6月 23, 2018 19:15 Asia/Tokyo
  • スピリチュアル・ヘルス
    スピリチュアル・ヘルス

これまでお送りしてきた「イスラムと健康」に続き、今回からは新番組「スピリチュアルヘルス・魂の健康」をお届けすることにいたしましょう。 この番組では、イスラムが提唱している霊的な健康、すなわちスピリチュアル・ヘルスの確立に向けた教示内容についてご紹介してまいります。

魂の健康は、人間の生存にとって意義のある重要な要素です。その健康は、信仰心、神などの絶対的な力とのつながり、そして死後の永遠の生への信仰により得られるものです。心の健康により、喜びや希望、満足感、自信、安らぎ、現世と来世での救いがもたらされ、倫理や情愛、自分や他人、そして周りの世界との友愛に基づく、躍動的な関係が生まれます。

近年、心や体の健康と精神性の関係が多くの人々に注目されています。これまで行われた調査によれば、心と精神の健康、そしてその結果としての体の健康には、宗教や信条面での要素が大きな役割を果たしているとされています。

20世紀末、WHO世界保健機関は、身体、精神、社会という健康の3つの側面に加えて、新たに霊的な健康、スピリチュアルヘルスを追加しました。そして、人間の身体、精神、社会的な側面が互いに密接な関係を持ち、相互に影響を及ぼしあっているのと同様に、人間の霊的な側面や魂の健康も、先に挙げた3つの側面と関係し、影響を及ぼしていることを挙げ、健康の増進のためにはこの重要なポイントが注目されるべきだとしています。

その後、一部の有識者は、20世紀における学問上の注目の焦点が外部環境であったならば、21世紀の注目の焦点は人間の心の内面になるだろうと考えていました。言い換えれば、世界は新たな時代に入っており、重要な発見は私たちを取り巻く外部の環境ではなく、人間の内面の世界においてなされる、ということです。

 

実際に、人間は心と体という2つの側面を有し、多様な可能性や才能を秘めています。こうした才能や可能性が適切にバランスよく発達すれば、その人は本当の意味での幸せを手に入れます。このため、人間の健康のためには、心と体の健康の全ての側面が連携している状態を考える必要があります。

体の健康は、病気の状態の対極にあります。体の健康は、個々人が体の健康に留意し、栄養のある食物や医薬品を適切に摂取し、適度なスポーツを行うことで確立されます、

 

一方で、魂の健康については、医学界やこの分野の研究者の間で、宗教信仰や宗教的行為が人間にプラスの効果をもたらし、その結果、各種のガンなどの難病や、アルコール中毒、ひいては身体障害などともうまく付き合えるようになる、という結論が出ています。

もっとも、魂の健康は、病気の治癒回復に祈祷や霊的な状態がもたらす効果、さらには、それらが一般の医学的治療や補完的な医療に取って代わるものであるという事のみに限定されません。霊的な側面は、人間の意識や信条、物事の捉え方、価値観、行動に深い影響を及ぼし、人間の生理学的なシステムにも影響します。そして、人間の思考や体に及ぶこの影響こそが、魂の健康なのです。

 

 

スピリチュアル・ヘルス

 

魂の健康は、ある1つの概念ですが、これについては統一された定義づけはなく、誰でも自らの世界観に基づいてこれを定義する事ができます。

来世の存在を信じていない人は、魂の健康をも完全に感覚的、物質的に捉えており、こうした捉え方に基づいて、魂の健康に関する見解を提示します。そうした人々の見解では、精神性すらも表面的な事柄となり、希望や安らぎ、喜びといった具体的な感情をも含むものとなります。このため、彼らは精神性や魂の健康を手に入れるための手段として、音楽の演奏や鑑賞、芸術活動やスポーツ、精神統一といった活動を奨励しています。また、宗教や精神性に関する話をする際にも、それらを人間の心の安らぎのための手段とみなします。

 ですが、宗教的な視点においては、精神性はより幅広い位置づけを持っています。精神性は、神と人間の恒常的な関係から生まれるものであり、信心深い人間に一神教信仰にそった物の見方を提示します。唯一神を信じる人間は、あらゆる物事における神の力や英知を信じており、原因と結果のシステムにおいては、神が全ての事物の本当の原因であると考えています。

人間は、こうしたものの捉え方ができれば、迷いから解放され、しっかりとした人格を形成できます。そして、人間の本当の存在は永遠の魂であり、現世での命は来世での永遠の生活の導入部であるという事実を考慮することで、自らの最終的な目的を設定し、体の健康以上に心の健康に注目します。このような人は、神の無限の恩恵に希望を抱いており、絶望感に打ちひしがれることはありません。

 宗教的な考え方をする人の思想においては、病気は人生における不幸のごく小さな点に過ぎず、それも神の恩恵とみなされます。このため、イスラムの専門家は、魂の健康の定義づけについて次のように述べています。

「魂の健康とは、人間の生が意義や目的を持っている状態をさし、それは神という無限の力とのつながりや、死後の来世における永遠の人生に対する信条から生まれてくる。魂の健康は、喜びや希望、満足感、確信、安らぎ、現世と来世での救いに対する確信につながり、倫理、自分や他人、そして周りの世界に対する友愛に基づく、躍動的な関係を生み出す」

 次回もどうぞ、お楽しみに。

 

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