ノウルーズの風俗習慣(2)
今回は、前回に続き、イラン人のノウルーズの風俗習慣についてご紹介することにいたしましょう。
ノウルーズに行われている慣習の一つに、ハフトスィーンと呼ばれるお正月の飾りを用意することがあります。イランの多くの地域では、年の最後、新しい年を迎える前に、家の中にハフトスィーンを飾ります、ハフトスィーンには、果物、ナッツ、お菓子、ヒヤシンスなどの花、新芽などが飾られます。サブゼと呼ばれる新芽は、ノウルーズの少し前から栽培が始められます。これに加えて、ペルシャ語のスィーンの文字から始まる7つの飾り、ニンニク、ホソバグミ、酢、リンゴ、ソマーグといったものをメインの飾りとして飾ります。またサマヌーと呼ばれる麦芽のお菓子も飾ったりします。
ノウルーズの飾りには、彩色した卵、金魚、ロウソク、鏡などもあります。イランの一部地域では、郷土菓子やナンも置かれます。ハフトスィーンにコーランを飾ること、新年が訪れる数時間前にコーランを読むことも、イランのイスラム教徒の間で広く行われている慣習です。新年が訪れると、新年の特別な祈祷を行います。この祈祷では神に対して、この自然の変化と開花を前に、彼らの状況が最善の状況になるよう求めます。
年の変わり目、いわゆる新年を迎える時間のすごし方について、イラン各地で特別な慣習が存在します。イラン人は、イスラムの価値に基づいて、自然の開花と生活や労働の空間の清掃と共に、精神の上に積もった埃を取り払い、さびを落とします。このため、年の変わり目には、多くの人がモスクなどの宗教施設を訪れます。一部の人は、家で家族と共に、コーランを読み、神に祈ります。同胞のために祈り、すべての人間によい年が訪れるよう願うことも、イランのイスラム教徒が、新年の変わり目に行うことです。
多くの巡礼地もこの時期、神の慈悲を期待し、神を崇拝する人々で溢れています。イランの宗教都市には重要な巡礼地があり、この期間、多くの人々を受け入れています。
年が変わる際に、イラン南部の文化観光都市、シーラーズの人々は、シャーチェラーグ聖廟を訪れます。テヘラン南方の聖地ゴムの人々の多くは、預言者の子孫、マアスーメの聖廟に集まります。レイやテヘランの人々はアブドルアズィーム聖廟やイマームホメイニー聖廟を訪れます。
イラン北東部のマシュハドの人々は、イスラムの預言者ムハンマドの一門、シーア派8代目イマーム・レザーの聖廟を訪れます。この巡礼地を訪れるのはこの町や周辺の町の人々に限られません。遠く離れた地域からも多くの人が訪れ、新年が変わる瞬間にこの巡礼地に滞在できるように計画します。
すべての巡礼地の中で、イラン北東部マシュハドにあるイマームレザー聖廟は、非常に多くの巡礼者を迎え入れます。イラン各地からの数千人の巡礼者は飛行機や列車、自家用車などの様々な手段でこの巡礼地にやってきます。巡礼地の中や、さらには通廊、周辺の道路は多くの人であふれかえります。
数千人の巡礼者が新年の変わり目の瞬間に祈祷し、非常に情熱的な場面を生み出します。この間すべての明かりがつけられていますが、新年が訪れるとすべての明かりが3回消えたり点いたりします。毎日礼拝の時間に鳴らされる太鼓も新年の瞬間に音を出し、新年の訪れを喜びをもって伝えます。その後人々に贈り物としてお菓子やコインが配布されます。このとき特別な喜びが生じ、神を求める人々の精神の優美さと交り、精神性にあふれる雰囲気が生まれ、信者たちの心臓を鼓動させます。人々は大きな声で預言者とその一門に祝福を送り、互いに祝辞を述べあいます。ある人たちはイマームレザーの聖廟で礼拝を行い、その聖廟の巡礼に勤しみます。
新年を迎えた後、親戚回りという好ましい慣習が始まります。この慣習は新年において非常に貴重で好ましい伝統であり、イラン人の国民的、宗教的文化に根差したもので、イスラム教においても重要な地位を有しています。イスラムでは血縁者への義務が重視されています。とはいえイスラム教は、親戚にあったり、彼らの状況を察知したり、気にかけたりするこの血縁者への義務を特定の時期に限らず、彼らの間の継続的なつながりを求めています。
親戚回りはノウルーズの最も美しい贈り物です。この贈り物は人々の心を互いに近づけ、家族や友人たちはお互いの状況を伝えあいます。人々は親戚回りによって憎しみを取り払い、愛情をそれに置き換えようとします。通常対立している人がいれば、自ら歩み寄ったり、友人や親せきたちがその二人を和解させたりします。
この親戚回りは通常、年少者が年長者を訪問し、両親に会いに行くことが優先事項とされます。このため新年になると、イラン各地で着飾った人々が親戚の家を行き来し、新しい服を着て喜びにあふれた子供たちを目にすることができます。
イラン北部のマーザンダラーン州の村では、村と村の距離が近く、多くの村人たちの間につながりがあります。このため親戚回りが終わると、近隣の村の人たちに会いに行き、13日までこの行き来が続けられます。概してノウルーズの親戚回りは家族や部族、社会の繋がりを強めるものであり、社会の文化的構造に大きな役割を果たしています。
ノウルーズの祝祭は喜びの季節であり、悲しみをそぎ落とす季節です。ノウルーズの訪問の良い点の一つに、病人の見舞いがあります。小さな町や村では人々の関係が非常に緊密で、病気の人の家に行って彼らを見舞い、元気づけ、喜びにあふれた環境を生みだすのです。都市部では多くの人が病人を見舞うために、花束やお菓子を手に彼らを訪問し、彼らと新年の時間を共有し、彼らの心細さを緩和させます。
新年の初日、人々は不幸に見舞われた人の家をこぞって訪れ、彼らが前年愛する人を失った悲しみから離れ、新しい生活を送れるように励まします。年末に家族を亡くした場合も、新しい年の儀式は行うことが勧められ、喪服も脱ぐべきだとされています。
イラン北部のギーラーン州に住むイランの部族の一つ、ターレシーは不幸があった隣人に、ヘナや祝祭の道具を持っていき、これによってその家の人を悲しみから救い出します。こうして喜びと安心を孤独の悲しみの代わりに置き換えるのです。その後彼らを連れて町に住む人たちに会いに行きます。こうしてノウルーズの慣習はイラン各地で人々の心を近づけ、結びつけているのです。
ノウルーズの訪問の好ましい慣習の一つに、エイディとして互いに贈り物をおくる習慣があります。この贈り物は友人同士や年長者から年少者に贈られるものです。エイディは、花、金貨、現金、受け取る人が喜ぶものや必要なものなどです。この慣習はとくに子供たちがたのしみにしているものであり、彼らは通常もらったエイディを集めてノウルーズの休暇が終わると友人同士でそれについて話すのです。
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