4月 23, 2018 19:18 Asia/Tokyo
  • 家庭内暴力の増加
    家庭内暴力の増加

今回は、西側諸国から見た女性の解放の結果としての、女性に対する家庭内暴力の増加について考えてみることにいたしましょう。

女性に対する暴力や虐待、そして女性の権利や安全の侵害は、人類の歴史における苦い出来事の1つといえます。その例として、家庭の内外において女性の安全が脅かされ、女性たちは精神的、身体的に傷ついていることが指摘できます。女性に対する暴力は、現在、世界に拡大している伝染病に等しく、それは静かに進行し、全ての国の人々が多かれ少なかれそれに苦しんでいるのです。

残念ながら、女性の権利と解放を主張する西側世界でも、発展途上国と同じように、女性に対する暴力が発生しています。今夜は、この問題をさらにクローズアップしてみることにしましょう。

西側の世界は、様々な分野での進歩が主張されていながら、今なお女性は社会的な問題にさらされています。ヨーロッパ社会からの報告によれば、家庭問題に関する厳しい法律が定められているにもかかわらず、ヨーロッパ諸国の家庭では女性に対する暴力が増加しているとされています。

家庭内暴力とは、夫婦関係においての怒りにまかせたある種の暴力行為を指し、配偶者に対する虐待行為とされています。家庭内暴力をこのように定義すると、欧州議会の報告では、ヨーロッパ人女性の4人に1人が暴力を受けているとされています。

 

それではここで、女性の権利の分野で活動するイラン人の専門家、アーホンダーン博士の話をお聞きください。

「数多くの統計から、西側諸国では女性に対する暴力の発生件数が上昇していることが分かる。実際に、西洋文明においては、フェミニズムを初めとした女性の権利を擁護する活動がなされているにも関わらず、女性は自らの権利を獲得できていないのみならず、基本的な人権すらも剥奪されている。このような文明においては、西側諸国が主張する権利に関しては、女性は自由であり、自由な服装を身につけ、自由に行動できることになっている。だが、こうした自由は、女性に対する暴力という名前の災。一方で、西側諸国では女性には自由が与えられているという理由で、惑わすような女性の様々な行動自体が、彼女らに対する虐待や嫌がらせの原因とされている。いくつもの資料によれば、誰も問題を解決しようとしないばかりか、全ての人々が女性に対する暴力の増加という問題に直面している。社会において、性的なモラルや適切な服装が守られないような社会では、必然的に女性に対する暴力も多くなる。女性に対する暴力の引き金となるのは、アルコールの摂取、利己主義、入籍しないままの同棲生活、性的差別などである。実際に、ヨーロッパの先進国では、女性は独立という名目で搾取されている。残念ながら、正式に結婚しないままの同棲生活も、暴力を促進することになる。それは、こうした結婚形態のもとでは女性がより激しい暴力にさらされるからである。これまでの調査によれば、女性は暴力により身体的、精神的にさらに多くの危険にさらされ、社会でも力を発揮できなくなる。暴力を受けている女性は、そうでない女性よりもアルコールや麻薬の過剰摂取や、自殺に走ったり、ストレスを抱えやすくなる」

 

数多くの報告によれば、フランスでは暴力の犠牲者の95%を女性が占めており、さらに彼女たちのうち51%は、夫から暴力を受けていることが分かっています。また、フランスではひと月に6人の女性が、つまり5日に1人の割合で女性が家庭内暴力により命を落としており、女性に対する扱いよりも動物に対する扱いの方が丁重なのが現実です。男性が道端で犬に暴力を振るった場合には人々から抗議を受けるにもかかわらず、公衆の面前で妻を殴打しても、誰も全く反応を示しません。

ドイツでも、女性が家庭内暴力の犠牲者となっています。ドイツの新聞ケルナー・シュタット・アンツァイゲルの報告によれば、17秒につき1人の割合で、女性が暴力を受けているということです。さらに、4日間で3人のドイツ人女性が、生活上のパートナーの男性により殺害されています。

