アメリカ政府による同国先住民の人権侵害
(last modified Wed, 10 Aug 2016 10:38:29 GMT )
8月 10, 2016 19:38 Asia/Tokyo
  • アメリカ政府による同国先住民の人権侵害

アメリカ大陸がコロンブスに“発見”された後、17世紀初めから、ヨーロッパ人が少しずつ、この大陸を訪れるようになりました。

アメリカは、1776年に正式に独立を宣言しましたが、先住民はその何年も前からそこに暮らしていました。

 

アメリカの先住民の文明は、マヤ、トルテカ、アステカ、インカといった文明を含みます。ヨーロッパや別の地域からの移民たちは、先住民の土地を占領するために、彼らとの戦いに入りました。これらの戦争は、古い文明の消滅と先住民の滅亡につながり、生き残った人々は奴隷となりました。アメリカに移住した人々による奴隷制はその後、長年に渡り続きました。

 

アメリカの先住民は、この国の人口のおよそ1.7%を占め、長年、アメリカ政府から差別されてきました。こうした差別の一部は、2013年、経済危機によって拡大しました。雇用機会がないこと、政府が、先住民と侵略者の間に保健衛生、教育、医療の面での予算を公平に分配しなかったこと、この地域に豊かな鉱物資源が存在することが、先住民の生活を困難にする差別の例でした。

 

先住民の間の失業率は、28%から30%とされており、アメリカの他の市民の2倍となっています。また、統計によれば、先住民の27%から29%が、貧困ライン以下の生活を送っています。貧困ライン以下の生活を送る人の割合は、アメリカの他のグループの間では、8%から13%となっています。

 

アメリカ・ダコタ南部のロウワー・ブルール・スー族保護区には、およそ1600人が暮らしています。アメリカの部族が暮らす地域は範囲も小さく、通常、その人口も1万人に及びません。ここのスー族にも、最も規模の小さい部族のひとつです。政府の無関心により、彼らは劣悪な環境の中で暮らしています。最近、国際人権団体ヒューマンライツウォッチが、この部族に関する117ページの報告を発表しました。その中では、政府の部族評議会による大規模な汚職が明らかにされています。この報告は、この部族に割り当てられた予算に関する部族評議会の不正使用やそれによる問題を指摘しています。

 

 

歴史的な観点から、アメリカにおける植民地主義的な人種差別と、黒人や移民に対する差別や圧制の特徴は、アメリカの今日の社会の新しい傾向として捉えることができます。このような傾向は、自分たちを社会の支配者で、優位な人種と見なす特定の階層の人々による嫌悪感を示しています。このため、アメリカ国内での人種を巡る争いの時代が終わったにも拘わらず、人種差別の下地が、この人権擁護を主張する国で、暴力や殺害といった形で現れているのです。

 

アメリカ政府は、世界に伸張するための方法として、侵略と戦争を用い、それを不変の戦略としています。そのため、この国の歴代の大統領は、その見方は異なるものの、この戦略を不変の原則に据えています。

 

アメリカの外交専門誌、フォーリンポリシーは、「なぜアメリカは愚かな戦争を続けるのか、その5つの理由」と題する報告の中で、次のように記しています。「アメリカ合衆国は、北アメリカ大陸の東海岸における13植民地の形成から始まった。それから100年後、この13州がアメリカ全土に広がり、その政治家たちが、先住民を支配したり、消滅させたりした。テキサス、ニューメキシコ、アリゾナ、カリフォルニアがメキシコから切り離された。国外の植民地の支配を目的に、アメリカで内戦が起こり、それは2つの世界大戦まで続いた。1900年代に世界の大国となるまで、アメリカは何十もの戦争に参加し、軍事力を用いて他国の問題に干渉した」

 

 

アメリカのルーズベルト大統領は、回想録の中で次のように記しています。「ジョージ・ワシントンは、ヨーロッパ諸国のアメリカに対する干渉を断ち切った人物であったが、常に、自身の故国であるアメリカを、『新たな帝国』や『発展途上の帝国』としていた」

 

こうしたことから、アメリカの現代世界における人種差別的な考え方はなくなっていません。それどころか、アメリカは、自分たちの行動を常に正当化しています。こうした行動の結果、社会に人種差別の壁が生まれ、社会的な分裂、経済的な格差が生じています。このような状況が示しているのは、人種差別やその傾向は、さまざまな状況で、社会、文化、ひいては政治にまで浸透しており、明確な境界がないということです。

 

このような社会では、人間の価値や立場は、人種差別的な思想に基づいて定義されます。そのため、アメリカでは奴隷制が廃止されているにも拘わらず、かつての人種差別的な行動を連想させるような出来事や動きが繰り返されています。

 

植民地主義国が世界を分割していた時代、先住民の消滅と、彼らの人種に基づく社会的な分割は、植民地主義国の決定に基づいて行われました。しかし、文明と発展が主張される今日の世界でも、この時代の影響が、帝国主義的な優位性の思想の中に見て取れます。

 

植民地主義国の支配者が生み出した愚かな思想は、今日、欧米の社会で、優位主義の思想を復活させようとしています。そのため、この思想を持つ人々は、公正を追求する運動を厳しく弾圧しています。その例は、21世紀のアメリカ社会で、警官の黒人に対する暴力の中に見ることができるでしょう。

 

 

パパ・ブッシュ政権時代、黒人に対する明らかな圧制により、アメリカの一部の州で、大きな暴動が起こりました。そして、警察がそれに対応できなかったため、軍が動員されました。次の大統領の時代にも、政府の政策に反対するキリスト教の一派の80人が集まっていたところ、警官の警告に応じて外に出なかったため、人々の目の前で生きたまま焼死しました。

 

アメリカは、このような人類に反する犯罪の歴史を持ちながら、自分たちを、世界の先進国、輝かしい文明の保有国と見なし、他国を人権侵害やテロ支援で非難し、その処罰を決定しています。しかし、現実は、アメリカの地位を別の形で描いており、この国が、科学技術の点では先進国であっても、過去の無明時代に戻っていることを示しています。

 

植民地主義体制において、さまざまな文化の尊重を訴えているイギリスやフランスといった一部のヨーロッパ諸国やカナダの社会では、これに関して明らかな矛盾が見られます。これらの国は、覇権を拡大するため、弱小国を搾取し、民主主義や人権擁護を名目に、世界で独立した立場を取る国の人々の価値観や文化、宗教的な信条を破壊しようとしています。こうした破壊的な思想は、アメリカやヨーロッパ諸国で、一部の人種のグループが、別のグループよりも優位にあるという考え方を持ち続けていることに見ることができます。このことから、アメリカの黒人は、長年に渡り、圧力や差別に晒され、抑圧されているのです。

 

無明時代の痕跡は、現代の世界の方が明らかです。今日の植民地主義国や先進国の政治家は、アフリカの人々に対する搾取を正当化するため、このような人種差別な考え方を用いています。彼らは、人種的に優れており、誰よりも優れた考え方と行動をもっていると主張しています。このような考え方により、彼らは西側の文化を広め、自分たちの科学技術の助けを借りて、人間性からはかけ離れ、道徳に反した無明時代のやり方により、文明世界の中で、弱小な社会を支配し、彼らを侮辱しています。実際、現在の世界で人権の旗手となっているのは、最大の人権侵害国です。そして、そのような社会では、何が人権の基準となっているのか、明らかではないのです。