週刊イラン
(last modified Tue, 19 Dec 2017 13:41:06 GMT )
12月 19, 2017 22:41 Asia/Tokyo

この1週間に起こった主な出来事です。 ベイトルモガッダス・エルサレムに関するアメリカの行動に対して反発が続いています。 OICイスラム協力機構の緊急首脳会合がトルコのイスタンブールで開催されました。 核合意合同委員会の会合が、オーストリアのウィーンで開催されました。

イラクとシリアでISISが敗北を喫した今、ベイトルモガッダス・エルサレムの問題が、地域の新たな脅威になっています。この陰謀は、アメリカが計画したものです。今夜は初めに、このアメリカの陰謀が地域の将来に及ぼす影響についてみていくことにいたしましょう。

アメリカのトランプ大統領が、ベイトルモガッダスをシオニスト政権イスラエルの首都に認定したことは、イスラム世界に対するアメリカとシオニストの陰謀の一部であり、大規模な反発を招いています。

 

このアメリカの違法な行動に抗議し、イランの人々は、集会の開催や声明の発表により、パレスチナ人とベイトルモガッダスへの全面的な支持を表明しました。

OICイスラム協力機構の首脳会合

 

これについて、OICイスラム協力機構に加盟する57カ国の首脳や関係者による緊急会合が、トルコのイスタンブールで開催され、イランのローハーニー大統領が出席しました。

ローハーニー大統領はこの会合で、世界のイスラム教徒の第一の問題であるパレスチナの重要性を強調し、「現在、イスラム教徒には、連帯と統一以外の道は残されていない。すべての人は、声を一つにし、アメリカの誤った決定に抵抗し、それを非難すべきだ」と語りました。

 

パレスチナとイスラム領土の一部がシオニストに占領されてから60年以上が経過します。ベイトルモガッダスも、1967年からイスラエルに占領されています。この間、パレスチナの人々は住む家を失って難民となるか、占領地で差別や脅威にさらされるか、あるいはガザ地区で完全な封鎖下に置かれるかといった状況にありました。このような迫害の中で、アメリカの政策は、地域の人々、特にパレスチナの虐げられた人々を脅かし、シオニストを支援し、その占領を安定させるというものでした。今回のベイトルモガッダスに関するアメリカの挑発的で違法な決定は、すべてのイスラム教徒の感情を逆なでしています。

ベイトルモガッダス

 

アメリカとシオニストは、イスラム世界に対する陰謀を計画し、さまざまな方法によって、ベイトルモガッダスをイスラム世界から切り離し、この聖地のイスラム的なアイデンティティを永遠に消滅させようとしています。アメリカは、多くの努力を行い、イスラエルを支援してきたにもかかわらず、この目的を達成することができていません。今回のトランプ大統領の行動に対する、イスラム世界や多くのヨーロッパ諸国、そして国際機関の反発、そして、パレスチナ領土を守る意志を示した世界中のイスラム教徒の抗議は、アメリカとイスラエルに対する明らかな警告でした。

 

パレスチナ問題に関するイランの政策は、イスラム的、人道的な原則に基づき、イスラムの抵抗を支持し、イスラエルの占領や侵略に対抗する、というものです。イラン国民は常に、いつでもどこでも必要とあらば、イスラム、パレスチナ、そして聖地ベイトルモガッダスを守る用意があり、イスラム教徒の権利を侵害するあらゆる要素に対抗する力を持っています。

 

イランのローハーニー大統領は、OICの緊急首脳会合で、シオニスト政権の脅威に対し、イスラム世界が一致団結する必要性を強調し、次のように警告しました。

 

「アメリカ政府は、イスラム世界が、パレスチナやベイトルモガッダスの将来に対して無関心ではいないこと、パレスチナ問題に関する国際社会の多数派の見解や国際的な承認事項を侮れば、政治的な犠牲を伴うことになる、ということを知るべきだ」

 

ローハーニー大統領は、イランはベイトルモガッダスを守るため、何の条件もなしに、すべてのイスラム諸国と協力する用意があるとし、「ユダヤ人の最大の敵は、イスラム教徒やアラブ人ではなく、シオニストの危険な陰謀だ」と強調しました。

 

これまでの歴史を見ると、シオニスト政権は、アメリカの支援を受け、ベイトルモガッダスを完全に支配するために次のようなことを行ってきたことがわかります。それは、本来の住民の追放、財産の強奪、ベイトルモガッダスの人口構成を変更するためのシオニスト入植地の建設、イスラムの聖地や宗教施設の破壊、アクサーモスクに過激なシオニスト入植者が入る可能性を整えることによるアクサーモスクの神聖の冒涜などです。現在、アメリカとシオニストの目的は、抵抗勢力、特に、その柱であるレバノンのシーア派組織ヒズボッラーの、イスラエルの侵略に対する抵抗を弱めることです。

