視点:エマーディー解説員
クリスティアーノ・ロナウド選手のイラン訪問と人々の歓迎
クリスティアーノ・ロナウド選手が所属するサウジアラビアのサッカークラブ「アル・ナスル」が、ACL・アジアチャンピオンズリーグでイランのペルセポリスと対戦するため同国を訪れ、盛大な歓迎を受けました。
アル・ナスルの一行がテヘランに到着し、イランのサッカーファンが大挙して詰めかける様子は各メディアでこぞって報じられ、それぞれが独自の分析を示しました。
イラン市民による歓迎の映像を、イランのイメージダウンに悪用するメディアもあれば、クリスティアーノ・ロナウドを連れたサウジを称賛するメディア、イランのサッカーファンの行動を擁護するメディアもありました。実際には、イラン市民によるクリスティアーノ・ロナウド選手の大々的な歓迎は、予期しなかったことでも前例のないことでもなく、いたって普通のことです。
それも、ロナウド選手のようなスーパースターが、普段は見られない国を訪れるのであれば、なおさらのことです。
アルゼンチンのリオネル・メッシ選手がパリ・サンジェルマンに移籍した時や、6月にアルゼンチン代表が中国を訪れた時も、地元のファンから大々的な歓迎を受けました。
こうした歓迎が起こる何よりの理由は、サッカー界のスーパースターが、イランをはじめ世界中の若者たちのあこがれの存在となっていることです。
もう一つ重要なことは、今回イランのサッカーファンがロナウド選手を大々的に歓迎したことは、イランとサウジアラビア両国のサッカー界にとってプラスの要素になることです。
ロナウド選手やサウジサッカー界、各メディアはイランにおけるサッカーの地位とスポーツの社会的資産を理解したのです。
アル・ナスルは、同チームの選手一行が乗ったバスをイランの人々が取り囲んで歓迎する様子の画像をSNSに投稿し、「これこそがお金で買えないものだ!」と謝意を示しました。これは、イランのサッカー界の人的資源を言い得たものです。
また、サウジ側にとっても利益がありました。今回のイラン市民からの歓迎は、サウジ・サッカー界が巨費を投じてサッカーファンやACLに喜びや興奮をもたらしたことを示したからです。
しかし、肝心の試合は無観客で行われました。これは、ペルセポリスの一部サポーターによるSNS投稿に規約違反があったことによるAFC・アジアサッカー連盟による罰則措置です。
これにより、ペルセポリスも、アル・ナスルも、ロナウド選手も、そして当のAFCもイラン・サッカー界の人的資源を目にすることができなくなりました。サウジのサッカージャーナリストであるサアド・ハーリスィー氏は、今回のAFCの措置を「大きな誤り」としています。
もしAFCが別の方法で罰則を課していれば、試合には大勢の観客が詰めかけ、アジア・サッカーの地位をFIFAや欧米にも見せつけることができたに違いありません。