G7と上海協力機構(音声)
今回は、中国で行われた上海協力機構の首脳会合と、カナダで行われたG7主要7カ国の首脳会議についてお話し、この2つの国際機構の地位を比較してみることにしましょう。
2つの国際機構つまり、G7と上海協力機構の首脳会議は、それぞれ個別に、2018年6月上旬に開幕しました。
世界の先進7カ国によるG7の首脳会議では、アメリカと他の6カ国の対立が見られました。
しかし、上海協力機構は提示された問題に関して、参加国首脳の見解が一致していたことから、重要な歩みが進められました。
このことは、世界的な流れ、特に新たな地域、国際的なグループを結成する上での努力に注目すると、G7のようなふるい多国間の組織は、その理念を失っているだけでなく、加盟国の対立の高まりにより、崩壊に向かいつつあるということを示しています。
この数年間におけるG7の状況は、危機に向かいつつあります。その主な理由は、加盟国の経済的、政治的な状況の中に存在し、アメリカのトランプ大統領の保護主義政策により、G7の状況は、より悪化することになるでしょう。一方で、上海協力機構の結束は、より強いものになっています。
上海協力機構は、2001年6月15日、カザフスタン、中国、キルギス、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタンにより結成されました。その後、インドとパキスタンの正式加盟が、カザフスタンの首都アスタナで行われた総会により承認されました。イラン、アフガニスタン、モンゴル、ベラルーシは、この組織のオブザーバー国に加盟しています。
上海協力機構は、加盟国の人口が30億人に達し、その総面積もおよそ3600万平方キロとなり、世界最大の地域的な組織のひとつとなりました。この組織は正式加盟国とそれ以外の国にとっての、2国間、そして多国間の経済的、政治的、文化的利益を有しています。
上海協力機構は、はじめは安全保障を目的に結成されましたが、繰り返しその役割と活動範囲を拡張し、経済、社会、ひいてはスポーツの問題まで取り組んでいます。加盟国の安全保障上の問題、特にテロ、分離主義、過激主義、といった問題が主要な関心事とされています。
中国の習近平国家主席は上海協力機構の最大の目的は安全保障だとして、「上海協力機構の加盟国は、安全保障面で緊密な相互協力を行う必要がある」と語りました。
上海協力機構の加盟国、つまり、中国、ロシア、インド、パキスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスは宇宙、原子力、軍事力、経済の分野で世界最大の力を有しています。また、加盟国が保有する石油資源は世界全体のおよそ18%で、天然ガスの埋蔵量は世界の半分にも達しています。また、そのGDP国内総生産も、14兆ドル規模です。
現在、上海協力機構は、世界最大の人口と国土面積を抱えており、世界全体の経済の20%と人口の40%を有しています。国際的な影響力も常に高まっており、世界の平和と発展への貢献と、国際的な公正の維持において、重要な勢力となっています。
確かに、上海協力機構の規定には、軍事的な中立と行動の透明性が強調されていますが、いずれにしても、この組織が国際的なバランス維持のために役割を果たしているということは疑いようがない事実です。上海協力機構が強力になるとともに、地域諸国や世界の人々の注目も増すことになり、地域の安全保障と発展における責務も、拡大することになります。
インドとパキスタンが上海協力機構に正式加盟した後、この組織は地域の平和と安定の実現における歩みを踏み出しました。上海協力機構は、創設から17年間、大きな成功を収め、加盟国は、建設的な協力に基づいた関係を構築するよう、努力しています。
中国の習近平国家主席は、今回行われた上海協力機構の首脳会議のホスト役を務めました。
この会合は、6月9日と10日の日程で、中国山東省の青島で行われました。この会議の終了後、加盟国の首脳は最終声明を発表し、テロ、麻薬への対策をとり、安全保障上の脅威を抑制すると強調しました。
この声明ではまた、シリア問題、核合意、ウクライナとクリミア半島の問題について指摘されました。上海協力機構の加盟国の首脳は、ウクライナ危機の政治的な解決を支持しました。また、朝鮮半島危機を解決する目的の、アメリカと北朝鮮の首脳会談も支持し、さらにはこの流れを進める上での、国際社会の支持を求めました。
