なぜキリストの幕屋はカルトなのか? 仏・反セクト法から考える
度重なるイスラエル支持デモの開催で注目を集めているカルト団体・キリストの幕屋。SNS上では同団体への批判が大半の声を占めていますが、中には「どのようにカルトと断定できるのか?」という疑問も提示されています。ParsTodayもこれまでキリストの幕屋を「カルト団体」として報じてきました。そこで今回は、なぜキリストの幕屋をカルトと呼ぶことができるのか、フランスの反セクト法をもとに考えてみます。
カルトについて議論する際、往々にして陥りがちなのが、カルトと宗教の境目といった問題や信教の自由などが持ち出され、議論の収拾がつかなくなることです。現在取り沙汰されている統一教会の問題も、こうした理由で議論が避けられてきたことが、長年にわたる被害を生む要因になりました。
フランスでは1960年代からエホバの証人や統一教会による被害が報告されてきました。1990年代になると、カルト教団「太陽寺院」による集団自殺がフランス国内でも発生し、これを機にカルト規制の議論が進むことになります。
1995年12月、国民議会調査委員会が議会に提出した報告書でセクト(カルト)かどうかを判別するための以下の10の基準が提示されます。
1- 精神の不安定化
2-法外な金銭要求
3-元の生活からの意図的な引き離し
4-身体の完全性への加害
5-児童の加入強要
6-何らかの反社会的な言質
7-公共の秩序の侵害
8-多大な司法的闘争
9-通常の経済流通経路からの逸脱
10-公権力への浸透の企て
この10の基準をもとに2001年、反セクト法が成立しました。同法によれば、この基準のうち1つでも該当するものがあれば、規制の対象になります。
この法律の特徴は、団体の教義・信仰内容を検討対象とするのではなく、その具体的行動が既存の法に違反していないかどうかを問う点です。これにより信教の自由や政教分離などの問題に抵触することなく、カルト規制をすることが可能になりました。
では、キリストの幕屋はどういった点がこの基準に該当するのでしょうか? キリストの幕屋はこれまで比較的社会的に認知されてこなかったため、その活動実態についても不明点が多いままです。それでも、現時点で確実に該当していると言えるのは10番目の「公権力への浸透の企て」です。
キリストの幕屋は、以前から「新しい歴史教科書をつくる会」や「日本会議」などの右派系政治団体に人員を送り込んでいることが明らかになっています。宗教社会学者の塚田穂高氏は、2017年5月29日のツイッター(当時)への投稿で、幕屋の教団史を引用し、1997年8月に行われた「つくる会」の西尾幹二氏の講演会で、幕屋信者およそ2500人がつくる会に入会したとしています。
また、幕屋と日本会議の関係をめぐっては、会議のメンバーで自民党・参院議員の山谷えり子氏と親密な関係を築いています。
つくる会や日本会議は、特に安倍政権のような右派勢力の強力なイデオローグとして機能してきた経緯があり、幕屋がこうした勢力に浸透していた事実は、「公権力への浸透の企て」に十分該当すると言えます。
また、今般のイスラエル支持デモについても、計画から実行まで一般に公開することなく、幕屋とイスラエル大使館の間だけで進められており、国外勢力と結託して日本の世論操作や外交政策への影響を図ろうとしている点でも、広義の意味で「公権力への浸透の企て」と言えます。
他にも、X上には幕屋の普段の儀式の様子を伝えた投稿が複数見つかります。いずれも信者らが「異言」(霊言を受けた者が発する通常では理解できない言葉)を受けて絶叫するといった様子が綴られています。
仮にこうした行為により信者らの精神的不安定化が証明されれば、上記の基準1にも該当することになり、幕屋がカルトであるとの根拠がさらに強まることになります。
いずれにしても、反セクト法の基準を用いることで、キリストの幕屋が現時点ですでにカルトであることは十分証明可能であり、今後もその活動には警戒を要すると言えます。