりますと、100万人以上のイエメン人がコレラに感染し、ジフテリアに感染したおよそ500人のうち、およそ70人が死亡したということです。
イエメン戦争は、イエメンの人々の生活に全面的な影響を及ぼしています。この戦争では、普通の人々も巻き込まれています。
イエメンの人々はいついかなる場所でも、爆弾が投下される可能性があり、それも人権を主張する者がサウジアラビアに提供している禁止兵器です。
西側の兵器企業のイエメン戦争による利益は、人権擁護を主張する国々の、イエメン戦争に対する消極的な見方の本質を示しています。西側諸国の利益が、武器販売の中で出れば、人権は脇に追いやられ、注目されるものとは、イエメンの人々の悲惨な状況ではなく、武器製造企業の莫大な利益なのです。
こうした中で、国連安保理は無力な機関と成り下がり、独立した国々に対する圧力行使のために行動しています・
国連安保理は最近、イエメンに関する会合を開催しました。しかしその目的は、サウジアラビアの戦争について取り上げることではなく、イランに圧力を加えることにありました。一方で、イランは常に、民間人が虐殺されないよう、イエメンの戦争を政治的な形で解決しようとしてきました。
サウジアラビアに各種の武器が移送されているのと同時に、イエメンが全面的に封鎖され、イランがイエメンのシーア派組織フーシ派に武器を移送していると非難されていることは、政治的な皮肉というべきでしょう。この政治的な対応は、イエメンの戦争継続という結果につながっています。この中で、フーシ派の幹部は、アルアーラムチャンネルのインタビューで次のように語りました。
「国連安保理のイエメン危機への対応は失望を呼ぶもので、制裁の延長は、この要求によるものだ。制裁の延長は、サウジアラビアの攻撃の継続と増加に伴って行われており、毎日イエメンを攻撃している連合勢力は、最悪の犯罪をイエメンの人々に対して行っている」
これに加えて、イランのザリーフ外相は、一部のヨーロッパ諸国が国連安保理でアメリカに同調し、イエメン問題に関して反イランの発言を行っているとして、次のように語りました。
「イエメンに関するヨーロッパ側との会談は、政治的な解決の枠内で行われており、もしヨーロッパ側がこの対話をアメリカの主張や要求をかなえるためのものにしようとするのであれば、これは非現実的なものになり、その行動はプロパガンダ的、政治的なものだ」
サウジアラビアのイエメンにおける戦争は、さまざまな目的を追求しています。その最も重要な目的は、フーシ派を敗北させることです。この組織は、3年間にわたり、サウジアラビアの連合にとっての深刻な脅威となっています。
イエメン内部の政治情勢におけるフーシ派の役割から、サウジアラビアは、彼らが強力になるのを防ぎ、経済的、地理的に戦略的な場所であるイエメンでの長期的な目的を果たそうとしています。フーシ派は、この3年間、軍との協力により、サウジアラビア連合にとっての深刻な障害となってきました。この軍拡主義は、イエメンにとどまらず、サウジアラビア国内、そしてアラブ首長国連邦におけるさまざまな目的のために行われています。
フーシ派は、報告の中で、3年間のサウジアラビアとの戦争において、2月だけで、サウジアラビアの侵略的な連合の軍事拠点に対して200発以上のミサイルが発射され、この連合に属する214名の兵士が死亡したと伝えました。
フーシ派のメディアは次のように発表しました。
「2月の侵略者に対するイエメンの義勇軍の作戦で、20台以上の装甲車、5台の戦車、125の兵器が破壊された。また、2月、サウジアラビア連合に属する偵察機が撃墜されている。また、弾道ミサイル数発も、アラブ首長国連邦の傭兵の司令部に打ち込んだが、あわせて弾道ミサイル10発、通常のミサイル204発が使用されている」
イエメンのサマド最高政治評議会議長は、2017年のリヤド国際空港を標的にした義勇軍のミサイル能力に触れ、次のように強調しました。
「イエメンの軍は、サウジアラビアの侵略者をこれまで以上に驚かせた」
イエメンのシーア派組織フーシ派は、戦場における抵抗のバランスにより、政治的な危機解決のための協議の準備を整えており、一連の計画も提示しています。この中で、フーシ派は国連に書簡を送り、イエメンの危機を終わらせるための新たな計画を発表しました。
フーシ派の計画は、和解のための委員会の創設、選挙による大統領と国会議長の選出といった事柄を含んでいます。つまり、すべての国民や政党が、この選挙に参加できることになります。
この計画ではまた、イエメンの復興作業開始のための国際的な保障、外国勢力による侵略行為の予防、大赦の表明、拘束された衝突の当事者の釈放、対立の解決に向けた国民投票の実施を求めています。フーシ派が提案する計画の実現は、サウジアラビアがイエメン攻撃を停止し、封鎖を解除することにかかっています。
イエメンの政治的な危機の解決は、サウジアラビアによる戦争の停止に向けた国際社会の努力が行われなければ実現することはないでしょう。そうでなければ、イエメンの現在の悲劇的な状況はより悪化することになります。イエメンの最高革命委員会のフーシ委員長は、次のように語りました。
「サウジアラビア連合の攻撃の停止、全面的な封鎖の解除なくして、イエメン危機の解決法は根本的なものとはなりえず、イエメンの悲劇の継続の責任は、国連と国連安保理にある」