May 23, 2018 20:48 Asia/Tokyo

この時間は、イラン国立博物館でのテヘラン・ルーブル展についてお話ししましょう。

1977年から、毎年5月18日は、国際博物館の日とされています。博物館や美術館は、時を結ぶトンネルであり、見る者を過去へといざなってくれます。

 

王や王妃の命令によって描かれた絵画や石碑、彫像など博物館や美術館の展示品には、多くの物語が詰まっています。。私たちはそれらの物語を知るために博物館や美術館を旅します。この旅は、訪れる前に情報を必要とするものです。

 

人々が、陶器や石器、金属器、布やガラスに、その民族の貴重な歴史や文化、文学、ことば、芸術、富、その他のものを集め、展示したり、壁や天井に描いたりして、それらを保存しようと努めるとき、博物館や美術館が誕生します。そして、その土地の現代から未来の人々、他の土地の人々が、それらを目にし、知ることができるようになるのです。

 

博物館や美術館は、実際、人々が知るべきそれぞれの土地の貴重な品々を集めており、さまざまな思想家の学術的なセオリーや理論を証明するための確かな資料を提示しています。

 

テヘラン・ルーブル展の展示品

 

 

いずれにせよ、博物館や美術館だけが、古代の歴史的な品々を展示しているわけではありません。芸術、学術、動植物、医学、絵画に関する展示会や図書館、そして歴史的な建造物もまた、博物館や美術館の役目を果たしています。

 

国際博物館の日に際し、この時間はイランの国立博物館をご紹介しましょう。イラン国立博物館は、イランで最も重要な博物館で、古代の品々を展示しています。この博物館の展示品は非常に多岐に渡り、先史時代からイスラム期にイランに生きた人々の歴史や作品を見ることができます。

 

 

イラン国立博物館は、イラン最大の歴史、考古学博物館です。

 

ルーブルは、世界の多くの人に知られた名前です。ルーブル美術館は、さまざまな国の考古学者や専門家の努力と人々の関心のたまものです。ルーブル美術館の当初の展示品は、フランスの王たちの品々で、その形成はルネサンス時代に始まりました。

 

このルーブル美術館から、西アジア、ヨーロッパ、北アフリカの古代文明に関する56点が、イラン国立博物館で展示されることになりました。テヘランのルーブル展は、「世界の文明の栄光」と題し、3月5日、フランスのルドリアン外務大臣とルーブル美術館のマルティネズ館長の立ち合いのもと、イラン国立博物館で始まりました。

 

世界の文明の栄光展では、フランスからの展示品が16点あり、最も多くなっています。その次に多いのがエジプトで12点、その次がイタリアで9点です。中でも目を引く作品は、レンブラントの絵画とスフィンクスの像です。

 

テヘランのルーブル展では、イランからは、チョガーザンビールで発掘された碑文のある斧と、およそ3000年前の鉄器時代のものとされる、ロレスターン州の銅器が展示されています。

 

テヘランのルーブル展は、シュメール、アッシリア、古代エジプト、ギリシャ、ローマなど、西アジア、ヨーロッパ、北アフリカの古代文明の品々が展示されています。19世紀のフランスの画家、ウジェーヌ・ドラクロワやカミーユ・コローの絵画も見ることができます。

 

スフィンクスの像

 

 

テヘランのルーブル展の展示品は、ルーブル美術館の8つの部分から選ばれ、4つの内容をテーマにしています。

 

ルーブル美術館のマルティネズ館長は、テヘランのルーブル展の開幕にあたって次のように語りました。

 

「イランとフランスは、古く深い関係を築いている。フランス人は、イランという歴史のある国で多くの発掘活動を行ってきた。初めての試みである今回のテヘラン・ルーブル展は、19世紀に始まった、この栄光ある関係の架け橋となる下地を整えるものだ」

ここからは、イラン国立博物館で開催された、イランの著名な映画監督、アッバース・キアロスタミー氏の写真展をご紹介しましょう。

 

テヘランのルーブル展では、イランの著名な映画監督、アッバース・キアロスタミー氏の写真展が開催されました。この写真展は、「私を見て」と題し、キアロスタミー監督の生前には公開されなかった写真が展示されています。これらの写真は、キアロスタミー監督が、フランスのルーブル美術館に何度も訪れた際に撮影されたものです。

 

イラン国立博物館のキアロスタミー監督の写真展、「私を見て」

 

 

キアロスタミー監督は、1996年から2012年まで、ルーブル美術館を訪れ、絵画や彫刻を見つめる見学者の様子を写真に収めてきました。その中から選ばれたものが、今回の写真展に展示されています。展示されている写真はどれも、ルーブル美術館の見学者が作品を見ている姿であり、キアロスタミー監督は、作品の中に消えてゆく彼らの視線を、映画監督としての視点からカメラに収めています。まるで見学者が絵画の中を旅しているかのようです。

 

ルーブル美術館の関係者は、キアロスタミー監督の4枚の写真の展示を計画していましたが、家族の意向により、その数は18枚となりました。

 

アッバース・キアロスタミー監督は、1940年に生まれ、2016年にフランスで亡くなりました。彼は、イランの映画監督であり、脚本家、写真家、プロデューサー、グラフィックアーティスト、また、詩人で画家でもありました。キアロスタミー監督は、世界の映画に大きな影響を与え、その作品は、世界の映画監督、映画評論家、文化、芸術機関から高く支持されました。

 

キアロスタミー監督は、1970年代に映画活動を始め、40本を超える長編映画、ドキュメンタリー映画、短編映画を制作しました。また、数々の映画祭で32を超える賞を受賞しています。

 

キアロスタミー監督

 

 

アッバース・キアロスタミー監督は、芸術活動を絵画から開始し、その後写真へと移行し、映画にたどり着きました。彼の深い洞察力や理解力は、そこからくるものです。細部の小さな点までこだわり、それを美しい作品に変える技術と鋭い視線により、彼は活動を行ったあらゆる分野でその才能を発揮しました。

 

キアロスタミー監督は、非常に広い視野を持ち、全体と細かい部分を融合させることに長けています。キアロスタミー監督は、自身の写真について次のように語っています。「アッバース・キアロスタミーという人間を知ってもらうために、私の写真を見てほしい。私は自分が知っていること、あるいは感じていることを、自分の写真の中に見い出している。だから、私という人間を私の写真の中で見つけてほしい」

 

イラン国立博物館に展示されているキアロスタミー監督の写真

 

 

開幕から2か月以上の間に、およそ2万人が、テヘランのルーブル展「世界の文明の栄光」を訪れました。このルーブル展は、6月8日まで、テヘランで開催されています。また、イラン北東部のホラーサーンにある博物館でのルーブル展の開催についても、現在、話し合いが進められています。