5つのイラン芸術に見られる平和・安寧・共生の精神【画像あり】
複雑な歴史をたどってきた豊かなイランの芸術は、常に平和と友愛、安寧、共生の表現に努めてきました。
パールストゥディの当記事では、この安寧と平和の精神を顕著に示す5つのイラン芸術にスポットを当てていきます。
1.イラン絨毯
イランの絨毯は、その品質と美しさから世界中で名声を博しています。しかしそれを超えるのは、イランの絨毯のデザインや役割に見られる、平和と共存のしるしです。たとえば、サファヴィー朝のアッバース大王時代に用いられた花と花瓶のデザインは、天国と平和を表しています。
これらのモチーフは、外見的な美を増すだけでなく、自然の象徴として、自然の大切さや自然の中での平和な生活を想起させるものです。これらの絨毯に編みこまれた様々な色彩豊かな花は多様性を物語っており、それらは違いと同時に調和や平和共存主義を強調しうるものです。
2.イラン式細密画(ミニアチュール)
イラン式細密画はその高い精度と細やかさ、活き活きした明るい色彩でよく知られています。この芸術は、平和共存という天国の美しい情景をこれ以上ない細やかさで描いています。
これらのイメージは、寛容さと美しい人生の理想をある種の形で表現しています。イランの抵抗と平和主義的を現す英雄叙事詩人フェルドウスィーの『王書(シャーナーメ)』でも、騎士道的な戦いの場面と並んで、戦争や紛争から乖離した祝賀会や集会の場面が描写されています。これらの絵画は芸術的に美しいのみならず、平和・友愛を人々の間で築く努力というメッセージも伝えています。
3.イラン・イスラム建築
イラン・イスラム建築は、幾何学模様や植物のモチーフを駆使して平和と連携の感覚を呼び起こすことを目指しています。中でも、中部イスファハーンにあるシェイフ・ ロトフォッラー・モスクは、神聖で平和な雰囲気を作り出すこうした努力の代表例です。美しいドームや左右対称を成す化粧タイルなど、このモスクのさまざまな建築要素に見られる正確なデザインや均整が取れていることは、視覚的な美に加えて、礼拝者や訪問者に平静と平和の感覚を感じさせます。
この建築物は、ある意味で人間とその創造主の間に平穏かつ神聖な空間を創り出そうとしています。
4. イラン書道
イラン書道は滑らかな線と柔らかな曲線を特徴とし、視覚芸術であるとともに、イスラムとイランの平和的な思想や哲学を表現しています。イランを代表する2人の詩人ハーフェズとサアディーの詩は、イラン書道の代表的な書体の1つ・ナスタアーリークで書かれており、イランの穏健的な思想と芸術とのつながりを示しています。
イラン書道に使われているこれらの滑らかな曲線により、書かれた字句や文には美と平穏が増すと同時に、この芸術を愛でる人々に内なる調和とバランスというメッセージが伝えられています。イランにおける書道芸術は常に、精神的および道徳的なメッセージの伝達手段として使用されてきました。
5. イラン伝統音楽
イランの伝統音楽は心地よいメロディーと優美なリズムにあふれ、平和で精神的な雰囲気を作り出すことを目指しています。三つの弦を有する弦楽器セタールや、ネイと呼ばれる葦の縦笛などは柔らかく心地よい音を出す楽器で、この芸術を構成する主要な要素の1つとなっています。
イラン音楽の音階・旋律「マガーマート」も、調和と共存を考慮する原則に基づいています。たとえば、穏やかでロマンチックなメロディーを持つマガーマートのひとつ「ダシュティー」は、ある意味で自然の美や平和を具現しており、聴衆に平和と平穏を感じさせます。