週刊イラン
今週の主なニュースです。 アメリカ政府が、イランのミサイル能力について世論操作を行っています。 聖地ベイトルモガッダス・エルサレムに関するイランの地域外交が続けられています。 核合意に対するアメリカの約束不履行の問題が追及されています。 国連総会の専門会議において、イランの提案した決議草案が採択されました。
この1週間は主に、イランに対するアメリカの敵対的な行動や、イランのミサイル能力をめぐるアメリカ政府の世論操作が、政界やメディアの多くの注目を集めました。
アメリカのヘイリー国連大使が今月14日、イラン製のミサイルの破片だと主張する鉄くずを前に、イランに対する新たなプロパガンダ攻勢を繰り広げました。
ヘイリー国連大使は、地域で情勢不安を生み出しているアメリカ政府の軍事行動や、アメリカが輸出している数十億ドル相当の最新鋭の兵器の一部が、テロ組織ISISの手に渡っていることには触れずに、イランに対し捏造的な疑惑を呈示しました。
ヘイリー国連大使の反イラン的な表明は、地域におけるアメリカの政策決定が、自らの覇権主義的な目標を達成し、イランに対する世論の印象を歪め、事実とはかけ離れた事柄を吹聴しようとするものであることを、改めて示しました。しかし、現実にはイランとイエメンの間には軍事的な関係は一切存在しません。それは、イエメンが完全に封鎖されており、イランは緊急の人道支援すら、イエメン国民に提供できないからです。
このように、アメリカが政治的に体裁を取り繕おうとしている一方で、アメリカの政府関係者は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦に自国製の兵器を移送している事に対し、釈明する必要があります。この2つの国は、2年以上にわたってイエメンの人々の殺害に手を染めています。
言うまでもなく、イランに対するアメリカの根拠のない疑惑の呈示にイランが無関心でいるはずはなく、この問題は、国連安保理を通じて追及されることになります。挑発的で根拠のない、無責任なヘイリー国連大使の表明を受け、在イラン・アメリカ利益代表を兼任する、テヘラン駐在のスイス大使がイラン外務省に呼び出され、アメリカ国連大使の軽率な表明に関するイランの正式な抗議の意が伝えられました。これについて、イラン外務省のガーセミー報道官は、次のように述べています。
「アメリカ政府は、イエメンに関する国連安保理決議に違反しており、これに関して国際社会に釈明せずに、他国に対する疑惑を呈示し、地域の侵略国家を支持することで、世論を欺こうとしている。実際に、アメリカの地域政策が失敗した一方で、アメリカの計画の実施役だったテロ組織ISISが、シリアとイラクから手を引いたことにより、アメリカの政治家は万策尽きた状態となり、今度は欺瞞行為に乗り出している」
アメリカは、シリアとイラクにおけるISISの占領や、テロの危機による問題での失敗を取り返すため、イスラム教徒の聖地ベイトルモガッダス・エルサレムを、シオニスト政権イスラエルの首都に正式に認定することを提唱しました。
アメリカは、このような挑発行為と平行して、イランを2つの方向から挑発しようとしています。その1つは核問題であり、もう1つは、イランがサウジアラビアの侵略行為に対するイエメンの抵抗戦線に武器を支援している、という疑惑の呈示です。即ち、アメリカは、安保理のレベルで国際世論をイランに反する方向に仕向けようとしていますが、これも功を奏する事はないと思われます。
アメリカのトランプ大統領は今月18日、演説の中でアメリカの国家安全保障戦略を発表し、自己流の見解に基づき、核合意を醜悪な包括的合意だとしました。
トランプ大統領は、「自分は、アメリカ議会に提出した報告の中で、イランの核合意遵守の事実を承認していない」と語りました。
アメリカはこの点について、再びイランによる核合意への違反という捏造的な事柄を安保理に持ち込もうとしています。安保理は今月19日、核合意に関する決議2231の実施についての定例報告を検討するため、会議を開きました。
しかし、この会議ではアメリカの期待とは逆に、国際社会が核合意を強く支持していることがはっきりしました。
この会議では、アメリカのヘイリー国連大使を除いて、フェルトマン国連事務次長やEU代表を初めとする、出席者全員が核合意を擁護しました。
