イラン経済通信
この時間も、この1週間のイランの経済的な出来事を振り返ってまいりましょう。
この1週間の主な出来事です。
イラン大統領のスイスとオーストリアへの訪問の経済的な側面の重要性について見ていきます。
OPEC石油輸出国機構に圧力をかけるためのアメリカとサウジアラビアの努力にイランが反発しました。
イランのローハーニー大統領は、今週、スイスとオーストリアの大統領の招待受け、政治・経済高等使節団を率いてベルンとウィーンを訪問しました。まずはこの訪問の経済的な側面の重要性についてお話ししましょう。
ローハーニー大統領の訪問では、核合意に関する最新の状況について話し合いが行われ、合意の成果を維持することが強調されました。EUは、アメリカのイランに対する制裁の影響に対処するため、ブロッキング規制の法的なプロセスを開始し、ヨーロッパの投資銀行によるヨーロッパ企業、特に中小企業のイランへの投資への支援に対する障害を退けようとしています。
こうした中、さまざまな反対や妨害を軽視することはできません。アメリカの一方的な行動は、核合意にマイナスの影響を及ぼしています。トランプ政権の核合意からの離脱による対イラン戦略は、核合意の他の国々、つまり、中国、ロシア、EUを、核合意の取り決め履行と、この国際合意によるイランの利益の確保を証明しなければならない立場に追い込んでいます。
イランとヨーロッパの大企業の間で、石油や自動車の分野で締結された契約に加え、金融の分野でも、いくつかの契約が締結されました。これは、銀行の関係の発展と拡大を示しています。イラン・ヨーロッパ商工会議所のハーンサーリー会頭は次のように語っています。
「ヨーロッパとの経済取り引きの流れは希望を持てるものだ。製品やサービスの取り引きを増やすとともに、共同プロジェクトの実施に関するヨーロッパの投資、特にスイスの投資を受け入れる用意もイラン経済には存在する」
この中で、イランとヨーロッパの経済的な可能性を正しくイメージすることができるよう、さまざまな会合が開催されてきました。スイスはEUの一員ではありませんが、通常、国際的な政策の中で、EUに同調しています。現在、スイスの企業は、イランでの活動に向けて順調な歩みを進めています。イランの経済環境は、さらなる投資や活動に適しており、政治的、経済的な安全と安定の点でも、地域で優れた状況にあります。
ローハーニー大統領と、スイスのベルセ大統領は、ベルンで会談した際、「イランとスイスは、関係の拡大に向けて現在の可能性をこれまで以上に活用していく決意だ」と強調しました。ベルセ大統領は、この会談で、イランとスイスの関係は良好であり、共同プロジェクトの実施や学術分野の協力など、さまざまな分野で拡大しているとしました。また、3日火曜、両国の間で、複数の協力文書が調印されました。
2009年から2013年まで、イラン駐在のスイス大使を務めたスイスの経済次官は、イランとの貿易協力の障害について次のように語っています。
「協力の状況は改善しているが、銀行はアメリカでの変化とトランプ大統領の脅迫により、イランとの協力に慎重になっている」
EUは、核合意に関する最終的な決断を下す必要があり、それを発表するまでに多くの時間は残されていません。ヨーロッパが、核合意の維持に関するEU首脳会合で発表した事柄に従い、自分たちの立場を守り続けるのであれば、核合意におけるイランの利益の保障に関して、イランからの信頼に近づくことができるでしょう。しかし、完全な信頼が得られるまでには、まだほど遠い状態です。
イランは、ヨーロッパとの安定した関係を強調しており、協力という政策は、相互の利益が守られたときに効果があり、関係はバランスが取れた状況の中で拡大する、と考えています。ローハーニー大統領のスイスとオーストリアの訪問は、イラン、オーストリアとスイス、そしてその他のヨーロッパ諸国にとってプラスの影響になる可能性がありますが、それが決定的になるか否かは、ヨーロッパの政治的な意志にかかっています。
こうしたことから、現在の状況の中での、イラン大統領のヨーロッパ訪問と、スイスとオーストリアでの協議は、政治、経済評論家の注目を集めました。この訪問では、複数の合意が成立し、重要な問題に関する協議が行われ、それらは、イランとヨーロッパ諸国の協力をより正確に示すものとなりえます。
アメリカが、5月8日に核合意を離脱し、ヨーロッパ諸国がこの合意の維持を要請した後、イランは、アメリカの制裁が復活した後のイランの核合意の利益が確保されるよう、具体的な保障を提示するための機会をヨーロッパに与えました。
