バルーチ族の音楽
今回は、イランのバルーチ族の音楽についてお話しすることにいたしましょう。
イラン各地の音楽は、イランの人々の内面を映す鏡のようなものです。多くの音楽の研究者の考えるところによれば、地方音楽は世界で最も多様性のある最も美しい音楽です。明らかにこの多様性や美しさは、イランの文化、風俗習慣、その他の環境的な要素から生まれたものです。
地方音楽は、町の文化から離れ、その地域や農村で簡素に暮らしている勤勉で活動的な人々の清らかで飾り気のない感情や生活のエッセンスです。実際、地方音楽の作曲家は、部族や地元のすべての人々です。イラン各地の音楽は、相互に結びついています。
バルーチスターンの音楽は、アジアで最も古い音楽の一つとされています。この地域の音楽は、独自の特徴を持っており、インドやパキスタン、アフガニスタン、ホラーサーンの音楽と共通点を有しています。実際、バルーチスターンの多様な自然は躍動的で情熱的であると同時に非常に奥の深い音楽を生じさせています。この音楽は人間の生活と精神的に深い結びつきを有しており、誕生から死までの人生が織り込まれています。バルーチの楽器もまた複数あります。有名なものに、ゲイチャク、タンブール、ダーイェレ、ドホル、セタール、ソルナーがあります。ゲイチャクはバルーチスターンで最もよく使われている楽器で、よく通る、心に染み入る音色を奏でます。
バルーチスターンの音楽の一部では詩がうたわれます。詩の内容は、英雄物語や叙情詩、歴史物語、社会的な出来事となっており、実際、音楽を伴う一種の物語となっています。バルーチスターンでは、詩人とは詩を楽器を使って歌う人のことであり、詩を作るだけの人のことは指しません。バルーチの詩人はかつて、歴史や英雄物語を語るだけでなく、多くの出来事にも影響を及ぼしていました。
バルーチ族は、様々な折に触れて詩を歌い、バルーチの大衆文化や文学の中でそれを検討することができます。バルーチの詩は、比較的幅広く、イランの文学の一つと見なされています。バルーチの詩は、結婚式や宗教的な儀式で、地元の楽器を用いて歌われます。ここでバルーチの故郷への愛を歌った詩をお聞きいただきましょう。
たとえその異郷の土地が美しく優れていても、繁栄していたとしても、そこに蜜の小川がながれていたとしても、バルーチにはどんな世界よりも、故郷の乾いた枝の方がよい
伝統工芸もまた、各地の風俗習慣や信条を表すものです。番組の後半ではバルーチスターンの伝統工芸についてお話しすることにいたしましょう。
バルーチスターンの最も貴重な芸術産業は、刺繍です。この芸術はバルーチの女性の美を愛する、忍耐強い趣向を物語っています。バルーチの刺繍は、女性たちがその制作の秘密を知っており、バルーチ族の特徴から影響を受けたデザインとなっています。このため、この種の刺繍はバルーチ縫いとも呼ばれています。バルーチ縫いに関して、その名声は、遠くまで伝えられ、非常に古い家庭の芸術とされています。
イタリアの旅行家マルコポーロは、バルーチスターンの女性の刺繍や絹・金糸を使った色とりどりの様々な模様の縫い物について語っています。これらの芸術は実際、シンプルで安い布に飾りをつけ、それを豪華な布に変化させるものであり、バルーチの女性の間で支持されており、忍耐と技術がその中によく表れています。この貴重な芸術作品の制作には、人間の手と糸、針のみが関わっています。
刺繍は、かつて地元でのみ広まっており、あまり知られていませんでした。一般に女性の地元の衣装を飾るために行われていましたが、ここ数年、イラン観光庁の活動により、さまざまな刺繍作品が生まれており、テーブルクロスや敷物、財布、めがねケースなど多くの製品が作られており、イランの伝統工芸に関心を持つ人に支持されています。現在、毎年これらの作品が世界各国に輸出されています。
この他、バルーチスターンの手工芸に、コイン飾りがあり、これもバルーチの女性によって作られています。コイン飾りは一般にバルーチ族の家庭で、部屋の壁に飾られたり、ベッドカバーとして使用されています。バルーチスターンのコイン飾りは、刺繍同様、長い歴史を持ち、この州の農村地帯にほぼ広まっています。この作品の制作に使用される材料には、色とりどりの光沢のある布、ボタン、鏡、スパンコール、ビー玉があります。
スィースターン・バルーチェスターンの伝統工芸は多様な種類があり、刺繍やコイン飾りに限られません。この地域では、陶器製造も行われています。バルーチェスターンでは陶器作りがキャルプールガーン地域で行われています。この地域の陶芸は女性によって行われ、男性は粘土などの材料を用意します。興味深いのは、この地域の陶器制作が、伝統的な方法で、手作業で行われていることです。このため、作られた陶器は特別なものであり、イラン国内や近隣諸国でたくさんの支持者がいます。
ラジオ日本語のフェイスブックやユーチューブなどのソーシャルメディアもご覧ください。
https://twitter.com/parstodayj