週刊イラン
この1週間にイランで起こった主な出来事です。 イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が、断食明けの祝祭の日の礼拝で説教を行い、イスラム諸国の大使や代表と会談しました。 アメリカが、核合意の実行における妨害を続け、イランに対する圧力を強化するため、新たな制裁を可決しました。 イラン・イラク戦争の際のサルダシュトに対する化学兵器による攻撃の犠牲者、そして1981年のイスラム共和党事務所のテロによる殉教者を追悼する行事が行われました。 イラン外相がヨーロッパを歴訪しました。
それでは、最高指導者による断食開けの祝祭の日の演説から見ていくことにいたしましょう。
「イエメン、バーレーン、その他のイスラム諸国の問題は、イスラム世界にとっての主な傷口だ」
最高指導者のハーメネイー師は、先週月曜、テヘランで行われた断食開けの祝祭の礼拝で演説し、イラン国民の大きな成功に触れ、「暑いさなか、世界ゴッツの日に行われた盛大な行進は、大きな歴史的偉業だった。これはひとつの誇りとして国民の歴史に残るだろう」と語りました。ハーメネイー師はさらに次のように語っています。
「イラン国民は、イスラム世界の大きな動きの支えになり、イエメン、バーレーン、カシミールの人々を支援することができる」
ハーメネイー師は、イランの体制責任者、さまざまな階層の国民、イスラム諸国の大使とも会談し、このイスラム諸国の責務を強調すると共に、一部のイスラム諸国がこの闘争を回避していることを批判し、イラン国民は、責務の履行において賢明だとし、次のように語りました。
「イスラム世界は連帯と団結を必要としており、イスラム諸国の国民は、互いに共感を抱いている。自らの責務を果たすべきなのは政府だ」
ハーメネイー師は、世界ゴッツの日の行進と、パレスチナ人を擁護する行進への大勢のイラン国民の参加は、イスラムの連帯の誇るべき一例だとし、次のように語りました。
「イスラムの団結とは、断食を行うイランのシーア派教徒が、これほど盛大に街頭に繰り出し、スンニ派であるパレスチナ人に対して共感を示す、このことだ」
ハーメネイー師は、対立と分裂は、イスラム世界の大きな傷、最も重要な問題であるとし、イエメン、シリア、イラク、北アフリカなど、イスラム世界各地での流血の衝突に触れ、「イスラム諸国が近づき、互いに敵対するために勢力を使うことを避けることは、すべてのイスラム諸国の利益になり、神の英知に基づくものだ」と強調しました。
先週は、1980年代のイランイラク戦争時に、イラクのサッダームフセイン独裁政権が、イラン北西部サルダシュトに対して化学爆弾を投下してから30周年にあたりました。この化学兵器による攻撃で、110人が殉教、8000人以上が被害を受けました。
サルダシュトに対する化学爆弾投下の悲劇は、アメリカの人権擁護の主張が偽りであることを裏付ける、まぎれもない証拠です。この日の出来事から、イラン暦ティール月8日は、生物・化学兵器との闘争の日とされています。
イラクの化学兵器によるイランへの攻撃で、10万人以上のイラン人が被害を受けました。そのうちの多くの人が、今なお、その後遺症に苦しんでいます。サルダシュトは、実際、化学兵器による攻撃を受けた世界で初めての都市でした。当時、アメリカの国務次官で、後に国務長官になったラムズフェルド氏は、サッダーム・フセインとの会談の際に彼の頬にキスをしました。当時、欧米企業は、アメリカのゴーサインによって、最強の武器をサッダームに提供し、イランとの戦争でイラクが敗北するのを防ごうとしました。これらの兵器の使用により、サッダームは1988年、イラクのクルド人自治区のハラブジャで新たな悲劇を起こし、化学爆弾を使用することで、5000人以上の男女や子供を殺害しました。
オバマ前大統領は、2年前、ニューヨークタイムズのインタビューで、「アメリカは、サッダームがイランとの戦争で化学兵器を使用すると知っていながら、彼を支援した」と主張しました。
1981年6月28日、テヘランのイスラム共和党事務所で爆弾テロが発生し、ベヘシュティ最高裁長官の他、政府関係者や国会議員72人が殉教しました。このテロを実行したのは、イランの反体制派テロ組織、モナーフェギンでした。
モナーフェギンなどのグループとの関係で知られる欧州議会の議員は、自分の立場を利用し、イランにおける人権状況について、事実とは異なる主張を行おうとしました。イラン外務省のガーセミー報道官は、声明の中で、次のように強調しました。
「明らかに、ひとつの国や地域の独自の価値観を、異なる風俗や習慣、文化をもつ他の社会に受け入れさせるための努力は、国際関係において使い古された概念に戻るものであり、イランは、欺瞞や誤った考え方に基づくこのような主張は、全く信用や価値がないものと見なしている」
