8月 02, 2018 19:58 Asia/Tokyo

水は、太陽エネルギーのような天然資源であり、カナートと呼ばれる地下水路は、イランの人々が水を手に入れ、このエネルギーを維持するために編み出した方法です。

この時間は、このカナートについてお話します。

 

古代イラン人は、数千年前に、それまで世界で類を見なかったイニシアチブを発揮しました。このイニシアチブにより、大量の地下水を集め、地上に送ることができるようになったのです。天然の泉のように、その水は一年を通して、自然に地中から地上に送られます。

 

イランのカナートの多くは、イランの古代文明の歴史と同じ古さを有しています。カナートが発明されてから数千年が経過しているにも拘わらず、この方法は今も、多くの村で、農業や牧畜業に利用されており、山岳地帯の半乾燥地域では、灌漑の柱となっています。

 

カナートの建設は、紀元前1000年紀初めに拡大し、長期にわたる旱魃の時期にも、農業を行うことができるようになりました。これらのカナートが次第に世界の各地に広まり、現在は、中国からモロッコ、アメリカ大陸に至るまで、数多くのカナートが存在します。

 

カナートは、イランで最も重要な、水の提供方法です。カナートによって、6万以上の村の灌漑が可能になっています。新たな技術の導入により、深い井戸がカナートの代わりとなり、ポンプが利用され、それがイランのすべての地域に広まりました。しかし、無計画に深い井戸が掘られたため、カナートの90%が乾いてしまい、復活は不可能となっています。

 

FAO国連食糧農業機関は、2014年、「農業の伝統的なシステムの遺産の重要性」と題する報告を発表しました。この報告では、これらの遺産を世界レベルで認め、持続可能な開発を果たすためにそれを維持することについて、次のように記されています。

 

「イランの伝統的な灌漑システムの技術は、少なくとも紀元前800年にさかのぼり、3000年近くもの間、伝えられてきた。イラン中部イスファハーン州のカーシャーン地方には、最も古い灌漑システムがある。カナートの灌漑システムは、農家の生活を支え、人々の食料の安全を守ってきた。乾燥地帯では、カナートによって農業のための水が常に確保できており、これがなかったら、農業を行うことはできなかった」

 

カナートは、地下に存在する傾斜のついた長いトンネルのようなもので、地下に伸びるトンネルを地上へと結びつけるための縦穴が存在します。これらの穴は、地下水をくみ上げる役割と共に、地下のトンネルの空気を入れ替える役目も果たします。

 

カナートの水が外に出る場所では、水が管から飛び出し、灌漑や他の目的に使用されます。このカナートの一番先、終着点は、井戸の母と呼ばれています。

イランのカナート

 

カナートを掘るには、まず、中心となる、水脈に届く穴を掘ります。通常、この穴は、植物が密生していたり、大きな木がある場所や、小川のほとり、山のふもとに掘られます。なぜなら、植物の存在は、地下水の存在を示しているからです。そして、そこから水を地上に送るための管となる穴を掘って行きます。

 

カナートの長さは、自然条件にしたがって異なります。この条件は、穴の深さや地面の傾斜にかかっています。地下水のある場所が深ければ深いほど、この穴も深くなります。

 

カナートの長さを決める最も重要な要素は、地面の傾斜です。イランと世界で最も長いカナートは、ヤズドにあるザールチ・カナートです。このカナートの全長は100キロで、中心となる穴の深さはおよそ400メートルです。

 

地面の傾斜が少なければ少ないほど、カナートの長さも長くなり、傾斜が大きければ大きいほど、そのカナートの長さも短くなります。カナートの掘削システムは、重力加速度だけで、何の助けも借りずに水を地中から送り出すものです。カナートでは水が常に流れ続け、緊急事態にも、決して流れが止まることはありません。

 

カナートは、水を流す方法として、数多くの利点を有しています。まず、カナートの管の主な部分が地下にあることから、水が土にしみて、無駄になることはありません。二つ目は、地球の重力加速度が利用されているため、水をくみ上げる際にポンプが必要ありません。そして三つ目は、再生可能な地下水が利用されていることです。

 

イランのカナートは、2016年にトルコのイスタンブールで開催されたユネスコ世界遺産委員会において世界遺産に登録されました。これにより、イランのカナートは、イランで20番目のユネスコ世界遺産となりました。

 

統計によれば、イランで活動しているカナートの数は、全部で3万6300本あり、すべてを合わせた長さは2万1780キロメートルです。

 

ホラーサーン、ヤズド、ケルマーン、イスファハーン、マルキャズィーの各州にあるカナートは、世界遺産に登録されています。これらのカナートの歴史は200年から2500年とされています。世界遺産に登録されている11本のカナートは、それぞれが、歴史、建築、深さ、長さ、その他の特徴の点で類を見ないものです。

 

ガサベゴナーバードのカナートは、イランで最も深いカナートで、中心となる井戸の深さは350メートルあり、大きな地震の際にも、これまで被害を受けていません。

 

南ホラーサーンのバラデフェルドゥースというカナートは、サーサーン朝時代のもので、フェルドゥースの町の近くの農地を灌漑しています。

 

ヤズドのザールチ・カナートは、イランで最も長いカナートで、全長は100キロあります。ザールチカナートの歴史は3000年以上と言われています。

ザールチ・カナート

 

イスファハーン州のアルデスターンにあるムーンカナートは、世界で唯一の2階建てのカナートです。およそ800年前に建設されました。このカナートは、それぞれの階が独立した形で水を送っています。

 

ヤズド州メフリーズのハサンアーバード・カナートは、700年の歴史を有し、イスファハーンのヴァズヴァーンにあるヴァズヴァーン・カナート、メイメにあるマズドアーバード・カナートは、地下にダムがあるために世界遺産に登録されました。さらに、ケルマーンのジューパーズは750年の歴史を有していること、アラークにあるイブラーヒームアーバードのカナートは、イスラム書記のものであることなどの理由から、ユネスコの世界遺産に登録されています。

 

ガサベ・カナートは、最も重要な観光地となっており、毎年、多くの観光客が訪れています。現在、このカナートの最初の500メートルを見学することが可能です。

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