8月 04, 2022 19:13 Asia/Tokyo
  • テロ組織アルカイダ指導者のザワヒリ氏とバイデン米大統領
    テロ組織アルカイダ指導者のザワヒリ氏とバイデン米大統領

テロ組織アルカイダ指導者のザワヒリ氏が、アフガニスタン首都カーブルの自宅テラスで殺害されたとするニュースが報じられるまで、アルカイダについては長い間消息が伝えられることはなく、過激派タクフィール主義やテロ組織の名前が出るとすれば、ISISでした。したがって、アルカイダとザワヒリ氏をはじめとする幹部は事実上、すでに無用の代物と化していることになります。

こうしたことから、ザワヒリ氏殺害とそれが大々的に伝えられていることについて浮かぶ最初の疑問は、アメリカはこのことについて何を目的としているのか、そしてなぜこの時期にザワヒリ氏を殺害したのかということです。

これに関しては少なくとも4つの理由が指摘できますが、それらはいずれもアメリカの目的の大部分を明らかにするものです。

第1に、ここ数日で、アメリカ経済が後退局面に入ったというニュースが伝えられていることです。米民主党政権はこのことを受け入れていませんが、各統計からは完全に明らかであり、多くの専門家も景気後退が起きていると認識しています。また、ウクライナ戦争を考えれば、景気後退から短期間のうちに脱するという明白な見通しは何ら見られません。

このような観点から見れば、ザワヒリ氏殺害と2001年の9.11同時多発テロを思い起こさせるその宣伝は、世論の関心を国内・経済問題からそらし、安全保障や国外問題に向けさせることにあると言えます。アメリカの経済危機が依然として続いていることを考えれば、ザワヒリ氏殺害はアメリカの安全保障プロジェクトの一部と言えるのです。したがって、したがって、このような事件或いは、世論の意識を国内問題から国外問題へと外させうる行動は十分予想できるといえます。

 

第2の理由は、バイデン大統領の支持率低下と、特に西アジア歴訪後の新型コロナウイルス感染をはじめとした彼の身体能力の低下であり、これについては新たな指摘もされています。こうしたことから、バイデン氏はザワヒリ氏殺害を個人的に命令したと公表することで、自らの力強さを演出し、オバマ元政権時代のビンラディン氏殺害やトランプ前政権のISIS指導者・アルバグダーディー氏殺害を再現しようとしたのです。どうやら、バイデン氏は自らの任期が1期限りであると悟ったとみられ、オバマ氏やトランプ氏のような功績を残そうとしたのです。

第3の理由は、今年11月に行われる米中間選挙です。現状の報道では、民主党の支持は低迷しており、ザワヒリ氏殺害を選挙での宣伝材料として得票を伸ばし、民主党政権の置かれた状況を改善・強化するためと言えます。

そして第4の理由は、バイデン政権の外交政策の汚点のひとつとして、アフガニスタン戦争で何兆ドルもの費用が吹き飛び、米軍撤退により、アフガンを国内ではアルカイダの同盟組織に、国外ではアメリカの競争相手に引き渡したということがあります。こうしたことから、アメリカおよびバイデン政権は、ザワヒリ氏殺害で自らがいまだにアフガンでの有力勢力であることを示し、今回の殺害計画にタリバンからも協力を得られたと示そうとしているのです。特に、ザワヒリ氏殺害が、アメリカが凍結していたアフガン資産を解除してすぐに実行されたことは、この殺害実行が資産凍結解除の代償だった可能性もあると言えるのです。

 


ラジオ日本語のソーシャルメディアもご覧ください。

Instagram    Twitter    urmediem


 

タグ