視点
故ホメイニー師がゴルバチョフ氏に宛てた書簡
ソ連最後の最高指導者だったミハイル・ゴルバチョフ氏が、闘病生活の末、30日火曜夜、モスクワ市内の病院で91歳で亡くなりました。
ゴルバチョフ氏死去をうけて、同氏の政治人生で最も重要な出来事のひとつとなった、イランの初代最高指導者ホメイニー師からの書簡を振り返ってみましょう。
ホメイニー師は、世界秩序や国際情勢への深い視点、正確な予測を示していました。ホメイニー師が国際社会に影響を与えた行動のひとつが、ゴルバチョフ氏に宛てた歴史的な書簡です。
この書簡は1989年1月1日に公開され、その2日後、ホメイニー師が選んだ使節によりモスクワのゴルバチョフ氏のもとに届けられました。
この書簡でホメイニー師は、根本的な問題と極めて重要な勧告をゴルバチョフ氏に提起しました。その中には、ソ連が西側を信頼しないことの必要性が説かれたほか、共産主義の死も予見されていました。この書簡は、ホメイニー師の世界情勢を見通す思考を示すものとして歴史に残るものとなりました。
この書簡は、深い分析がなされ、イランとソ連の過去に基づいた内容になっています。この書簡は、一方ではホメイニー師が出した最も重要で根本的な指示といえ、他方では、ソ連の改革プロセスに対する警告ともいえます。
ホメイニー師は、ソ連がまだ世界の超大国の地位にあり、冷戦が終結しておらず、ベルリンの壁もまだ崩壊しておらず、ソビエト共産党の支配も続いていた当時にあって、すでにマルクス主義崩壊について語っていたのです。
後年、ホメイニー師の命日にあたり、ゴルバチョフ氏はあるインタビューで、ホメイニー師から受けた警告を受け止めなかったことを後悔しているとし、「ホメイニー師のメッセージの受け手は、歴史上のすべての時代だった」と語りました。そして、「ホメイニー師のメッセージを受け取った時、私はこれを書いた人物は世界の運命について考え、心配している人だと思った。この手紙を読んで、私はホメイニー師が世界について心配しており、私がイスラム革命についてよく知り、理解することを望んでいると感じた」と述べています。
ゴルバチョフ氏はまた、当時のロシアの政治・経済的混乱について、「もし我々がホメイニー師の予見を真剣に受け止めていたら、いまこのような状況にはなっていなかった」と述べています。
ゴルバチョフ氏がホメイニー師の予見の正しさを認めたことは、ソ連崩壊を予見したホメイニー師の視点が、ソ連がまだ権力の頂点にあった時代よりも優れていたことを示しています。
はたして今の資本主義陣営は、倫理、思想、体制的崩壊に関する思想家らの警告に耳を傾けるのでしょうか?