さらに、投資、貿易状況の改善、協力の拡大、中小企業の貿易の拡大といった問題も注目され、観光分野での協力の拡大も強調されました。
参加者の合意によって出されたこの最終声明は、上海協力機構の加盟国の間に協力の精神が存在し、多くの重要な問題で見解を一致していることを示しています。また、加盟国の首脳は、テロや麻薬との戦い、疾病、環境汚染対策に関する17の協定書に署名しました。
カナダで行われたG7の首脳会合は、まさに上海協力機構とは相対的で、6カ国とアメリカの対立が日々、鮮明になっていることを示しました。
今回のG7首脳会合は、6月8日と9日、カナダで開催され、トランプ大統領と、ヨーロッパ諸国及びカナダの首脳の一団の対立がこれまでになかったほどに色濃く見られました。一部のアナリストが6カ国プラス1カ国という表現を使ったように、このグループの間の溝が明らかになり、またこのグループの今後も不透明になっています。
G7・主要7カ国は、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、カナダ、日本の7カ国で構成されています。
アメリカ国家安全保障会議の幹部をつとめていたロバート・マリー氏は、次のように語っています。
「トランプ大統領の利己的な行動により、アメリカは孤立したが、これは核合意の離脱、同盟国の製品に対する追加関税により、さらに明確なものになった」
トランプ大統領は、今回のG7首脳会合で、ほかの加盟国に圧力を行使して、ロシアをG7に戻そうと努力しました。しかし、ほかのG7加盟国は、アメリカ抜きのG6を結成する用意があるようです。
ヨーロッパ、カナダ、メキシコからの鉄鋼製品とアルミ製品に重い関税を課したこと、一方的に気候変動に関するパリ協定や、TPP環太平洋パートナーシップ協定の交渉から、そしてNAFTA北米自由貿易協定から急遽離脱したこと、さらには最終的に核合意から一方的に離脱したこと、これら一連の行動は、トランプ大統領がヨーロッパやカナダなどの同盟国の意見を軽視していること、国際合意に違反していることの明確なケースであり、アメリカとG7のヨーロッパの加盟国及びカナダの対立が広がっている理由なのです。
欧州委員会のフランス・ティマーマンス第1副委員長は、この問題に注目し、トランプ大統領の行動に対して以前より真剣にEUの将来を決めるようEUに求めました。
ティマーマンス副委員長はまた、アメリカ大統領が、大西洋をまたいだ関係の強化や活動の活発化を戦略として重視してないのは、1945年以来のことだとしました。
G7首脳会合は、対立を抱える問題について、加盟国間の見解の一致や合意を達成するのに失敗した中で終わりを迎えました。このG7首脳会合は、はじめから6カ国とアメリカの激しい対立の影響を受けていました。
カナダやドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパのG7加盟国と、トランプ大統領との数カ国間、あるいは2カ国間の対話が行われたのにもかかわらず、問題を解決できなかったどころか、対立はさらに深まりました。また、加盟国の首脳は、はじめは最終声明の採択をめぐり合意し、これを発表したものの、トランプ大統領は予想もつかない行動に出て、この最終声明の承認を取り下げました。アメリカとほかのG7加盟国の大きな対立は、より鮮明になったのです。
このことは、上海協力機構の有力な加盟国であるロシアのプーチン大統領の冷笑的な反応を呼びました。プーチン大統領は、アメリカとG7加盟国のヨーロッパ諸国との対立に触れ、次のように語りました。
「トランプ大統領は、追加関税により、重要な教訓をヨーロッパ諸国に与えた」
また、ヨーロッパ諸国の首脳は、アメリカを信用することの危険性に関する警告を無視していたとしました。現在、ヨーロッパ諸国はアメリカを無制限に支持していたことで、時間を無駄に費やしています。
プーチン大統領は、戦略的な金属である鉄鋼とアルミに対する追加関税は、実質上、トランプ大統領によるヨーロッパへの制裁行使に等しいと考えています。
G7が根本的な対立に巻き込まれているのは、明らかな事実です。現在、G7は、アメリカが離脱する可能性が高まっている状況になっています。このような場合、G7はG6として存続せざるを得なくなるでしょう。