視点;セイエド・ラズィー・エマーディー氏
イランのBRICS正式加盟、そのメッセージと影響
イランがSCO上海協力機構に続いて、BRICSへの正式加盟を果たしました。
BRICSの設立構想は2001年までさかのぼります。2009年6月16日にブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国により「BRICs」として発足し、翌年の9月21日に南アフリカが加わってBRICSとなりました。
今月22〜24日にかけて、南アフリカ・ヨハネスブルクで第15回BRICS首脳会議が開かれました。イランのライースィー大統領も南アフリカのラマポーザ大統領の招待をうけて、この会議への出席のため今月24日未明に同国を訪問しました。ラマポーザ大統領は、BRICS現加盟の他4カ国首脳との共同記者会見で、イラン、アルゼンチン、サウジアラビア、エジプト、UAEアラブ首長国連邦、エチオピアの加盟を承認したことを明らかにしました。
イランのBRICS加盟は、第13期現政権の外交政策における3つ目の成功事例と言えます。他の2つは、SCO上海協力機構への加盟及びサウジアラビアとの国交回復です。BRICSは大陸間の連合であり、アジア、アフリカ、欧州、南米の各大陸から新興経済国が参加しています。また、中国とロシアという国連安保理常任理事国が加盟していることも、BRICSの地位を高めています。
イランのSCOおよびBRICS加盟のメッセージは、世界秩序におけるイラン孤立化政策が失敗したのみならず、世界の大国や新興国がイランとの関係強化を歓迎している、ということです。
イランのアミールアブドッラーヒヤーン外相は、「我が国のBRICS加盟は対イラン制裁・孤立化政策を無効化するものであり、政治的関係や貿易取引を拡大させるための機会である」と語っています。また、「BRICS現加盟5カ国の人口は世界人口の4割にあたる30億人、国土面積が世界の3分の1を占め、イランとの協力に重要な可能性を秘めている」としました。そして、一方のイランも、地政学的重要性や豊富なエネルギー資源、専門性のある有能な人材、各分野における目覚しい発展、政治的安定を有していることから、BRICSの注目を集めているとしました。
また、イランのBRICS加盟がもたらす影響としては、欧米による制裁の無効化がかつてないほどに現実味を増すことです。イランのジャラーリー駐露大使は自身のSNSに、「イランのBRICS加盟承認は、現加盟国との関係や信頼醸成によりもたらされた。これは、イランが西側の制裁や圧力に対抗する上で活発な外交政策を展開する新たな機会となる」と投稿しています。
BRICSの目的のひとつに、主要貿易通貨としてのドルからの離脱があります。イランは、米国による制裁を無効化するため、自国・現地通貨およびドル以外での貿易決済を目指しており、BRICSのこの政策を活用することができます。
米国際情報サイトブルームバーグは記事の中で、「世界のエネルギー取引の大半がドルで決済されていることを踏まえ、BRICSはドルの代替通貨による貿易実現のため自らの能力を強化している」と記しています。