世界の情勢:西側の政治家の不祥事
このところ、西側メディアのトップニュースになっているのは、一部の西側政治家のモラルに反する不祥事です。
西側の政治家のモラルに反する行動は、最近になって発生した問題ではなく、しばしば、その不祥事を人々が口にしています。当時のイタリアのベルルスコーニ首相のモラルに反する行動は、イタリアのメディアの主要なテーマとなりました。
また、ベルルスコーニ首相の妻ベロニカ・ラリオ氏は、イタリアの通信社ANSAに送ったメールの中で、夫が若くて美しい女性に興味を持っていることに対する抗議を示しました。
また、フランスのサルコジ元大統領の不適切な女性関係について、報道が行われたことがありました。
アメリカでは、当時のクリントン大統領とホワイトハウスの実習生、モニカ・ルインスキー氏の不適切な関係が、大きな問題となりました。
こういった不祥事は、この数ヶ月でも深刻な問題として提示されています。アメリカの著名な映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏に関して、40人以上の女性が彼から被害を受けたことを名乗り出たことにより、この問題は再燃しています。
これらの女性たちは、数年間沈黙した後、セクハラ被害によりワインスタイン氏を訴えています。
ワインスタイン氏に対するセクハラ疑惑の暴露は、たちまちセクハラや性的暴行に関する抗議の波を引き起こしました。それは政治の世界にまで波及し、西側においては大きな懸念が生じています。この波は、一部の被害者がツイッターで、セクハラや性的暴行の被害に関して語るうえで、私も被害者だとする「MeToo」キャンペーンの呼びかけを行ってから広がるようになりました。この短期間で、一部の有名人もこの呼びかけに賛同しました。スウェーデンのマルゴット・ヴァルストローム外相もその一人で、政府内部で働くようになってからセクハラ被害を受けたことがあると認めました。
すぐに、西側の政治家の不祥事に関する告発の波が欧州議会に及びました。イギリスの新聞サンデータイムズは、欧州議会で働く87人の女性と6人の男性が被害を受けていることを明らかにしました。
サンデータイムズはまた、欧州議会を「セクハラの温床」として取り上げ、この問題は一部の欧州議会の高官によって行われているとしています。この告発に反応する中で、欧州議会の議員の一団は更なる調査を求めました。
欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長は、この報道に反応する中で、「大変強いショックを受けた」としました。
ショックを受けた事自体が、この問題に対する十分な対応につながるわけではありません。1年前から、関係者の意識のレベルを向上させる措置が行われてはいるものの、これに関するより多くの努力が行われるべきなのです。この倫理的な問題を起こした人物の名前を隠すような努力が行われていますが、サンデータイムズは、フランスのコッシェ元環境相を、セクハラ問題の加害者の一人としてあげています。
まもなくして、この問題を追及する波はイギリスにも及びました。報道によれば、保守党の数十人の議員や閣僚が、こういった不祥事の被疑者とされています。イギリスのファロン前国防相は、こうした人物の一人で、ある女性記者に対する不適切な行動により批判を浴び、辞職しました。
セクハラ問題の提起により辞任したファロン前国防相
このセクハラ糾弾の波は、イギリス労働党のケルビン・ホプキンス下院議員にも及んでいます。ホプキンス議員は、ある若い女性に対するセクハラ疑惑により、議員を辞職しました。現在も、女性のイギリス議会関係者は、携帯電話によるメッセージグループを作り、セクハラの加害者に関する告発を行うと警告を発しています。
この問題により、イギリスのメイ首相は、各政党の党首に対する書簡の中で、イギリス議会の面目を失墜させる行為について警告を発しています。この書簡では、「議会の信用が一部の行動による疑惑により傷つけられることのないよう、可能な限りの支援を行えば、あなた方に感謝することになる」とされています。メイ首相はまた、「現状の懲戒措置は、セクハラ議員への対策に必要な手段を有しておらず、彼らを法的に従わせていない」としています。
アメリカ議会の状況も、女性の安全と言う点からは、イギリス議会や欧州議会と同じような状況です。AP通信の記者は、これに関する報道の中で、アメリカの現職の女性議員1人と、女性の元議員3人が、記者に対して、「下院議員時代、男性の同僚からのセクハラを受けた」と語ったとしました。これらの女性議員らはまた、「ずいぶん前、あるいは数十年前に新人の議員だったころ、セクハラを受けた」と述べています。現職のカリフォルニア州選出のリンダ・サンチェス下院議員は、こういった被害者の一人です。
CNNは、最近、上院選挙などに影響を及ぼす、アメリカにおける新たな問題を明らかにしました。
現在、アメリカ・アラバマ州の上院の補選に候補として出馬しているロイ・ムーア元判事のセクハラ疑惑が提起されている中で、ムーア氏はこの上院選挙を悪用しているようです。あるアメリカ人女性は、1979年、14歳のとき、32歳のムーア氏にセクハラ行為を受けたとしています。この女性は現在、およそ50歳になっていますが、これまでこの問題に沈黙していました。
ムーア氏のセクハラ行為を告発するのは一人だけではありません。別の女性2人も、それぞれ14歳と17歳のときに、ムーア氏から同様の行為を受けたとされています。アラバマ州の上院補選は、数週間後に行われる予定です。もしこの疑惑が真実だとすれば、多くの結果を伴うことになります。
ムーア氏は、少し前に、キリスト教社会の価値観を尊重していると主張していましたが、もしこの疑惑に関与していた場合、彼の過去のすべての発言は疑問視されます。ムーア氏のセクハラ疑惑は、マコーネル上院院内総務や、マケイン上院議員といった共和党の上院議員が、ムーア氏の出馬辞退を求めるほど大きいものです。アメリカ・ホワイトハウスのサンダース報道官も、もしムーア氏がセクハラ疑惑に関与していた場合、トランプ大統領は、ムーア氏に出馬辞退を求めるだろうとしています。
また、アメリカのラルフ・ショーティー元上院議員は、未成年の買春に関する容疑を認めています。彼は17歳の少年に対する買春の提案により訴追されており、そのほか3件の疑惑で起訴されています。アメリカでは児童買春に対する処罰は10年以上の懲役刑とされています。ショーティー元議員に対する判決は、来年に公表される予定です。
常に人道的な価値観を尊重するよう求めている西側の政治家がこういった不祥事を繰り消している中、腐敗し人間的な価値観を踏みにじっている政治家が果たして他者を価値観や自由の侵害により非難することができるのか、という疑問が沸き起こります。
西側世界が他国に対して疑惑をかけるのではなく、自国の社会の内部とその価値観に留意する時がきているのです。