イラン経済通信
この1週間の主な経済関連の出来事です。
イランのザンゲネ石油大臣が、アメリカのイランの石油に対する政策を分析しました。
核合意にとどまった国々が、それを維持するための努力を続けています。
イラン政府の新たな為替政策についてお話しします。
アメリカは、イランの経済にダメージを与えるための破壊的な政策を計画しています。アメリカ政府は、世界の反対や批判にも拘わらず、自分たちの計画を推進しようとしています。まずはこの問題からお話ししましょう。
イランのザンゲネ石油大臣は、「これまでのところ、イランの石油の生産量と輸出量に大きな変化はない」と語っています。ザンゲネ石油相は、先週、アメリカのイランの石油に対する政策を分析する中で、さらに次のように語りました。
「イランは、アメリカの措置に対して自分たちの政策や計画を進めていく。イランの政府と石油省は、アメリカの措置に対抗し、石油市場のシェアを守るために全力を尽くしている」
ザンゲネ石油相はまた、OPEC石油輸出国機構の一部の加盟国への増産の圧力に関するアメリカのトランプ大統領のツイッターについて、次のように語りました。
「OPECの原則は、石油市場は政治的であってはならず、政治的な要素が、原油の需要と供給、最終的な価格を決めるような形で、市場に関与すべきではない、というものだ。だが、一部の政治的な措置や情勢不安により、石油市場に懸念が生まれ、価格が上昇する」
トランプ大統領は、先週、原油価格を下落させるため、OPECに対する強い批判を続けました。しかし、この発言も価格にはそれほど影響せず、同時に、一部の市場の専門家が、トランプ大統領に警告しました。
アメリカ海軍の分析センターCNAの研究員であるクリストファー・スタイニッツ氏は、イランに対する制裁を巡るアメリカの政策は誤りだとし、次のように記しています。
「対イラン制裁は、アメリカが望むのとは逆の結果を生み、国際レベルでのアメリカの政治的な資本の価値を下げることになる」
スタイニッツ氏は、アメリカの政治専門紙「ザ・ヒル」の中で次のように語りました。
「トランプ政権は、今週、対イラン制裁の復活に関する計画の詳細を発表した。イランの行動を変えようとする努力は、誤った想定に基づいたものであり、最終的に逆の結果を招くことになる」
多くの研究機関は、イラン産原油の輸出を停止させる政策が実現することに疑いを表明し、トランプ大統領がそれに固執すれば、原油価格は大幅に高騰すると考えるべきだとしています。サウジアラビアは、トランプ大統領の増産の要請に応じようとしていますが、多くの専門家は、OPECに対するトランプ大統領のツイートを批判しています。
イランのカーゼムプールOPEC代表は、原油価格上昇の責任はトランプ大統領にあるとし、次のように語っています。
「トランプ大統領の度重なるツイートにより、原油価格は10ドル上昇した。それをやめるよう要請する」
ブルームバーグは、「トランプ大統領のツイートは、原油価格の助けになるどころか、損失を与えている」と題する報告の中で、スタンダードチャータード銀行のアッシュフォード研究員の見解として、次のように伝えました。「トランプ大統領の干渉により、市場が不安定になっている」
ウォールストリートジャーナルも、報告の中で、カーゼムプール代表の発言を強調し、「トランプ大統領のツイートは、石油市場に逆の結果をもたらす可能性がある」としました。スタンフォードチャータード銀行は、トランプ大統領が市場にもたらす損失は、利益を上回っているとしています。メリルリンチも、アメリカは最終的に、イラン産原油の輸出を4分の1に減らすことができるかもしれないが、トランプ大統領が、イラン産原油をゼロにすることに固執した場合、原油価格は1バレル120ドルを超えるだろうとしています。
イランとヨーロッパは、この数週間、アメリカが離脱した後のイランの核合意の維持を目指し、協議を開始しました。しかし、この政策は、どの程度、核合意の維持の助けになるでしょうか。ここからは、この問題について見ていきましょう。
イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、5月23日、ヨーロッパと核合意を続けるための条件を提示し、次のように強調しました。