 

シオニスト政権は、この10年、ヒズボッラーやパレスチナの抵抗グループとの4つの戦争の中で、大きな平手打ちを食らいました。この中で、ヒズボッラーに対するシオニスト政権の3回にわたる敗北は重要です。一度目は、1982年の占領後のレバノンからの撤退です。二度目は、2000年のレバノン南部からの敗走です。そして三度目は、2006年の33日間にわたる戦争での敗北です。抵抗勢力の勝利は、ガザでの51日間の戦争によってより完全なものとなりました。

 

現在、アメリカとイスラエルは、イスラムの抵抗勢力との戦いで実現できなかった事柄を、ベイトルモガッダスをイスラエルの首都として完全に占領するという新たな陰謀によって実現しようとしています。地域を分割する計画が失敗し、ISISが敗北を喫し、サウジアラビアのイエメンにおける侵略政策が行き詰った後、アメリカは、中東のパワーバランスを変更しようとしており、そのためには、レバノンとパレスチナの抵抗勢力を、新たな危機に巻き込む必要があります。

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師

 

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、イスラムの預言者ムハンマドとシーア派6代目イマーム、サーデグの生誕日に際し、体制責任者、イスラム諸国の大使、イスラム統一会議の参加者と会談し、トランプ大統領が、ベイトルモガッダスをイスラエルの首都にすると宣言したことは、彼らの力のなさからくるものだとし、次のように語りました。

 

「イスラム世界は間違いなく、この陰謀に立ち向かう。シオニストはこのような行いによって大きなダメージを受け、パレスチナは、いつの日か必ず解放されるだろう」

 

ベイトルモガッダスは、切り離すことのできないイスラム領土の一部であり、イスラム教徒のアイデンティティの源です。アメリカ・シカゴ大学のミアシャイマー教授は、テヘラン大学で演説した際、アメリカの現政権とこの国の最近の行動について次のように語りました。

 

「エルサレムをイスラエルの首都にするとしたトランプ大統領の決定は、アメリカ国内の過激派の圧力と影響力によるもので、根本的な過ちであった。トランプ大統領の決定、アメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転は、アメリカの外交政策における重要な過ちを示した。そのため、アメリカ政府は、信用できない協力相手だ」

ミアシャイマー教授

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アメリカは、地域で自分たちの目的を推し進めるために、多極的な政策を追求しています。この数ヶ月、トランプ大統領は、核合意への反対といった問題を提起することで、世論の注目を、地域の主な問題であるパレスチナ問題からそらそうとしてきました。先週、アメリカ議会が核合意について決定を下すための60日の期限を迎えたことが伝えられましたが、議会は再び、核合意に関する決定をトランプ大統領に委ね、トランプ大統領は今月中にその決定を明らかにすることになっています。

アラーグチー外務次官

 

先週、核合意合同委員会の10回目の会合がウィーンで開催されました。イラン代表団の団長を務めたアラーグチー外務次官は、この会議で次のように語りました。

 

「6カ国はこの会議で、はっきりとアメリカに抗議し、核合意に基づいた取り決めを迅速かつしかるべきときに実施するよう訴えた」

核合意合同委員会の10回目の会合

 

核合意合同委員会の調整役を務める、欧州対外活動庁のシュミット副事務局長は、すべての関係国に対し、誠意によって取り決めを守るよう求めました。アラーグチー外務次官は、共同通信のインタビューで、「核合意が実施されなければ、西アジアがよりよい場所になることはない。トランプ大統領が望めば、それを試すことができる」と語りました。アラーグチー次官は、「イランの原子力庁と外務省は、アメリカが核合意を離脱した場合の対応について必要な指示を受け取っている」と述べました。

 

さまざまな状況を見ると、アメリカが現在、国内の問題や地域問題を抱えていることが分かります。この2つの問題は、核合意に影を落としていますが、アメリカ国内の問題は、核合意の合同委員会には何の関係もありません。これにより、アメリカは核合意に対する立場において

 

完全に孤立しており、ヨーロッパは、アメリカの立場にはっきりと反対しています。アメリカ国内の問題は核合意には関係がなく、重要なのは、アメリカが、署名した合意を守ることなのです。

 

いずれにせよ、核合意などの問題を抱えたからといって、アメリカとイスラエルの地域における本来の陰謀への注目を怠ってはなりません。アメリカの挑発的な行動は、大きな危険であり、時はすぐに過ぎていきます。この挑発が深まれば深まるほど、エルサレムの首都の認定により、そのマイナスの影響は全体に広がっていくのです。