イギリスでも、10%を超える女性が夫から虐待されています。また、イギリス人女性全体の4分の1以上が、結婚生活において配偶者から不適切な扱いを受けています。さらに、3日に1人の割合で女性が殺害されています。

こうした現実に、女性の権利擁護を主張する多くの活動家が抗議しています。これについて、デンマークの社会主義派団体によるジェンダー政策機関の代表者、ベリタ・トマソン氏は欧州委員会に提出した報告の中で、次のように述べています。

「ヨーロッパにおいて、女性たちが性的暴力や家庭内暴力に苦しんでいるという現象は、大きな問題であり、実に恥ずべきものである。EUは、これに関して本格的な策を講じる必要がある。我々は、かなり前から欧州委員会の反応を期待しており、現在では法律により女性に対する暴力を犯罪扱いとする、緊急措置を求めている。我々はまた、欧州委員会に対し、暴力により殺害された女性の数を初めとした、性的暴力の年間統計の提出を希望している」

 

これまでの調査から、人権尊重の第一人者を自称しているアメリカでも、18分に1人の割合で女性が暴力を受けています。また、病院を訪問するアメリカ人女性の22%から35%が、家庭内暴力による負傷をその理由に挙げています。

また、家庭内暴力や性的暴力の犠牲者の多くは、所得の少ない20歳から24歳の若い女性たちです。さらに、アメリカ人女性のうち25%から30%が、自らの配偶者からの性的暴力を受けています、また、これらの女性のうち15%から25%が、妊娠中にも殴打などの暴力を振るわれたとされています。

FBI・アメリカ連邦警察の報告では、アメリカ人男性全体の79%が、妻に暴力を振るっているとされています。アメリカ人女性の間に最も多く見られる暴力の被害は、殴打によるものです。殴打されたことにより病院の緊急外来に駆け込む人の数は、毎年100万人以上と報告されており、これは自動車事故やスリなどの被害による病院の緊急外来の数よりも多くなっています。

これについて、アメリカ・シカゴに本拠地を置くイスラム系の通信社サウンドビジョンはある報告で、次のように報じています。

「アメリカでは、1年間に女性や12歳以上の女子に対する暴行が50万件以上発生しており、これらの人々に対するそのほかの暴力も830万件を超える。病院の緊急外来受付に駆け込む女性の20%から30%は、体に暴力を受けた傷跡が残っている」

アメリカ最大規模を誇る女性組織NOW・全米女性機構も、これについて次のように述べています。

「アメリカではこの20年間、女性の権利擁護に向けた団体組織の努力にもかかわらず、女性に対する暴行の件数は数え切れないほど多い」

ユニセフも、ある報告においてこの事実を認め、次のように表明しています。

「アメリカは、世界で最も女性に対する暴行が多発している国である。だが、それ以上に嘆かわしいことは、人権擁護を主張するアメリカで女性が受けている暴行が、ジンバブエやカンボジアで発生している女性への暴力と全く同じものであることだ」

もっとも、これまでに発砲されている統計は、あくまでも傷跡が目に見える身体的な暴力に関するものです。ですが、身体的な暴力以外にも、精神的な暴力もあり、それは外見上は傷跡が見えないものの、破壊的な打撃を与え、耐え難い暴力とされています。

精神的な暴力による被害には、自信喪失、うつ病、迷信に頼るといったものがあり、西側諸国の多くの女性たちがこれらに悩まされています。このことから、女性にとって心の安らぎや安全なより所としての家庭の存在が揺らいでおり、西側諸国では結婚する人々が激減するとともに、妻や母親としての役割が注目されなくなってきています。

こうしてみてくると、西側諸国はこの数十年間に、女性の擁護という偽りのスローガンを掲げて行動を起こしたものの、女性の権利擁護に乗り出さなかったのみならず、社会の半分を占める女性の権利を弱めてしまったと言えます。専門家の見解では、西側諸国のフェミニズム的な政策が失敗した主な原因は、それらの国が女性を正しく認識していなかったことにあるとされています。しかし、イスラムはまさにこの盲点を見事にカバーし、メリットに転換したといえるでしょう。