イランとそのイスラエルに対するスマート・パワー;元インド外交官の視点から
(last modified Mon, 12 Aug 2024 10:48:56 GMT )
8月 12, 2024 19:48 Asia/Tokyo
  • 元インド外交官の視点から見た、イランと同国のイスラエルに対するスマート・パワー
    元インド外交官の視点から見た、イランと同国のイスラエルに対するスマート・パワー

インドの元外交官バハドラ・クマール氏が、「イランは自らのスマート・パワーを駆使して、シオニスト政権イスラエルの敵対政策に効果的な打撃を与え、同政権に対する国際的な支持を減らすだろう」との見方を示しました。

クマール氏は「イランのスマート・パワーによるイスラエルへの厳しい打撃」と題したコラムの中で、最近の西アジア情勢を考察し、同地域におけるイランの役割を指摘しています。パールストゥデイによりますと、同氏は地域・国際政策における最近の情勢変化を、イランの力の増大と米国の反イラン政策に対する地域の支持の減少を示すものだとしています。

また、イラン新政権が世界との建設的な交流を模索していることを指摘し、「イラン外交政策のこうした変化は、イスラエルと米国の政権に重要な影響を与えるだろう」と強調しています。

同氏によれば、「ペゼシュキヤーン氏の当選はイランにおける1つの潮流の動きを示している。この潮流は、イランの敵が同国での社会不安の扇動に利用した古い政策を無効にする可能性がある」としています。

クマール氏はまた、これらの情勢変化に対する世界規模の反応についても言及し、IAEA国際原子力機関のグロッシ事務局長がペゼシュキヤーン氏との緊急会談を要請していることを指摘しました。そして、グロッシ事務局長のこの行動を、イランとIAEAとの交流の重要性の表れであり、核協力の分野での重要な発展につながっていく可能性がある、との見方を示しました。

さらに、ペルシャ湾岸諸国のイランに対するアプローチの変化を指摘し、これらの国々、特にサウジアラビアとUAEアラブ首長国連邦が、アメリカの取る反イラン的立場から距離を置きつつあると述べています。

そして、こうしたアプローチの変化のしるしの1つとして、アメリカの圧力行使によりアラブ連盟のテロ組織リストに入っていたレバノンのイスラム抵抗組織ヒズボッラーがそこから削除されたことを挙げ、「こうした変化は、特にイスラエルにとって深刻な脅威であると考えられる」と強調しました。

加えて、クマール氏は次のように記しています;

 

「総合的に見て、イランの情勢変化を注意深く追跡しているペルシャ湾岸諸国は、パラダイム・シフト(=捉え方の大きな変化)を感じている。重要な点は、ペゼシュキヤーン氏が過激主義の影響に対処すべく1つの地域的な団結を強調していることである」

 

クマール氏はまた、「過激派の声が平和を愛する世界の約20億人のイスラム教徒の声をかき消すようなことはあってはならない。イスラム教は平和のための宗教だ」というペゼシュキヤーン氏の発言にも言及しています。そして、1979年のイラン・イスラム革命から45年が経過した現在、イランが穏健と知性の代弁者とされているとし、次のように指摘しいます;

 

「もっともこのことは、イランや他の抵抗の枢軸たる諸国がイスラエルの最近の行動に対する反応を緩める、という意味ではない。パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスのハニヤ政治局長暗殺に対するイランの報復は、これまでにイスラエル政権が経験してきたものよりさらに厳しく、苦痛を伴うものになるのは確実である」

 

クマール氏はまた、イランとの戦争がイスラエル政権によるアラブ諸国とのこれまでの戦争とは大きく異なるものになる、と考えています。同氏によれば、イスラエルがパレスチナ国家の樹立を許可するまで、この戦争は終わらないと見られています。

続けて、「ヒズボッラーに関してと同様、イスラエルの報復能力は徐々に低下するだろう。イランの中・長期的な利点はイスラエルよりも重要である。また、戦争は複数の戦線で行われ、非政府系勢力とも関与することになる」としています。

さらに続けて、クマール氏は次のように説明しています;

 

「米国からの何らかの承認なく、イスラエルが単独で戦争行為に等しい形でイランの国家主権を攻撃したとは信じがたい。この”曖昧に認識された”要因により、状況は非常に危険なものとなる。イラン・イスラム革命最高指導者ハーメネイー師はすでに、イスラエル領土への直接攻撃を命令している」

 

クマール氏はまた、地域への米海軍の配備にも言及して、これを状況がエスカレートしイランとイスラエル政権の間の緊張が高まる可能性を示していると考えています。

そしてこの点に関して、ペルシャ湾地域と東地中海に12隻のアメリカ軍艦が集中していることを示す米国防総省発行の報告書を引用しています。

クマール氏の見解では、ネタニヤフ・イスラエル首相は西アジアに新たな現実を生み出そうとしており、この目標推進に向け、米国の支援を受けているということです。

クマール氏はさらに、ネタニヤフ首相がこうした取り組みにおいて演出・脚本を担当しながら、他の国際的な役者に自分との協力を求めていると強調しました。

クマール氏は結論として、「西アジアにおける最近の情勢変化は、この地域のパワーバランスに大きな変化が生じていることを示しており、それがこの地域の将来の政策に重大な影響を与える可能性がある」としました。

同氏によれば、イランは主要な勢力としてそのスマート・パワーを用いてイスラエル政権の敵対政策に効果的な打撃を与え、同政権に対する国際的な支持を減らすことができたと見られています。

 

 


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