4月 07, 2018 16:03 Asia/Tokyo
  • ジュゴン
    ジュゴン

今回は、ペルシャ湾の稀少な哺乳動物であるジュゴンについてご紹介することにいたしましょう。

イラン南部に横たわるペルシャ湾とオマーン海は、世界における海洋哺乳動物の最も重要な生息地の1つとなっています。現在の情報によれば、この海域にはおよそ25種類の水生哺乳動物が生息しているとされています。その1つは、アザラシに非常に良く似たジュゴンです。この哺乳動物は、現在非常に珍しい存在とされ、国際自然保護連合が定める、絶滅の恐れがある動物のリストに掲載されています。今夜は、ペルシャ湾の稀少な哺乳動物であるジュゴンについてご紹介することにいたしましょう。

ペルシャ湾

 

ジュゴンは大型の水生哺乳動物で、イラン南部のペルシャ湾とオマーン海の浅い海域に生息しています。また、紡錘形の体と、なめらかな皮膚を有しており、体の表面に毛は生えておらず、臀部と尻尾に細く短い毛が、また上唇の両側に太く短い毛が見られるのみです。

 

成熟したジュゴンは、背中が灰色で、腹部はもう少し明るい色となっており、子どもはクリーム色をしています。また、上唇には分かれ目があり、口全体は下向きについていて海底に生えている海草を食べるのに都合よくできています。さらに、鼻には自由自在に開閉できるフタがついています。

 

 

大人のジュゴンには、10本から14本の歯が生えており、奥歯はエナメル質がなく丸くなっています。オスのジュゴンには、2本の大きな犬歯がありますが、肉質の唇の下に隠れているため、外側から見えることはほとんどありません。また、動くときにはクジラやイルカの尾びれのように2つに分かれた、錨のような尻尾と、爪のない胸ビレを使います。ジュゴンの大きさは最大で3.2メートル、体重は最低でも400キログラムにも及びます。一方で、ジュゴンの子どもは体長が1メートルから1メートル半で、体重はおよそ20キロほどです。この動物の寿命は、およそ70年とされています。

 

ジュゴンは、単独で行動することが多く、大抵は海底に横たわり、呼吸する時だけ海面にやってきます。昼間は水深の深い海域で過ごし、夜になると海草を食べるために浅瀬にやってきます。ジュゴンは草食性動物で、砂の多い海域では口を使って海草を根こそぎにし、ゆすって砂やその他の沈殿物を取り除いてから食べます。また、時には海に住む無脊椎動物を食べることもあります。

ジュゴン

 

ジュゴンは、9年から10年で性的に成熟しますが、ジュゴンのメスは妊娠・出産できるまでに15年から17年かかります。また、1年間の全てのシーズンを通して繁殖が可能であり、1回の出産につき1匹の子どもを産み、妊娠期間はおよそ11ヶ月間です。一度出産すると、次の出産まで2年から4年の間隔があきますが、ジュゴンの出産には栄養状態や生息環境など、そのほかにも好条件が揃っている必要があります。ジュゴンが頻繁に出産しないのは、この動物が生息環境に対して極めて敏感であることによります。さらに、ジュゴンの子どもは生まれてから1年半経つまで母乳を飲み、オスとメスが共同で子どもの世話にあたります。

ジュゴン

 

ジュゴンの天敵は、サメやシャチとされていますが、現在ジュゴンの生存を最も脅かしているのは、ペルシャ湾やオマーン海に流入し、全ての水生生物の食物源の減少につながる各種の汚染物質です。コレラの海域におけるジュゴンの生存を脅かす最大の危険因子は下水のほか、海水を淡水化する施設、港湾の拡大、埠頭や人工島の建設、船舶の頻繁な往来や、これらの船舶とジュゴンとの衝突、さらには漁獲用の網にかかってしまうことなどです。

ジュゴン

 

現在、イランの海洋環境の専門家らにより、イラン南部のジュゴンの分布や生息地の状況に関する調査が実施されています。この点において、イラン自然環境保護機構・海洋局により、海洋哺乳動物を保護する措置を体系化するため、地域の漁業関係者を対象とした海洋哺乳動物の救助や保護に関する訓練も行われています。

 

もっとも、イランが措置を口実のみではジュゴンを保護することはできず、この稀少動物を保護するためには、ペルシャ湾岸やオマーン海に面した全ての国々が連携して措置を講じる必要があることは言うまでもありません。