水産業;エビ
広大な国土を持つイランは、北部と南部で合計2700キロ以上の海の国境を有し、多種多様な水生生物が生息しています。今夜は、イランにおけるエビ産業についてお話することにいたしましょう。
水産物は、世界の人々の食料面でのニーズの多くを満たす方法の1つです。この数十年間で、たんぱく質に対する世界の人々のニーズが増大したことから、水産物の需要が増えています。
FAO・国連食糧農業機関の統計によりますと、水産物の消費量が現状のまま維持された場合、20130年には世界において、現在の生産量に加えてさらに4000万トンの水産物が必要となるとされています。しかし、その一方で近年では、世界の海産資源の備蓄量は減少傾向にあります。過去においては、世界各地の海域において、年間1億トンもの各種の海産物が水揚げされていましたが、現在この数字は年間5100万トンにまで減少しています。
海産物の生産量がマイナス成長を示していることのさまざまな理由の1つに乱獲があげられ、このことは特にエビをはじめとする海産物の水揚げに悪影響を及ぼしています。
エビは、水の中に生息する甲殻類の1つで経済的な価値が高く、赤道地域から極地帯にわたる塩水、あるいは淡水、海域に見られます。海に生息するエビの多くは、比較的浅い海域に生息しており、昼間は改定の沈殿物の中などに隠れ、夜になると餌をもとめて隠れ場所から這い出してきます。このため、世界の多くの海域の漁師は、エビ漁を行うために夜間に海へと出かけてゆきます。
エビの多くは、一生のうちでも孵化してからしばらくは塩水を必要とするため、直接あるいは間接的に外海につながっている水域に生息しています。また、比較的きれいな水の流れる河川を好むエビもいる一方で、中には濁った水の中に住むエビもいます。
エビの一生は、卵、初期幼生、後期幼生、そして成エビという4段階に区分されます。エサの面では、成長するにしたがって植物プランクトン、藻類、軟体動物の幼生、貝類などを食するようになります。また、エビの体の色は種類により様々であり、生息する水域の温度や塩分の濃度、エサの種類、さらには生息環境の色調によって異なります。
エビは、栄養価が高く、エビに含まれるコレステロールはオメガ3やオメガ6などの不飽和脂肪酸が豊富であることから、血中コレステロールへの悪影響はありません。また、エビの肉に含まれるセレンは、ガン細胞の増殖を阻止する働きがあります。
多くの種類のエビは、塩水の中に生息しており、淡水に生息するものはごくわずかです。その中でも、一部は寒帯に属し塩分を含む水域に生息しており、それらは大抵、北洋エビと呼ばれています。これらのエビは、アラスカ、カナダなどのアメリカ北部、北日本、北ヨーロッパで水揚げされます。
また、温帯や熱帯に属し、塩分を含む水域にも一部の種類のエビが生息しています。そうした水域とは、イラン南部ペルシャ湾沿岸、アメリカ南部、アフリカ西海岸、中央アメリカ、南アメリカの東西沿岸地域などです。これらの海域に生息するものが全種類のエビの大半を占めており、主に世界の貿易市場に供給されています。
さらに、淡水に生息するエビも存在しており、それらの多くは湖沼や河川、かんがい用の人工河川や運河、池などに見られます。しかし、この種類に属するエビは、国際貿易ではそれほど重視されていません。
「イランの市場」は、IRIB国際放送ラジオ日本語がお届けしています。今夜は、イランにおけるエビの養殖産業と生産、輸出についてお話しています。
広大な国土を有するイランは、北部と南部で合計2700キロメートル以上の海岸線を有し、豊富な海産物を誇る世界でも有数の国とされています。南部のペルシャ湾やオマーン身は、こうした海洋資源に恵まれており、(一部削除)様々な種類のエビが生息しています。
ペルシャ湾とオマーン海では、これまでに10種類以上のエビの生息が確認され、また水揚げされています。その中でも、特に知られているのはエビ類の中でも最大の大きさを誇るロブスターで、その重量はおよそ1キロにも及ぶものがあります。
海産物への需要が高まる一方で、その備蓄量が限られていることから、その養殖はたんぱく質を確保する重要な手段の1つとして注目されています。エビの養殖の歴史は比較的古いものの、輸出用のエビの養殖は、1960年代の初めの日本にさかのぼります。
今日、世界各国においてエビの養殖はたんぱく質を確保する産業として、急速に発展しています。その理由として、エビの肉には、豊富なたんぱく質とともにほかの動物にはないミネラルが含まれていること、また短期間で養殖できること、そして世界でたんぱく質の消費への需要が高まっていることなどが指摘できます。
イランは、近年においてこの分野に多大な投資を行ってきた国の1つです。イラン南西部フーゼスターン州、ブーシェフル州、南部ホルモズガーン州、南東部スィースターン・バルーチェスターン州では、エビの養殖を目的とする非常に大きな養殖場が設けられています。
また、イランは多様な気候風土を有しており、水生生物の養殖を含めた農業の様々な分野における潜在的な可能性を秘めています。さらに、イラン南部には1800キロに及ぶ沿岸地帯が存在(し、ペルシャ湾沿岸とオマーン海の沿岸地域には不毛地帯が存在)するため、これらの沿岸地域は水生生物の養殖に関して多大な可能性を有しています。
イランにおけるエビの養殖は、これらの沿岸地域においておよそ20年前から輸出目的でスタートしました。イラン漁業機構は、国内の水生生物の養殖の発展の主要な管理機関として、エビの養殖産業の発展に向けた本格的な措置を開始しました。
イラン南部ホルモズガーン州は、同国におけるエビの養殖が始まった主な拠点といえます。エビの養殖や大量生産に関する活動の多くは、ホルモズガーン州にて初めて行われています。この州では、エビの養殖場が盛んに生産活動を行っています。
イランでは、エビの養殖は集約養殖に準じた形で行われています。この方法では、規則正しい形状のプールが使用され、大量に購入された稚エビがプールに放流されます。ちなみに、放流される稚エビの数はプール1ヘクタール当たり1万匹から2万匹です。
エビの餌のほとんどは乾物です。エビの養殖では、エサ代がコスト全体の半分を占めています。稚エビの最も重要な餌は、アルテミアと呼ばれる小型の甲殻類です。この生物は、イラン北西部のオルミーエ湖のような、世界で最も塩分濃度の高い水の中でも生息できる唯一の生物です。現在、イラン人の専門家らはアルテミアを乾燥させ、加工することでエビの養殖に必要なエサを国内でまかなうことに成功しています。
イランで生産されたエビは、世界で最も健康的なエビの1つです。イラン産のエビは衛生基準や、冷凍、梱包される際の基準が守られていることから、世界各国で多くの顧客を有しています。フランスやスペインの一部の企業は、イラン産のエビを先物買いという形で購入しています。また、イラン産のエビの90%以上が、ペルシャ湾岸諸国やEU諸国、そして日本に輸出されています。
イラン南部ブーシェフル州にある、エビの養殖の国立研究所・イラン漁業研究センターの目的の1つあ、在来種のエビに注目することです。このセンターの研究者らは、在来種のエビの品種改良に関する研究を行い、より生殖能力が高く、成長が早く、しかも様々な環境条件に耐えうる品種のエビの生産の可能性を生み出そうとしています。
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