欧州議会のイランに対する声明は、イランのザリーフ外務大臣が、ヨーロッパの関係者と会談するため、ドイツ、イタリア、フランスを訪問している中で発表されました。ガーセミー報道官は、先週木曜、イルナー通信のインタビューで、ザリーフ外相のドイツ、イタリア、フランス訪問について説明し、「地域の情勢や、中東だけでなく、ヨーロッパも標的にしているテロとの戦いの必要性に注目すると、イラン、ドイツ、イタリア、フランスの意見交換は特別なものと見なされる」と語りました。ザリーフ外相は、ヨーロッパ訪問の中で、二国間の経済関係だけでなく、核合意の正確な実施についても話し合いました。
ザリーフ外相は、ヨーロッパ歴訪の中で、まず、ドイツのガブリエル外相の招待を受け、同国の首都ベルリンに入りました。この訪問では、シュタインマイヤー大統領、ガブリエル外相、その他のドイツの高官や企業の関係者と会談が行われました。
ザリーフ外相は、その後のイタリアのローマで、同国のボルドリーニ下院議長、ジェンティローニ首相、アルファノ外相と会談し、二国間関係、核合意の実施、地域や世界の重要な問題について話し合いました。
先週木曜には、ザリーフ外相はフランスの政府高官と会談するため、パリを訪問し、二国間、地域、世界の重要な問題について、同国の政府高官と話し合いました。ザリーフ外相は、先週金曜、マクロン大統領と会談しました。両者はこの会談で、地域問題、イランが常に強調しているシリア危機についてのフランスの新政府の解決法について、有意義な協議を行いました。ザリーフ外相はまた、フランスのルドリアン外務大臣、及び、ラルシェ上院議長とも会談し、両国の協力や関係の拡大について話し合いました。
アメリカ国務省は、人身売買対策に関する遅れについてイランを非難しました。この報告では、イランは人身売買を阻止するために十分な努力を行っておらず、この政策や活動に関する透明性を高めておらず、人身売買対策において、NGOと協力する姿勢が見られないと主張されています。
このような主張の一方で、アメリカの公式な機関の調査によれば、毎年10万人以上の未成年の少女が、アメリカで、性の奴隷として取引されています。アメリカの首都ワシントンでは、少女たちが性的な悪用のために売買されており、その中には13歳以下の少女も見られます。アメリカや一部のヨーロッパ諸国が、イランの人権を非難する攻撃を続けていますが、特にアフガニスタン人に対するイランの支援は、これまで何度も、ヨーロッパの独立系の機関や国連によって称賛されています。
このような世論操作と同時に、アメリカのヘイリー国連大使は、下院外交委員会の公聴会で次のように語りました。
「我々はこの問題にしっかりと対処していきたい。彼らはミサイル実験を行い、ミサイルを発射している。我々はこの問題への対策を続けていくつもりだ。我々の問題は、ロシアがこの問題について常に拒否権を行使していることだ」
アメリカのイランに対する挑発行為は、先週、さらに広いレベルで行われ、アメリカ議会も、イランに関する3つの法案について審議しました。そのうちの一つは、人権侵害に関する主張を中心にしたものです。ハフィントンポストは、この問題について次のように記しました。
「何よりも懸念すべきなのは、トランプ大統領の浅はかさによって、地政学的な過ちへと向かっているように見えることだ。トランプ大統領は、サウジアラビアの穢れた政策を実施しようとしている。このような政策はアメリカの利益や国益にはそぐわない。単にサウジアラビアの目的を果たすためだけのものだ」
ザリーフ外相は、ヘイリー国連大使のイランに対するこのような問題のはぐらかしに対して、「アメリカ政府は、イランに対する嫌悪を理由に、真理を否定せざるを得なくなっている」と語りました。ヘイリー大使は、国連安保理の会合でも、アメリカ政府の地域政策の失敗を覆い隠すため、干渉的な発言の中で、イランの地域における役割や核合意について根拠のない主張を行いました。
国連のグテーレス事務総長は、先週木曜、核合意の実施に関して安保理に提出した報告の中で、「核合意が実施されて以来、これまでに、安保理決議2231への違反は見られていない」としました。IAEA国際原子力機関の報告でも、核合意に対する取り決めへのイランの完全な遵守が改めて認められています。プリンストン大学の研究者で、以前の核協議のメンバーであったムーサヴィヤーン氏は、次のように語っています。
「アメリカ大統領は、イランを地域の地理における現実として受け止め、同盟国に対し、イラン外務省を地域の協力に向けた対話に招くよう奨励すべきだ」
この研究者は、トランプ大統領に、イランに対する敵対政策におけるアメリカの過去の過ちから学び、地域の分裂を狙ったアラブの同盟国に白紙の小切手を与えることをやめるべきだと勧告しています。ムーサヴィヤーン氏は、イランの周辺における安全保障の真の脅威について、「ティラーソン国務長官が、イランの政権交代を呼びかけたことは、国際法や、アメリカのイランの内政に対する不干渉を定めた1981年のアルジェ合意に違反するものだ」と語りました。