こうした中、イランとフランスによる第4回政治対話の開催のため、フランス・パリを訪問したイランのアラーグチー外務次官が、フランスのモンターニュ外務次官と会談し、核合意の実施を阻む障壁や、この合意の弱体化を狙う一部の国の行動に対する、ヨーロッパ諸国の断固たる透明な立場表明を求めました。
イランの核合意の遵守を認証する権利があるのは、IAEA国際原子力機関のみであることに、疑いの余地はありません。そのIAEAは、これまでに9回にわたり、イランの核合意の遵守を認証しています。
ここ数日、イスラム世界における最も重要な話題は、聖地ベイトルモガッダス・エルサレムの問題、そして、シオニスト政権イスラエルの領内にあるアメリカ大使館のこの聖地への移転という、アメリカ大統領の愚鈍な決定に対する抗議となっています。
アメリカのトランプ大統領は今月6日、イスラム教徒の聖地ベイトルモガッダスを、イスラエルの首都に認定し、同時にイスラエル領内のテルアビブにあるアメリカ大使館を、この聖地に移転させる命令を下しました。
トランプ大統領は先週、さらに聖地に関するアメリカの決定に反対しようとする国々を脅迫し、次のように述べました。
「アメリカは、国連総会において、エルサレムに関するアメリカの決定に反対票を投じようとする国に対し、資金援助を打ち切る」
このような脅迫にも関わらず、国連総会ではベイトルモガッダスに関する決議が賛成128票、反対9票という圧倒的多数で採択されました。
ベイトルモガッダスをイスラエルの首都に認定するというトランプ大統領の行動は、アメリカの統治者が今なお、地域問題を正しく、客観的に把握できておらず、過去の過ちを繰り返していることを示しました。トランプ大統領がこのような行動に出た原因は、同大統領に不遜な行動を許してしまったアラブ世界の弱点にあることに疑いの余地はありません。しかし、イランは対立している相手に一切遠慮、妥協せず、今後も抑圧されたパレスチナ国民への支持を続けようとしています。
イランは、ミサイル・防衛計画についても、自らをより所としており、自国民の防衛やテロ対策、地域の安全と安定の確立に関して、他者から許可を得ることはありません。今日、国際世論はイランが全力を挙げて、また多額の費用と時間をかけてテロとの戦いに挑み、地域においてテロリストの多くを弾圧し、彼らの進軍を阻止したことを認知しています。
地域でのテロとの戦いの舞台でイランが成功を収めたことは、西アジア地域で相対的な安定があるとすれば、それは平和に向けたイランの努力によるものである、という事実を明確に裏付けています。アメリカはテロリストに武器を提供して暴動を起こすよう奨励することで、地域の情勢不安に大きく関与しています。
言うまでもなく、イランは地域や世界の人々にとっての安全と平穏を求めています。このことは、国連総会で暴力と過激派に反対するイランの提起した草案が採択されたという事実からも証明されています。
「暴力と過激派に対抗する世界」をテーマとしたイランの提案は、今月19日の国連総会で全会一致による3度目の採択を果たしました。このことは、国際的な危機や問題を捉える上でのイランの方向路線を、改めて示すものとなりました。
特定の国の国民や宗教が暴力や過激派に関わっているとする考え方は、神の啓示宗教の信者に嫌悪を示す発言により、宗教を歪曲しようとする人々の利己的な目的や、誤った考え方の現われです。このことは、先週アゼルバイジャンのバクーで行われたイラン、トルコ、アゼルバイジャンの外務大臣らによる3者協議でも強調されました。
イランのザリーフ外務大臣、トルコのチャヴシュオール外務大臣、そしてアゼルバイジャン共和国のメメディヤロフ外務大臣は、終了声明において、地域における協力と繁栄、安定と平和を促すための、3カ国間の協力と同調の促進という、自らの約束履行の継続を求めました。
シリア危機に関するカザフスタン・アスタナでの協議という枠組みにおける、イラン、ロシア、トルコによる合意も、イランが地域における平和と安定の強化に向けた道を歩んでいる事を示しています。
ザリーフ外務大臣は、ツイッターにおいて、問題の本質について次のように述べています。
「トランプ大統領は、自らの不当な要求を拒否してくる相手を威嚇することで、世界レベルでの民主主義の実現を自ら阻もうとしている事を証明した」
次回もどうぞ、お楽しみに。