イランのアラーグチー外務次官は、ヨーロッパは、核合意を維持し、アメリカの制裁を回避するための方法を見出すべきだと強調し、「ヨーロッパ企業のイランでの活動継続、原油の売却、イランの口座への振り込みの円滑化は、イランにとって重要な問題だ」と語りました。
イランのザンゲネ石油大臣は、「OPEC石油輸出国機構の加盟国が取り決め以上の増産を行うことは、この機構の合意への違反だ」と表明しました。ザンゲネ石油相は、1日日曜、OPECの今期議長を務めるアラブ首長国連邦のエネルギー大臣に書簡を送り、次のように記しました。
「OPECのすべての加盟国は、ウィーンでのOPEC総会で決定された取り決めを守るべきであり、OPECの独立と統一を損なうような一方的な行動を避けるべきだ」
ここからは、この書簡が記された理由とその重要性についてお話しします。
先週、再び、アメリカとサウジアラビアが、OPECに圧力をかけようとしました。この動きは、アメリカのトランプ大統領のツイッターによって始まりました。その後もトランプ大統領は、フォックスニュースのインタビューで、OPECは原油価格を操作していると非難しました。
トランプ大統領は、「サウジアラビアは、石油市場におけるイランの減産の影響を償い、原油価格の高騰を防ぐため、日量200万バレルの増産を約束した」と主張しました。しかし、このツイートは、数時間後にサウジアラビアのメディアによって否定されました。
このようなサウジアラビアの立場の変化は、イランが、トランプ大統領のサウジアラビアに対する200万バレルの増産要請を、「アメリカからサウジアラビアへのOPEC離脱の指示」と表現した後に見られました。この問題は、サウジアラビアの内部の反対を招くとともに、OPECにおけるサウジアラビアの影響力を減らす可能性がありました。
トランプ大統領がツイッターでOPECと原油価格の高騰に触れるのは、これが4度目です。このトランプ大統領のメッセージに対し、イランの石油関係者が即座に回答しました。
イランのカーゼムプールOPEC代表は、トランプ大統領の発言を受け、サウジアラビアには日量200万バレルを増産する力はないとし、「トランプ大統領のサウジアラビアへの要請は、サウジアラビアに対するOPEC離脱の指示を意味する」と語りました。
OPECの加盟15か国は、先週、ウィーンで定例会議を開催し、日量120万バレルの減産と、生産枠である3250万バレルの維持、生産枠の100%の順守を決定しました。
ベネズエラをはじめとするOPECの一部の加盟国の生産量が減少したため、OPECの生産枠に関する合意順守の割合は、5月に158%に達していました。そのため、OPECは、今月からそれを100%に抑え、市場における原油の不足を防ごうとしています。しかし、OPECの統計は、合意の100%の順守は、5月よりも生産量が68万バレル増えることを意味し、増産が可能な加盟国の間で、それを分担しなければなりません。このことから、最近のOPECの最終決議により、サウジアラビアは産油量を増加することはできないのです。
ザンゲネ石油相がアラブ首長国連邦のエネルギー大臣に送った書簡では、次のように強調されています。
「最近のOPECの会合では、ある国から別の加盟国への生産量の委譲に関しては決定が下されていない」
ザンゲネ石油相は、OPECの会合で決定された分担を超えた加盟国による増産は、合意への違反だとし、「一部の加盟国による増産と一方的な行動は、アメリカのイランに対する敵対の奨励を意味するだけでなく、OPECの基盤を揺るがすことにもなる」と強調しています。
こうした中、多くのアナリストは、サウジアラビアが日量1200万バレルを生産する能力があるとした主張に疑いを投げかけました。スペクタスエネルギー研究所のアムリタ・シン研究員は、次のように語っています。
「サウジアラビアのセオリーでは、このような生産量の可能性はあるかもしれないが、実際に、日量1200万バレルに生産量を増加するには、多くの費用と少なくとも1年を要する」
専門家らは、OPECの経済的な役割を損なう可能性もある、サウジアラビアの石油生産に対する政治的な対応や一方的な行動に、一部のOPEC加盟国が不満を抱いていることから、生産枠の明確化によるコントロールされた増産は、コントロールされない増産に比べ、原油価格への反応が少ないとしています。
統計によれば、6月第一週のロシアの産油量は、日量111万バレルに増加しました。ロシアはこれまで、減産合意をきちんと遵守していましたが、常に増産を支持してきました。なぜなら、ロシアの石油企業は圧力に直面しており、原油価格の高騰と、それによるシェールオイルの高まりを懸念していたからです。ロシアのロスネフチとガスプロムは、最近、それぞれ、短期間で7万バレルと36万バレルを増産する用意があることをあきらかにしました。