4月 08, 2018 17:47 Asia/Tokyo
  • カイザーツエイモリ
    カイザーツエイモリ

今回は、イラン西部ロレスターン州のザグロス山脈に生息するカイザーツエイモリの生態についてご紹介することにいたしましょう。

カイザーツエイモリは、世界に生息するイモリの中で最も美しいイモリとされ、イラン西部ロレスターン州シャフバーザーン地区のみに生息しています。このため、今日では深刻な危機にある生物として、国際自然保護連合のレッドリストにも掲載され、今後10年間で絶滅する可能性が危惧されています。

 

両生類は、その名が示すとおり水中と陸上の両方で生活し、またこれまでに様々な形で進化を遂げてきました。また、無脊椎動物をえさとし、この種の生物の個体数の調節に大きな役割を果たしています。イランに生息する両生類は、主に2つのグループに分けられ、それらは6属20種にわたります。それらのうち20%は、イランのみに生息する固有種であり、そのうちの1つが今回ご紹介するカイザーツエイモリです。

カイザーツエイモリ

 

カイザーツエイモリは、尻尾を持つ両生類で、1938年にアメリカ人の研究者カイザーにより、イラン西部ロレスターン州のシャフバーザーン地区において、イランに生息する固有種として発見されました。

 

カイザーツエイモリは、体の長さがおよそ14センチあり、皮膚が非常に滑らかで滑りやすくなっています。体の表面には、黄色い斑点が見られ、両目の間にも黄色い斑点があり、口の先が細くなっています。また、両目の後ろにも黄色い斑点があり、あごは上に引き上げられていて、体は全体に平たくなっています。

カイザーツエイモリ

 

カイザーツエイモリの皮膚は、背中の部分ではこげ茶色で、黄色もしくはオレンジ色の線と斑点が入っており、見た目が非常に美しいものとなっています。さらに、この生物は生息地域が非常に限られている事から、多くの人々の注目を集めています。

 

カイザーツエイモリは、滝が存在する地域に生息しており、そのほかの両生類とは異なり、寡占ではあまり見られません。また、滝を流れる冷水の中で見られる事が多く、酸素を多く含む滝を水源とする豊富な水が存在する事が、この生物の存続に大きく寄与します。

 

また、カイザーツエイモリの陸上の生息地は、ピスタチオやカシの木が生えている林です。カイザーツエイモリは、昆虫やその幼虫、卵、小型の節足動物をえさとしています。

 

 

カイザーツエイモリは稀少動物であるため、世界のイモリの中でも特に価値あるものとされています。現在、この生物の個体数は1000匹にも満たないものです。調査によれば、カイザーツエイモリの繁殖は季節的なもので、秋よりも春の方が盛んに行われます。

 

しかし、カイザーツエイモリが生殖できる年齢に達するには、5年から7年という年月が必要であり、このことが原因の1つとなって、この種の生物は絶滅の危機に瀕しています。特に、生殖年齢に達する前に、その多くが捕獲されてしまっているのが現実です。カイザイーツエイモリは、外見がこの上なく美しく、様々な色彩のものが存在し、水の中で興味深い行動を見せます。このため、多くの人々にとって魅力的であり、また、アジアやヨーロッパの市場では高い値段で売れることから、乱獲され、絶滅が危惧されるまでに個体数が減少してしまいました。

 

カイザーツエイモリが売買されるケースのほとんどは、水族館などでの飼育が目的です。ですが、この生物は、生息条件の点から、また気温の変化や酸素の量、そして水中ではその深さなどに非常に敏感であるため、水族館などの人工的な環境には馴染めず、結果的に死亡する可能性が高くなります。

カイザーツエイモリ

 

一方、カイザーツエイモリは変温動物であり、体温の調節が生息環境や日照問題に左右されることからも、人工的な環境での飼育には大きな危険が伴います。また、水族館などで飼育される場合、その生息場所が適切な折に掃除されなければ、残存しているえさが腐敗し、カビやばい菌が発生することになり、カイザーツエイモリの病気や死亡につながります。

カイザーツエイモリ

 

もっとも、カイザーツエイモリの天然の生息環境も、牧草地への転用や産業施設、鉱山労働施設の設置、建物や庭園、緑化空間、道路、ダムの建設、さらには地下水の過剰な汲み上げや気候の変動などから日々狭まり、この生物はもはや存続場所を失っているといっても過言ではありません。

 

このため、現在イランでは自然保護の関係機関が、驚くべき美しい稀少動物であるカイザーツエイモリの保護活動に努めています。