「ヨーロッパは、国連安保理にアメリカを非難する決議案を提出し、アメリカの核合意からの離脱に抗議すべきだ。また、イランのミサイルや地域における活動の問題を絶対に提起しないと誓う必要がある」
「また、アメリカの対イラン制裁に対抗し、イランが求める量のイランからの原油の購入を保障すべきだ。ヨーロッパの銀行も、イランの企業との銀行取り引きに関して保障する必要がある」
核合意を維持するためのヨーロッパの努力が続けられる中、アメリカが核合意を離脱した後、初めての核合意合同委員会の外相会合が、先週金曜、EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表と各国の外相が出席し、オーストリアのウィーンで開催されました。
この会合の声明では、原油売却の継続、銀行関係、運輸、投資や貿易協力が強調されました。一方で、この声明は、ヨーロッパの具体的な措置への期待とはかけ離れたものでした。
イランのローハーニー大統領は、この会合の前にドイツのメルケル首相、および、フランスのマクロン大統領と電話で会談し、核合意における協力継続についてのヨーロッパ3か国の提案は、失望するものだったとし、次のように強調しました。
「核合意合同委員会の外相会合が、イランの協力を促すようなものであれば、ヨーロッパとの協力を継続する」
これまでの経験が示しているように、不当な制裁は、国を為替に関する制限に直面させる要素です。製品の輸出が全体で輸入を上回っても、非石油製品の輸出による外貨収入が別の道をたどれば、資本の流出や密輸を引き起こす可能性があります。そのため、外貨の消費が管理される必要があります。
近年の為替相場の上昇とそれが経済に及ぼす影響により、政府は為替を管理する決定を下しました。ローハーニー政権は、発足当初から、単一為替レートの設定を約束し、それに取り組みました。そして、中央銀行の新たな為替政策によって、この約束が実現し、およそ3か月前から実施されてきました。しかし、一部の経済専門家は、この措置は、公定レートと市場のレートの差がそれほど離れていないときに実施されるべきだったとしています。
政府の新たな為替政策は、現在、実施の段階に入っています。この政策は、外貨収入に透明性を作ることで、イランの経済を安定させることができています。経済問題の専門家、マレキー氏は次のように語っています。
「輸出による外貨の復活は、多くの経済専門家が認めている。国が外貨収入の制限に直面しているとき、その消費の透明性を保つことは、管理の強化につながるだろう。外貨収入の制限は現在に限ったことではない。革命前にも、革命後にも、その問題は存在してきた」
外貨消費の管理は、イランだけの問題ではなく、多くの国で、同様の措置が行われています。輸出による外貨収入は、定められた枠組みに沿って管理されています。
アメリカの金融政策に対抗するためのイランの措置の一つは、ドルによる取り引きを排除することです。この中で、先週、イランとロシアの金融グループによる会合が開かれ、幅広い協力合意が調印されました。
イラン中央銀行のヤアグービー国際担当者は、先週木曜、ロシア中央銀行の関係者とテヘランで会談し、両国の金融グループによる会合の結果は、銀行関係の拡大に向けた第一歩だったとし、イランとロシアの貿易量の拡大につながるだろうとしています。
イランとロシアは、貿易量の拡大を決意しており、さまざまな制限を解消し、貿易の拡大に向けて銀行の関係を整えようとしています。
経済関係を拡大するには、銀行間の関係を拡大する必要があります。この中で、2017年、イランとトルコの銀行関係者によって調印された為替契約が、先週から実施されました。この契約により、アメリカドルやユーロによる決済の必要がなくなります。
イラン中央銀行のセイフ総裁は、為替契約の状況について、次のように語っています。「イラン中央銀行は、二国間、あるいは多国間の為替契約の可能性を認識しており、これに関して、一部の国と契約を結んでいる」
イラン中央銀行は、イラク、ロシア、アゼルバイジャンとの為替契約の締結を検討しています。