精神性への扉(1)【音声】
(last modified Thu, 23 Mar 2023 07:17:00 GMT )
3月 23, 2023 16:17 Asia/Tokyo

イスラム教徒はラマザーン・断食月の1ヶ月、断食をします。

つまり、1日のうち、日の出前から、日の入り後まで、一切の飲食や一部の行いを控えます。神はこの月を慈悲と恩恵の月とし、全ての人に断食を呼びかけ、神の宴へといざなっています。ラマザーン月の偉大さについて、イスラムの預言者ムハンマドは、この月の昼は最も優れた昼であり、この月の夜は最も優れた夜であるとし、イスラム教徒に、この月の恩恵に授かるよう求めています。

 

ガドルの夜は、ラマザーン月の非常に重要な夜のひとつであり、コーランが下された夜です。シーア派初代イマーム、アリーの殉教、2代目イマーム、ハサンの誕生も、この月に起こった出来事です。今日から、ラマザーン月の1か月間、特別番組、「精神性への扉」をお送りします。それでは、第1回の今夜の番組をお届けしましょう。

 

 

人間は本質的にさまざまな事柄に惹かれる傾向を持っています。そうした傾向の一つが、神を崇拝する心です。こうした本能は、人間が生まれたときから持つものです。

このように、崇拝や礼拝とは、人間の心の奥深くにある本能的なニーズのひとつです。歴史を見れば分かるように、いつの時代にも、人間が存在した場所では、崇拝と礼拝が行われていました。とはいえ、その崇拝の仕方や形は、時代や民族によって異なっていました。太陽や星を神と見なす人々もいれば、木や石でできた魂のない無力な偶像を崇拝する人々もいました。

 

伝説的な英雄を作ること、神や祖国のために身をささげようとすること、これらは賞賛に値する存在を求め、それを心から崇拝したいという人間の感情からくるものです。そのため、歴史を通して、多くの人間が、魂のない不完全な創造物を崇拝してきました。このような現象は、本来の道をそれるものでした。しかし、人間の知識が広がり、人類の真の教育者である神の預言者たちの指導により、人々は、唯一の管理者、すぐれた創造主の存在を悟り、それを崇拝するようになったのです。

 

多くの人は、人間が持つ何かを崇拝しようという感情は、その人にとって何の利益があるのかと尋ねます。専門家によれば、このような感情は、成長や向上を願う、無力な存在の本能的な傾倒です。人間は常に、自分という限られた存在から、より高い場所へと飛び立ち、崇拝によって、そこには限界や醜さ、欠陥は存在しないという事実を突き止めようとします。アインシュタインは、「崇拝によって、人間は自分の目標や理想の小ささを知り、自然界の栄光と偉大さを感じる」と語っています。

 

このことから、全ての人間、世界を物質的に見る人々でさえ、人生において崇拝や礼拝を必要としています。限られた空間の中で、単調な毎日を送り、失望を抱える人々でさえ、より優れた真理を知り、それを崇拝したいと考えています。原則的に人間は、危険を回避し、深い平穏を経験したいと考えます。イスラムは、その教えの中で、そのような人間のニーズに注目し成長や真理を求める感情を育てようとしています。

 

 

イスラム教徒が信じる神は、どのような神なのでしょうか?それは、唯一の神であり、本質的に、最も優れた性質を持ち、欠陥や不足を一切持たない完全な存在です。

神は世界を創造し、それを管理しています。神はあらゆる創造物に対して寛容であり、恩恵を届けます。

 

とはいえ、神への崇拝は、人間のみが行うものではありません。世界の生き物は皆、実際、神を崇拝しています。世界のあらゆる構成物は、神の愛情と恩恵に向かって動いています。聖典コーランによれば、全ての人間が、意識的、あるいは無意識に神を崇拝しているように、世界のすべての構成物は、神を崇拝しています。神はコーラン第17章アル・イスラー章夜の旅、第44節で次のように語っています。「7層の天、大地、そしてそこにいる人々は皆、神を賞賛する。あらゆる存在物が神を讃える。だがあなた方は彼らの賞賛や感謝を理解しない」 イスラム教徒の哲学者、ファーラービーは、天の回転、地球の自転、雨や水の流れ、これらは皆、それらが神を崇拝し、賞賛していることの表れだとしています。

