視点
イランに対するテロと情勢不安の扇動
1979年のイスラム革命勝利後にイランで起きた出来事を振り返ると、同国でのテロ事件においてアメリカが幇助・後方支援により主体的に関与してきたことがはっきり示されます。
イスラム革命が勝利し、現在のイラン・イスラム共和国が成立した後、アメリカが主導する世界的覇権主義勢力は、同国への攻撃に全力を挙げてきました。それは、イランが東西両陣営の覇権・支配からの独立を達成しようとしたからです。
アメリカは情勢不安の扇動者およびテロ支援として、イスラム革命前後の時期にイランに対するテロの幇助を主体的に行っており、その中では、イラン政治・統治構造ではなく、イラン国民に対してアメリカが向ける敵意が強調されていました。
アメリカは、イランを含めた様々な独立諸国でクーデターや政権打倒をこれまでに目論んでおり、それは否定できない事実です。これについて、ジョン・ボルトン米元国家安全保障問題担当補佐官は2021年1月6日、複数の国々でのクーデターの陰謀に自国が関与していたことを自白しています。
一連のアメリカの他国への干渉行為の一部としては、同国がイラン国民とその利益を狙い、当時のイランのモサッデク政権に対する1953年8月のクーデターに関与しその崩壊につなげたことが挙げられ、アメリカもこの事実を認めています。
この他にも、イランで起きたテロ事件については、それらに対するアメリカの関与を無視して語ることはできません。その一例が、ペルシャ湾でイラン旅客機が米軍艦により撃墜され、子供66名と女性53名を含む乗客290名が死亡した事件です。この米軍艦の館長はその後、「勇敢な行動をとった」として勲章を授与されています。
アメリカは近年、地域でのテロ拡大やテロ組織への支援に力を入れており、2020年1月3日には、イラク当局の正式な招待により同地を訪問していた、イランイスラム革命防衛隊ゴッツ部隊元司令官・故ソレイマーニー中将を、イラク首都バグダッド空港近くで、同国民兵組織ハシュド・アル・シャアビのアブーマハディ・アルムハンディス副司令官及びその他8人とともにテロ暗殺しました。ソレイマーニー司令官は、国境をまたぐテロとの戦いに尽力し、その旗手であった司令官です。
ソレイマーニー司令官の殉教から4年目となる今月3日、イラン南東部ケルマーンの殉教者墓地で行われたこの司令官の殉教4周年式典において2つの自爆テロが発生し、その結果、90名が殉教・284人が負傷しました。この事件については、テロ組織ISISが犯行声明を出しました。
今回のテロ事件についてはISISが犯行を認めたものの、長年にわたりイランに打撃を与える目的でこれまでのテロや人権侵害に実際に手を染めてきたのはアメリカです。その証拠に、近年の西アジア地域の情勢不安に主に関与しているISISは、アメリカの惜しみない幇助を受けてきました。またISISがその成立を宣言してから2年後、ドナルド・トランプ元米大統領は2016年8月の選挙演説の一つにおいて、「ISISの創設者は、バラク・オバマ元米大統領と、大統領選民主党候補で元米国務長官のヒラリー・クリントン氏だった」と語りました。これは、アメリカがISISの生みの親であることを強調しての発言といえるでしょう。