 

 

教育と自己形成に最も適した時期は、若年期です。イマームアリーは、息子のイマームハサンにこのように語っています。

 

エ「若者の心は、空の大地のように、そこに何かをばら撒くたびに、それを受け入れる。だからあなたの心が硬くなり、他のことにとらわれるようになる前に、あなたの教育に務めた。そうすることで、あなたが努力し、経験の豊かな人々が追い求めたことを利用し、あなたも我々が理解したことを理解できるように。また、我々が明るい光の中で見たものを目にすることができるように」

 

若年期の好ましくない慣習は、まだ根付いたものにはなっていないため、それと戦うことは容易です。そのため、若年期は、好ましくない性質から解放されるための貴重な機会です。若者たちは、この大きな機会をしかるべき形で活用しなければなりません。イランの偉大な詩人、モウラヴィーは、「人間は年を取るごとに、その性質がより強固で根強くなる。なぜなら、人間の心という土がより固くなっていくからだ」と語り、たとえ話を挙げています。

 

ある男が、人々の通り道にとげのある木を植えたため、人々はそのとげに悩まされました。そのため男は、来年はその木を抜くと約束しましたが、また次の年にも、それを翌年に先送りしました。こうして何年も同じように約束だけをして、実際には木を抜きませんでした。こうして遂げのある木はどんどん育っていき、反対に男は年々、老いて弱まって生きました。こうして、彼はとうとう、それを引き抜く力がなくなってしまいました。人間もそれと同じです。イマームアリーは子供たちにこのように語っています。「あなたの心という土が固くなる前に、私はそこに礼儀という種を植えた。もし人間の心に誤った傾向が根付いてしまえば、人間はそれに従うようになる」

 

 

ある夜、ムハンマドバーゲルという名の若い神学生が、部屋で勉強をしていると、突然、少女が部屋に入っていました。彼女は何かを恐れているようで、王家の人間であることが明らかでした。少女は扉を閉め、驚いている神学生に黙っているようにと合図しました。少女は、夕食は何かと尋ねました。神学生は用意していたものを持って来ました。少女はそれを食べてからその部屋で眠ってしまいました。ムハンマドバーゲルも勉強を続けました。

 

その頃、王様は逃げてしまった娘を探すよう命じました。翌朝、娘が部屋を出たとき、役人たちは彼女を見つけ、ムハンマドバーゲルと共に捕まえて王のもとに連れて行きました。サファヴィー朝の有力な王であったアッバース1世は、なぜ昨夜、娘が自分のもとにいることを自分たちに伝えなかったのかと神学生を責めました。ムハンマドバーゲルは言いました。「王女から、誰かに知らせたら命はないと脅されていたからです」 王様が調査した結果、この若い神学生が朝まで勉強を続け、王女に対して何の過ちも犯していないことが分かりました。王様は驚くと同時に、ムハンマドバーゲルを賞賛し、「欲望をどのように抑えることができたのか」と尋ねました。若い神学生は、自分の10本の指を示しました。それらは皆、やけどをして黒ずんでいました。王様がその理由を尋ねると、神学生は答えました。「王女が眠りに付いたとき、私は欲望に負けそうになりました。しかし、そのたびに、指を一本、ろうそくの火にかざし、地獄の業火を味わおうとしたのです。こうして朝まで欲望と戦い、神の恩恵によって、悪魔が私を正しい道からそらせ、信仰を焼きつくすのを防ぐことができました」

 

アッバース1世は、この若者の敬虔さを気に入り、自分の娘と結婚させました。アッバース1世は彼に「ミールダーマード」という称号を与えました。彼は当時の優れた哲学者、学者の一人となりました。現在、ミールダーマードは、偉大さを想起させる言葉となっています。

 


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